エバラ時報 No.201 p.1 東京大学 名誉教授 東洋大学工学部 教授 加藤 洋治
エバラ時報 No.201 p.3 八鍬 浩 ほか
石油精製装置の一つである流動接触分解装置(FCC)に組み込まれるガスエキスパンダタービンのロータ材として好適なNi基超合金を開発した。本開発合金は、従来材であるAISI685合金の基本組成として、耐硫化性を向上させるためAl添加量を3.0mass%に増量した分、Ti添加量を1.5mass%に減量したものであり、従来材と同等の機械的性質を有すると共に、硫化腐食量が従来材の約1/2程度である優れた耐硫化腐食性を併せもつ。
液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を用いた下水試料中の女性ホルモン類定量分析法の開発
エバラ時報 No.201 p.11 中村 由美子 ほか
LC/MS/MSを用いて下水試料中の女性ホルモン類を一斉定量する方法を開発した。本分析法を実際に下水処理場の原水、処理水に適用し、ELISA法による分析結果と比較した。17β-エストラジオールの定量値はELISA法による値が本分析法の値より常に高く、擬似陽性による過剰評価の影響だと考えられた。更に、酵母を用いたバイオアッセイによって下水試料の女性ホルモン様活性を求め、女性ホルモン類の寄与を調べたところ、特に処理水では寄与率62.6%から69.8%と高く、中でもエストロンの寄与が高かった。下水処理場で女性ホルモン類の処理状況を把握することは環境ホルモン問題を考える上で重要であり、本分析法の開発により、実態把握が可能になったと考える。
担体投入型嫌気 —無酸素— 好気法の活性汚泥モデルシミュレーション
エバラ時報 No.201 p.18 佐久間 博司 ほか
担体投入型嫌気—無酸素—好気活性汚泥法(バイオエルグ)を対象として、IWA活性汚泥モデルによる水質シミュレーションの検討を行った。シミュレーションはパイロットプラントによる実下水の連続処理実験データを用いて行った。検討の結果、シミュレーションによる処理水質の変化は実験結果とおおむね一致しており、シミュレーションによりプラントの処理状態をほぼ再現できることがわかった。今後、原水有機物の成分比率や生物膜モデルを改善することでシミュレーションの精度向上が期待でき、運転管理や設計計画などの支援ツールとして利用可能と考えられる。
エバラ時報 No.201 p.26 寺若 信幸 ほか
従来の海水給水ポンプユニットは、ナイロンコーティングポンプやステンレス製ポンプとの組み合わせで使用されていたが、コーティングのはく離やステンレス部品のすきま腐食・孔食などの問題があった。これらの問題を解決するため、FPS型プラスチックポンプを使用した給水ポンプユニットを開発した。海水接液部から金属部品を極力なくし、非接液部にも塩害対策を行うことで、長寿命で信頼性の高いユニットとなっている。このユニットを用いると、高架水槽を設けなくても、必要な量の海水を必要な時に取り出すことができる。本報では、ユニットの構成機器の特徴、制御方法、製品内容について紹介する。
エバラ時報 No.201 p.32 小松 崇秀 ほか
新形直結給水ブースタポンプウォールキャビネット(PNE型)の製品化を行った。この製品は、従来モデルと比較して、現地での施工性が容易であることを特長としている。また、交換頻度の高い部品をキャビネット前面側に配置することにより、メンテナンス性を向上した。更に、センサレスDCモータの採用と高密閉度キャビネット等により、静音化を実現した。
エバラ時報 No.201 p.35 川井 政人
太陽電池を電源とするソーラ水中ポンプシステムを開発した。本システムは4インチ深井戸用水中モータポンプとソーラコントローラにより構成される。水中モータには高速永久磁石同期モータ(PMSM)を採用、ポンプ部も高速専用設計とすることでシステム効率の向上と小形化を図っている。ソーラコントローラは独自の高精度最大電力点追従制御(MPPT制御)機能を備えている。更に遠隔地での使用を考慮し、通常の保護機能に加え空運転防止機能、締切り運転防止機能を備えることで信頼性を高めている。
エバラ時報 No.201 p.40 中嶋 照幸 ほか
