エバラ時報 No.205 p.1 大阪大学大学院工学研究科 教授 小林 紘二郎
エバラ時報 No.205 p.3 関塚 智 ほか
風車出力制御方式及び発電機回転速度制御方式を組み込んだ風力発電システムの特性を把握するため、実機の風車を利用して、風況と有効電力、電圧及び電流などの電気的諸量との関係を、風車の各出力状態において検討しておくことが実務上有効な手法である。今回、ともに非同期の発電機を備えた制御方式の異なる二箇所の実機サイトを対象に、風況及び電気的諸量などを計測することにより、両者特性の違いを考察した。その結果、両風車とも、電流値の変動は有効電力の変動と明確な類似性があり、風速の変動と比較すると、それぞれの制御方式により特徴的な挙動を示すことが明らかになった。
エバラ時報 No.205 p.11 牧野 力 ほか
インバータ駆動のDCブラシレスモータを搭載した可変速形ホーム井戸ポンプの開発を行った。給水量の増減に応じ、給水栓の末端圧力がおおむね一定となるようインバータで回転速度制御を行う推定末端圧力一定制御を採用しており、従来モデルに対して、約55%の省エネルギー、約7~10dB(A)の低騒音化を達成している。誘導モータを使用した従来モデルに対し、ハイドロ部を新規とし、制御圧力と使用流量範囲に適したポンプ特性とした。また、浸出性能基準適合による給水の安全性の更なる向上、従来モデルとの配管互換性確保による既設ポンプからの取替が容易などの特長を備えている。
エバラ時報 No.205 p.14 篠原 豊司 ほか
半導体や液晶製造工場ではエッチング工程やチャンバのクリーニングで地球温暖化ガスであるパーフルオロコンパウンド(PFCs)が使用されており、近年地球環境汚染防止の観点からPFCs排出量の抑制や使用量の削減が重要な課題となっている。当社では燃焼によりPFCsを分解する排ガス処理装置に加え、触媒によりPFCsを新たに高効率に分解する触媒式排ガス処理装置を開発し製品化した。今回、新たにPFCsの分解とその際に発生するふっ素の固定化を処理剤で行うことで、排水を発生させずにPFCs処理を可能としたふっ素固定式排ガス処理装置を開発した。本報では触媒式排ガス処理装置及びふっ素固定式排ガス処理装置について報告する。
エバラ時報 No.205 p.19 田中 亮 ほか
SMIFシステムに対応した200mmウェーハ用環境ボックスを開発した。環境ボックスは、粒子汚染と分子汚染に加えて湿度を低減することができるウェーハ保管・搬送容器である。本書は、平成13年度から15年度経済産業省「情報通信基盤高度化プログラム」の実用化開発助成金事業(事業名:高効率次世代半導体製造システム技術開発)として、新エネルギー・産業技術総合開発機構から助成金を受けて実行した成果の一部と、300mmウェーハ用環境ボックスの概要について報告する。
小型消化ガス利用固体高分子形燃料電池コージェネレーションシステムの開発
エバラ時報 No.205 p.25 村井 正夫 ほか
燃料電池は発電効率が高く、電力と同時に温水を取り出すことができ、且つ環境への負荷が小さいコージェネレーション機器である。下水処理場の汚泥処理施設などで発生する消化ガスを燃料として燃料電池を利用することができれば、下水処理場内のエネルギー自給率の向上に有効で、且つ経済的なシステムを構築できる。
10kW規模まで適用が可能なPEFCコージェネレーションシステムの構築を目的として、省電力型の小型消化ガス精製装置を開発し、PEFCと組み合わせた実証試験を行い、システムの有効性を確認した。使用したPEFCは、現在家庭用として開発が進んでいるタイプで、荏原バラードが2002年度準商用機として開発した都市ガスを燃料とする家庭用1kW級PEFCである。
エバラ時報 No.205 p.31 宇田川 浩史
