大深度地熱発電向け製品の開発

地球の熱で世界のエネルギー環境を変える「超臨界地熱」へのチャレンジ

クリーンエネルギーとして注目される「地熱発電」

脱炭素の大きなポイントである「クリーンエネルギー」。石油・ガスなどの代替となるエネルギー源を確保することで、人類は持続可能社会に大きく近づきます。CO₂を排出しないエネルギー源は原子力・水力・風力・太陽光・バイオマスなど。そのなかに「地熱」があります。
マグマやマントルに覆われた地球の中心温度は約7,000度であり、その熱エネルギー量はほぼ無限。地中1.5km~2kmで温度が200度以上となる地層には、雨水などが岩盤に熱された状態で蓄積しています。こうした地中深くの熱水を蒸気として取り出し、タービンを回すことで電力を得る仕組みが「地熱発電」です。

地熱はクリーンエネルギーのなかでもきわめてユニークな特長を持っています。水力・風力・太陽光のように天候や気候の影響を受けることなく、広い敷地も不要。小規模な発電設備で24時間安定して電力を生み出し続けます。一方で地中の温度は場所によってバラつきが大きく、掘削しやすいポイントが限られてしまいます。そのため地熱は新しい「資源国」を生み出していくのです。

日本は世界有数の「地熱」資源国

その世界有数の「資源国」の一つとして日本があります。日本には火山やプレートの境界などマグマがたまっているスポットが多く、地熱資源量は世界3位。未来のエネルギー大国となるポテンシャルを持っています。
それにもかかわらず、現在日本の地熱発電量は全体の0.2%しかありません。地熱発電所は建造に時間と費用がかかり、地中には有害なガスなども含まれるため地上で処理するためには安全性を十分考慮しなくてはなりません。荏原はポンプをはじめ、タービン・冷却塔・復水器など地熱発電所の主な装置のほとんどの技術を持つ稀有なメーカとして、地熱発電の進歩と普及を目指してきました。

現在、地熱の分野では大きなチャレンジが始まっています。それが「大深度/超臨界地熱」です。従来よりもさらに深い地中3km~6kmのマグマ溜まりに、400~500度の超高温の物質が発見されました。その正体はプレートが潜り込むときに引き込まれた古海水であり、液体でも気体でもない不思議な流体に変化しています。高温・高圧で、毒性・腐食性も非常に高い「超臨界地熱流体」ですが、1つのマグマ溜まりは原子炉30基分の熱エネルギーを保有していると考えられています。現在、日本では原子炉1基の10分の1ほどの地域発電量の可能性が示されており、大深度のマグマ溜まりに向けて掘削が始まりました。目標は2030年代のパイロットプラント。そして2050年代の大規模プラントです。

荏原が挑む「超臨界地熱」発電

この未来のエネルギー環境を大きく変えるかもしれない超臨界地熱発電の研究開発に、世界中の技術者が挑んでいます。そのような中、荏原も長年ポンプを製造してきた流体制御のスペシャリストとして、まだ誰も成功していない「超臨界地熱」発電を成功させるために開発を進めています。私たちは従来の地熱用のポンプでは実績もあり、蒸気で発電できるタービンという強みも持っています。また、さまざまな素材や耐食性への知見や、混合ガス圧縮の豊富な経験もあります。荏原のこれまでの歩みを結集し、未来のクリーンなエネルギー生活環境の実現に向けて、2050年に向けての新たな挑戦は勢いを増して加速を続けていきます。