小形分散型発電装置の一つであるMGT(マイクロガスタービン)に無圧式排熱回収装置を搭載した発電出力80kW、総合効率73%のコージェネレーションパッケージを開発した。パッケージはガスタービン、再生器、燃料ガス圧縮機などの構成品を上下2段に配置することにより据付面積を省スペース化、前後方向からのメンテナンス及び換気構造の最適化を図った、キュービクル構造の一体形屋外防音仕様であり騒音レベル65dB(A)を実現した。発電用火力設備の技術基準に適合した計装システム、系統連系ガイドラインに準拠する電力連系保護機能を有し、共通制御盤の併用によりピークカット運転、スケジュール運転及び最大5台までの並列運転を可能とした。
エバラ時報 No.201 p.46 山口 弘史 ほか
2000年8月から新潟市内で施工中であった鳥屋野潟排水機場(総排水量40m3/s)のポンプ設備が2002年12月に完成した。本機場は鳥屋野潟流域の内水排除を目的としたもので、北陸地方で有数の規模を誇り、その建設においては様々な最新技術が採用されている。新技術の採用は建築コスト縮減と信頼性向上を主目的としたもので、高流速化、立形ガスタービン採用、天井クレーン省略、ガスタービン吸排気設備縮小等により設備のコンパクト化が図られると同時に、完全無水化、運転支援装置、遠方監視制御設備の設置等により設備信頼性の向上が実現している。本文は本機場概要を解説するものである。
エバラ時報 No.201 p.53 大島 俊治 ほか
山口県宇部市に流動床式ガス化溶融設備を納入した。一般廃棄物、事業系一般廃棄物を日量198t処理する設備として、限られた敷地の中、建設が進められ、2003年2月に竣工した。発電出力4000kWのタービン発電機を備え、隣接施設への送電を行う。溶融炉の引渡性能確認試験の結果はいずれの項目もクリアした。特に煙突排ガスのダイオキシン類濃度は、規制値0.05ng-TEQ/m3(NTP)に対し0.0013~0.00076ng-TEQ/m3(NTP)と大幅に下回った。また、運転教育ダイナミックシミュレータシステムを初めて納入し、実機導入前の顧客による運転訓練としての成果があった。
エバラ時報 No.201 p.59 飯田 裕一 ほか
川口市向け都市ごみガス化溶融施設「朝日環境センター」(140t/d×3炉)を納入した。本施設の特長は、1)他焼却場の主灰(他所灰)を受入れ、ごみと混焼して溶融スラグ化する、2)戻し灰設備、不燃物粉砕設備によりスラグ化率を向上させて最終処分量を低減する、3)低発熱量ごみ対策として酸素富化方式を採用していることにある。ボイラの発生蒸気は主としてタービン発電機に供給され定格12000kWの発電を行い、場内で使用するほか余剰分は電力会社へ売電している。竣工以来、平均でごみ142t/(d・炉)、他所灰11.4t/(d・炉)の処理を行い、3炉運転時には8300kW発電しこのうち3800kWを売電している。
エバラ時報 No.201 p.65 曽根 与幸
灰溶融炉併設のストーカ式都市ごみ焼却施設を、佐賀県佐賀市向けに納入した。排ガス中のダイオキシン類濃度は、煙突出口において0.1ng-TEQ/m3(NTP)を大幅に下回る良好な状態にある。また灰溶融炉で生成されるスラグも、道路用骨材としての有効利用に、特に問題のないことを確認した。試運転中に発生したスラグの一部は、既に路面モニュメントの一部として、当施設構内に試験施工されている。ごみ焼却で発生する熱は、ボイラで蒸気として回収、プラント所要蒸気、場内給湯、場外余熱利用施設への熱供給として利用するほか、復水タービンによる最大4500kWの発電を行い、場内負荷電力への供給や余剰電力の売却を行っている。
灰溶融炉・リサイクル施設併設ストーカ式都市ごみ焼却施設 —弘前地区環境整備センター—
エバラ時報 No.201 p.71 山崎 薫
東京都から、700t/dのストーカ式焼却炉と130t/dのプラズマ式灰溶融炉からなる足立清掃工場プラント更新工事と、台湾/基隆市から、600t/dのストーカ式焼却炉の建設工事を受注した。足立清掃工場は、既存建物を再利用してプラント設備の更新を行うスクラップ&ビルド式のリフォームで、工場を稼動させた状態で工事を行うことが特長である。現在、新1号炉及び灰溶融炉の建設を進めるとともに、新2号炉が先行して竣工し安定した運転を継続している。今回、基隆向けの設計が完了するとともに足立清掃工場の運転状況が良好なことから、ダイオキシン類などの公害防止技術や運転方法など多岐にわたる大型ストーカ炉に関する知見を得た。