一般国道25号に位置する関トンネルは、上り線、下り線からなる一方通行トンネルであり、ジェットファン縦流換気方式を採用した換気設備が設置されている。本工事においては、ライフサイクルコストの縮減を目的として、ジェットファンの主要材料をステンレス鋼材に変更することにより、トンネル内という特殊かつ悪環境下におかれるジェットファンに対する効果的な腐食対策を実施している。
エバラ時報 No.205 p.34 望月 明 ほか
国土交通省富山河川国道事務所管内にある道路設備(トンネル換気・計測、消火、消融雪、道路排水及び昇降設備)の遠隔監視操作システムと施設情報管理システムを納入した。その内、今回の対象設備は国道8号のくりから、源平及び城山の3トンネルの換気・計測設備、消火設備等で、3国道維持出張所及び富山河川国道事務所から集中監視制御が行えるようにした。遠隔監視操作システムはすべてWebの技術を利用し、どこからでも閲覧可能とした。また、施設情報管理システムについてもWebの技術を利用したサーバを事務所に設置し、データの一元管理を図ると共に、各出張所からの施設台帳、機器図等の図書関係の閲覧を可能とした。
エバラ時報 No.205 p.40 千葉 信一郎 ほか
高砂製紙(株)に産業廃棄物焼却炉を納入した。本施設では、製紙工場から排出される製紙汚泥及びリジェクトと呼ばれる、古紙からパルプを再生する際に排出される廃棄物を焼却し、その廃熱を蒸気として回収し、工場内のプロセス蒸気として供給する。本施設を設置したことにより、工場から排出される廃棄物の量を低減すると共に省エネルギーを行い、周囲の環境負荷を低減できた。また併せて廃棄物処理費及び燃料費の節約ができ、経済的なメリットもあった。本施設の概要を紹介する。
ロータリーキルン式産業廃棄物焼却設備アイシン精機(株)西尾工場-
エバラ時報 No.205 p.44 魚住 建司 ほか
アイシン精機株式会社/西尾工場向けに、焼却設備を納入し、同社の廃棄物処理に大いに貢献している。本設備では、汚泥(含塗装かす)、廃油、廃液といった産業廃棄物(36.24t/24h)を、ロータリーキルン炉を用いて処理している。小規模ながら安定燃焼を可能とするため、廃棄物の連続定量供給及びDCSの採用の結果、非常に良好な運転状態となっている。特にダイオキシン類の測定結果は良好で、西尾市の公害防止基準値である0.1ng-TEQ/m3(NTP)を大幅に下回ることが確認できた。また、対象となる廃棄物の平均発熱量が低いため、燃焼空気を燃焼排ガスの廃熱で400℃の高温に加熱し、助燃料の使用量を抑えるよう、燃焼効率の向上を図っている。
駅舎に設置した太陽光発電システム-神戸市交通局 地下鉄軼総合運動公園駅軻へ納入-
エバラ時報 No.205 p.47 児嶋 勝 ほか
一般的に建物は、将来の工作物を設置するようには、設計されていない。このため、太陽電池アレーを既設建築物に設置する場合、屋上床強度が十分に確保されていないことが多い。本件は、神戸市交通局の地下鉄(西神・山手線)総合運動公園駅の既設駅舎屋上に、建物を改造せずに架台を設置し、太陽光発電システムを構築したので紹介する。また、本システムには、当社製のコンパクト化されたトランスレスパワーコンディショナと、それに連動して発電データを収集、表示する計測ソフトも組込んだので、その特色などについても紹介する。
エバラ時報 No.204 p.1 国立大学法人東北大学 流体科学研究所所長 教授 井小萩 利明
エバラ時報 No.204 p.3 能見 基彦 ほか
