2023年06月27日
荏原製作所(以下:荏原)は、細胞量産技術開発スタートアップの株式会社セルファイバ(以下:セルファイバ)と、大容量細胞カプセル化装置に関する共同研究開発を開始しました。
近年、細胞培養技術を用いた新しい食料生産方法の細胞農業が世界中から注目されています。将来的な人口の増加に伴い、タンパク質不足などの食料問題が懸念されていますが、伝統的な畜産や農業による生産だけでは課題を解決することが難しいと言われています。また、生産を拡大することで、温室効果ガスの排出の増加、水産資源の枯渇といった環境面や、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点での課題があります。
セルファイバは、特殊な細胞カプセル化技術「細胞ファイバ*」を用いて、高品質な細胞を高密度で培養する「高生産培養」を実現しました。本技術は、培養槽1塔あたりの生産量を飛躍的に高めることが可能で、培養肉をはじめ、細胞農業の様々な用途での活用が期待されています。
荏原は、当社が培ってきた流体制御技術や装置機器設計ノウハウを活用した細胞カプセル化装置のスケールアップ設計、開発を行い、細胞農業事業の実現を加速させていきます。
当社は大容量細胞カプセル化装置と大量培養装置の開発により、細胞生産技術の合理化を実現し、細胞農業が広く社会に普及することを目指します。今後も、長期ビジョン「E-Vision2030」で掲げる「進化する豊かな生活づくり」に貢献していきます。
荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づいてESG重要課題に取り組むことで、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、企業価値のさらなる向上を図っていきます。
*細胞ファイバ技術は、髪の毛ほどの細さの中空ハイドロゲルチューブ内に細胞を封入し、培養する技術です。周囲のゲルが内部の細胞を保護しつつ過剰な凝集を防ぐため、従来の培養法に比べて、細胞を良好な状態で長期間維持することができます。同時に、チューブ内に閉じ込められた細胞から物質が分泌されると、その物質のみがチューブ外に放出されるため、物質生産においても有用な基盤技術です。
株式会社セルファイバ
2015年4月に設立された東京大学発スタートアップ。ひも状の細胞塊を形成する世界初の技術「細胞ファイバ」をコア技術としており、これまでに同技術が細胞の大量製造に有効であることを実証している。現在は主に医療用の細胞量産技術開発に取り組み、その一環として細胞産業に関わる事業者が広く細胞ファイバの技術を利用可能となるよう、細胞カプセル化装置の開発を行っている。