キャビテーション流れ解析の検証のため、低比速度遠心ポンプの内部流れを詳細に計測した。羽根車には圧力変換器を装備し、羽根の圧力面、負圧面の非定常圧力分布を測った。入口ボリュートと羽根車側板を透明にして羽根車内のキャビテーションを詳細に可視化観察した。流れ解析では密度-圧力を一価関数で表すモデルを用い、キャビテーションを数値解析した。最高効率点では、キャビティは羽根負圧面の中程に初生し、NPSHを下げることにより下流に伸張する。スロートに達すると、圧力面前縁にもキャビティが発生し揚程が急低下することが分かった。この過程は、流れ解析により妥当に計算できることを確認した。
エバラ時報 No.204 p.8 徳野 光宏 ほか
スポンジ担体(エバフォームII型)を用いた流動床型生物膜処理法で製紙工場排水処理の現地実験を実施した結果、COD容積負荷4kg/(m3・d)以下の条件で、S-COD除去率65%以上、また、BOD容積負荷3.5kg/(m3・d)以下の条件でS-BOD除去率90%の高い除去性能が得られた。この結果に基づき、製紙工場排水設備としてスポンジ担体を用いた流動床型生物膜処理設備を納入し、設計S-COD容積負荷2.5kg/(m3・d)以下の運転条件で、設計条件であるS-COD除去率60%を達成している。今後は、ほかの産業排水や小規模下水処理への水平展開が期待できる。
エバラ時報 No.204 p.14 米山 豊 ほか
し尿系有機性廃棄物と、家庭からの生ごみを対象にした高温メタン発酵処理の実設備からなる汚泥再生処理センターが日本で初めて2000年に稼動した。約2年間のメタン発酵処理データを基に、し尿系汚泥性状、生ごみ性状、メタン発酵処理特性、水処理への返流水の影響、ガス発電によるエネルギー回収などについて検討した。その結果、2年間安定したメタン発酵処理成績が得られ、生ごみ投入量が多くなった2001年度ガス発電量は月平均で最大2240kWh/dに達した。これは、汚泥再生処理センターの総電力量の15.3%に相当した。メタン発酵処理から発生する返流水が流入するため、活性汚泥原水のBOD/Kj-N比は返流水がない場合に比べ低くなる傾向にあり、第2脱窒素槽のメタノール添加量が多くなった。しかしメタノール増加量は全体のコストからみると影響はわずかであった。このように、実プラント規模で有機性廃棄物の有効利用が可能となった。
エバラ時報 No.204 p.23 宮 晶子 ほか
バイオレメディエーションによる石油汚染土壌修復の高効率化、安定化のためには、土着微生物群の群集構造と石油分解特性との関係を明確化し、土壌に応じた最適な施工法を開発する必要がある。
実際の石油汚染土壌を用いて、原油とフェナントレンをそれぞれ炭素源として用いた石油分解実験を行い、各土壌の石油分解特性を把握すると共にPCR-DGGE法により石油分解微生物群集構造を解析し、優占石油分解細菌の同定を試みた。
その結果、適切な培養法と微生物解析を組み合わせることにより、石油汚染土壌のバイオスティミュレーション効果の予測が比較的短期間でできる可能性が示唆された。
環境エンジニアリング事業の業務改革を支援する統合管理システムの開発
エバラ時報 No.204 p.28 北村 輝明 ほか
近年、循環型社会の構築、地球温暖化への対応、環境保全と安全性の確保、規制緩和、公共投資の削減などの社会的な要請がある。このようななかで、環境エンジニアリング事業が『21世紀において収益力ある事業』として生き残っていくためには、大型プロジェクトへの対応を可能とするビジネスプロセスの改革、最適なプロジェクト管理の確立、海外市場への進出を可能とする国際的規格への適応、大幅な「建設コストの最小化」、「提案力強化」などが必要である。本稿ではこのような業務改革を支援するために最新のIT(Information Technology)を活用して構築した、環境エンジニアリング事業を支援する新統合管理システム(e-HUMAN's)の概要について紹介する。
エバラ時報 No.204 p.33 大河内 哲郎 ほか
規制の緩和、公共投資削減などの経営環境の変化に対応して、環境エンジニアリング事業において事業の根幹をなすドキュメント管理、プロジェクト管理、外部調達機能の強化による大幅な業務改革を支援するため、オープン系統合管理システムe-HUMAN'sを構築した。本稿では、e-HUMAN'sを総合的に支援し、合わせて、必要なセキュリティを確保しつつ、ホストの運用管理コストの増大、オープン系システムの運用・管理の困難さ、既存システム運用・保守のリスク増大を解決するために実施した、新しい情報基盤構築の思想と諸々の取組みについて紹介する。
エバラ時報 No.204 p.41 富永 英子 ほか
マンホールポンプ施設の通報装置・監視システムの分野では、効率よく、統括的に維持管理を行う手段としてITが利用されてきている。そのなかで「EMMD-Webユニット」は、維持管理者が効率的にマンホールポンプ施設の状態監視を行う装置として開発され、日常業務で使っているパソコンに標準装備されているWebブラウザを利用して監視ができるようになっている。そのEMMD-Webユニットを使用した新しい監視スタイルである「マンホールポンプWeb監視システム」を紹介する。
エバラ時報 No.204 p.47 関野 孝久 ほか
羽田空港内「ANAエンジンテストセル」向けに、ジェットエンジン試運転用「燃料供給ポンプユニット」を納入した。ジェットエンジンは、安全運航のために定期的に分解・点検が行われ、その最終工程において負荷試運転が実施される。本燃料ポンプユニットは、試運転が行われるジェットエンジンの形式、運転負荷状態に合った流量・圧力のジェット燃料をジェットエンジンへ供給する設備である。本報では、本燃料供給ポンプユニットの概要、特長、構成機器、制御方法について報告する。
エバラ時報 No.204 p.51 浅野 毅 ほか
新田原井堰は岡山県吉井川に200万m3の貯水量をもつ井堰として建設されており、新田原井堰発電所はこの井堰の豊富な水量を利用して運用されている。今回納入したチューブラ水車のローラねじ機構を採用した電動駆動方式のランナベーンサーボモータ機構は従来にない新技術である。当社の実績として全電動バルブ水車は初めてである。本発電所の概要を紹介する。
エバラ時報 No.203 p.1 三重大学 工学部 教授 世界風力エネルギー協会 副会長 清水 幸丸
エバラ時報 No.203 p.3 岡本 秀伸 ほか
キャビテーションの抑制を目的に、3次元逆解法設計をフランシス水車ランナの設計に適用し、翼負荷パラメータ及びレーキ角の影響について検討した。既存ランナと逆解法設計ランナについてCFD結果により翼面静圧を比較し、翼負荷パラメータによってランナ内の静圧分布を制御して翼内の最低静圧値を上昇させた。この結果によりキャビテーションを抑制できる。また、ランナ内の最低静圧はレーキ角に敏感であることが明らかとなった。翼負荷パラメータとレーキ角の制御を用いて、逆解法設計により耐キャビテーション特性に優れたランナを設計することができた。以上の結果から、逆解法設計手法は、水車ランナの設計においても有益なツールとなりうることを示した。
エバラ時報 No.203 p.8 葛 甬生 ほか
ダイナミックろ過法はわずかな水頭圧で高いろ過流束(フラックス)が得られることから、従来の沈殿池方式に比べ、数倍以上の処理能力があると考えられる。本研究では実排水処理にダイナミックろ過を適用して連続実証実験を行った。実験では、団地下水の循環式硝化脱窒処理での処理性能及び食品廃水の活性汚泥処理でのろ過性能の検証を行った。団地下水の循環式硝化脱窒処理では、良好なろ過性能と安定した窒素除去性能が確認できた。最大100m3/dのパイロットプラントを用いた食品廃水処理では、MLSS6000mg/lにおいて、フラックスが平均2m/d以上、ろ過水SSが平均10mg/l程度と安定した処理性能が確認できた。
3次元イメージモデリングシステムの開発-産業機械デジタルエンジニアリングへの応用-
エバラ時報 No.203 p.14 原 俊雄 ほか
プラントエンジニアリング産業ではデジタルエンジニアリング体制が急速に確立してきており、産業機械メーカに対しても3次元デジタルデータの提出を要望している。この対応策として、2次元図とカタログ・マニュアル情報から3次元イメージモデルを短時間で簡便に作成するシステムを開発した。メカニカル3D/CADで作成した機械の3次元モデルをエンジニアリング3D/CADに移行してマザーモデルを作成し、3次元イメージモデルをパラメトリックに自動作成するシステムである。この3次元イメージモデルは、プラントレイアウトや配管のデザインレビュー用に、またトレーニングシステムなどのメンテナンス支援用にと幅広く応用展開できる。
エバラ時報 No.203 p.19 村上 高慈 ほか
2001年5月から川口市内で建設中であった荒川町ポンプ場(計画排水量19.045m3/s:今回8m3/s)のポンプ設備が2003年9月に完成した。本ポンプ場は、従来の合流式下水道を見直し、分流式へ移行する整備工事のうち、雨水整備事業の一環として建設されたものであり、荒川スーパ堤防内に構築された完全地下式のポンプ場である。本ポンプ場は、二重燃料装置(Dual fuel system)付立形ガスタービン(Vertical gas turbine-engine)を採用している。通常時は都市ガスを使用することで排出ガスの清浄化を図り、予備燃料として場内に貯留している灯油を使用することで、信頼性を向上させている。また、排出ガス中の窒素酸化物低減を目的とし、液化アンモニアを使用した脱硝設備を設置している。
エバラ時報 No.203 p.23 杉山 渉 ほか
市道高速2号東山線東山トンネルは名古屋大学、東山動植物公園周辺の丘陵地帯を貫通する自動車専用道路トンネルであり、2003年3月29日に供用開始となった。 トンネル換気設備は車両から排出される排気ガスによるトンネル内空気の汚染を防ぐと同時に、火災発生時には車両運転者の避難環境の確保及び排煙機能をもつ必要がある。そこで本トンネルでは計画段階で様々な換気実験研究、検討が重ねられた結果、坑口周辺の環境対策を考慮した集中排気付横流換気方式が採用された。
当社は本トンネルの緑橋換気所(下り)換気設備及び上下線全体の換気制御設備を設計・施工し、順調に稼動中であるのでその概要を報告する。
エバラ時報 No.203 p.31 宮下 俊明 ほか
特定規模電気事業者である(株)エネットと当社の共同出資による発電事業会社である(株)イースクエアのかずさパワープラントが2003年4月1日から営業運転を開始した。本プラントは、ガスタービン3基と蒸気タービン1基から構成される100MW級のコンバインドサイクル発電プラントである。本発電所の蒸気タービンには当社製の横形10段落外部制御混気復水衝動蒸気タービン2SQNV-9を、ガスタービンには航空機転用形ガスタービンFT8を使用している。当面かずさパワープラントの運用形態はDSS運転で、かつ、(株)エネットからの給電指令に基づき出力調整を行っており、順調に運転を行っている。
エバラ時報 No.203 p.38 石居 宏志 ほか
青森県の下北半島に、むつ小川原ウィンドファーム及び岩屋ウインドパークから成る国内最大の大規模ウィンドファームが完成した。
1500kWの大型風車を2箇所で合計40基建設した大規模ウィンドファームの設計・施工には、これまで当社が風力発電所建設工事で培ってきた知識と経験を基に、更に新しい手法も多数採用している。これらは、今後日本において主流になると見られる大規模ウィンドファームの設計・施工方式の基礎となる。
エバラ時報 No.203 p.44 吉村 和就
水道はその国、その地域の水源を使い、その地域の人々に供給するため、これまで国際化とは無縁であり、日本においては100年以上にわたり、独自の水道文化を築いてきた。しかしここにきて大きな変革の波を迎えようとしている。国内的には水需要の低迷、人口の減少、老朽化施設更新への巨額の投資、民営化問題などが挙げられ、そのあり方があらゆる角度から問われている。このようななかで、国際的に大きな波紋が投げかけられているのがフランスから提案された「上下水道サービス事業の国際規格化」の動きである。これはISO委員会の承認を経て、現在ISO/TC224として各国の国益を賭け、関係者の間で真剣に討議されている。筆者は日本代表委員(水道部門)として当初からこの国際規格作りに参画しているので、ここに国際標準化の現状とISO/TC224の動向を紹介する。
エバラ時報 No.202 p.1 東京大学 名誉教授 吉田 邦夫
SUS304ステンレス鋼のクリープ損傷に伴う超音波減衰と材料微視組織の変化
エバラ時報 No.202 p.3 大谷 俊博 ほか
電磁超音波共鳴法(EMAR)を用いて、973Kで数種類の応力下において、SUS304鋼のクリープ損傷を評価した。EMARは、電磁超音波トランスデューサ(EMAT)によって金属内にMHz帯域の共鳴を発生させる方法で、非接触で、材料の超音波減衰と音速を得ることができる。試験片の板厚方向に横波を伝ぱする体積波用EMATを使用した。減衰係数は損傷に対して敏感に反応した。減衰係数はクリープ進行に伴って大きく増加し、破断直前では、減衰係数は試験前の10倍近い値となる結果を得た。これらの変化は、材料内部の組織変化、特に転位の可動性と対応していた。TEM観察から、そのことが裏付けられた。この評価法は、クリープ損傷に伴う損傷評価や余寿命予測に使える可能性を示した。
エバラ時報 No.202 p.12 堤 かおり ほか
焼却炉スクラバ排水に対して塩化第二鉄を用いた凝集沈殿処理を行った。その原水及び処理水について有効径1μm及び0.1μmのフィルタにより粒子分画試験を行い、各分画のダオキシン類の異性体プロファイルを解析した。その結果、処理水のダイオキシン類濃度は0.1μm未満の分画において一様に減少し、0.1~1μmの分画において一時的に増加したことから、凝集沈殿処理により粗粒径化・除去れることが分かった。また、原水濃度(x)、凝集剤濃度(A)及び処理水濃度(y)は各分画で同一の回帰式で表された。
y=2.3×1010×(x/A)+1.8(0.1μm未満)
エバラ時報 No.202 p.19 近藤 範 ほか
海外市場の仕様に適合する、新形汚水汚物水中ポンプを開発した。本ポンプは、従来機種に対し、流量、揚程範囲を拡大するとともに後退翼羽根車を採用している。これにより羽根車前縁部における繊維状異物の絡みを防止することができ、無閉塞性を向上させている。また、逆解法によるハイドロ解析を行うことで十分な異物通過径を確保しながら高効率を実現している。本製品は、当社DL型汚水汚物用水中ポンプの拡大機種として、口径150~300mm、出力30~45kWの範囲で、海外市場で販売していく。
エバラ時報 No.202 p.23 川畑 潤也
立形多段ポンプは低価格で、かつ据え付け面積が小さいことなどから全世界に普及しているワールドワイドポンプである。この度、国内向けに販売しているVDP型及び海外向けのEVM型を統合し、世界市場に対応する新EVM型ステンレス製立形多段ポンプを開発した。本シリーズでは、カートリッジメカニカルシールを全機種に採用しメンテナンス性を高めるとともに、各種フランジ規格・電動機規格に容易に対応できる構造になっている。また、羽根車等のハイドロ部品は逆解法を用いて設計し、特に大口径機種は3次元プレス羽根車を採用して性能向上を図っている。
エバラ時報 No.202 p.28 小松 崇秀 ほか
高層ビル向けのインバータ搭載形自動給水ユニット(F3100高揚程形)の開発を行った。この製品は、従来形の自動給水ユニットで供給できなかった揚程80m~200mへの給水を可能にした。また水道法「給水装置の浸出性能基準」に適合し、飲料水としての安全性を確保している。更に、故障時の断水を防ぐために、バックアップ機能を充実させ、万一の場合でも運転継続を可能にした。
エバラ時報 No.202 p.31 西巻 淳也 ほか
近年、台風による被害や局地的集中豪雨による浸水被害が、大中規模の河川だけでなく小規模河川や都市部などでもみられ、従来の排水機場では対応できない複数箇所での小規模な出水が頻発している。ここで紹介する排水ポンプユニットは、排水作業に必要な機材をユニットに収納し、任意の車両に搭載運搬できる排水設備である。
エバラ時報 No.202 p.36 宇田川 浩史 ほか
飛鳥山トンネルは、JR王子駅、飛鳥山公園の下に設置された都市型トンネルであり、周辺大気環境の保全が求められている。このため、トンネル換気設備では、坑口漏れ出し抑制制御を行っている。更に、坑口漏れ出し抑制に対して換気効果の高い、縦流式、排気半横流式、縦流式からなる組合わせ換気方式を採用することにより、効率的な換気を実現している。本稿では、換気設備の概要及び設計手法について紹介する。
独立電源蓄電池型「太陽光+小型風力」ハイブリッド発電システム
エバラ時報 No.202 p.45 阿部 亨 ほか
山梨県中巨摩郡敷島町牛句地区の矢木羽湖農村公園に独立電源蓄電池型「太陽光+小型風力」ハイブリッド発電設備を納入したので紹介する。太陽光と風力ハイブリッド発電システムは相互に補完し合う発電設備である。また、独立電源蓄電池型設備は商用電源のない離島、山間地用のほかに災害時等のバックアップ電源として用いられる。本設備では、太陽電池で発電された電力で水中ポンプを駆動し、取水ピットから公園内のせせらぎ水路、湖と水を循環させることで湖水の水質悪化を防止している。また、小型風力発電機と太陽電池の一部で発電された電力を蓄電池に充電し、これをAC100Vに変換し公園内の外灯などに電力供給する。この電力は災害時のバックアップ電源となる。
TIF型流動床式ガス化溶融施設-南信州広域連合/桐林クリーンセンター-
エバラ時報 No.202 p.51 井上 覚 ほか
南信州広域連合向けに46.5t/(d・炉)×2系列の都市ごみ流動床式ガス化溶融施設桐林クリーンセンター新焼却場を納入した。 焼却施設は国の公害防止基準に適合した施設であり、排ガス中に含まれるダイオキシン類は、基準値0.05ng-TEQ/m3(NTP)以下を十分満足している。焼却余剰熱は廃熱ボイラにより蒸気として回収され、場外の熱利用先へ熱供給されるほか、蒸気タービン・発電機による最大780kWの発電を行い、場内負荷電力への供給を行っている。焼却残さのうち金属類は有価物としてリサイクルされ、溶融スラグは各種骨材に有効活用されている。
エバラ時報 No.202 p.55 安井 浩平 ほか
中濃地域広域行政事務組合向けに流動床式ガス化溶融施設を納入した。施設規模は56t/(d・炉)×3炉=168t/dであり、2002年10月~2003年5月までに、19000tのごみを焼却している。本施設は、埋立残さの溶融処理と酸素発生装置を利用した自燃自溶運転を行っており、最終処分場の延命化と低用益費用の実現に寄与している。性能試験において、排ガス分析等の引渡条件はすべて保証値をクリアし、試運転開始以来、安定した溶融運転を継続している。
エバラ時報 No.202 p.62