エバラ時報 No.209 p.1 東北学院大学 工学部長 遠藤 銀朗
エバラ時報 No.209 p.3 玉理 裕介 ほか
従来のガス化技術(部分燃焼技術)との差別化を期待できる次世代ガス化技術として,内部循環流動床ガス化炉(ICFG)技術を開発中である。当社の袖ヶ浦技術開発試験所に建設したICFG試験設備において,2003年から延べ2000時間以上の実証試験を行ってきた。本稿は,ICFGの基本コンセプト及び木質系バイオマスを原料とした実証試験に関して述べたものである。これまでの試験により,炭化水素を中心とした比較的高発熱量の生成ガスを得ることができることを確認し,その生成ガスをガスエンジン及びマイクロガスタービンに供給することで,定格出力にて安定運転が可能であることを実証した。
エバラ時報 No.209 p.8 矢野 聡 ほか
下水処理場のバイオガス中には生活排水に起因するシロキサンが含まれている。このシロキサンはバイオガス発電設備等に悪影響を与えるため,TSA方式のシロキサン除去装置を設計製作した。本装置により,3000時間以上にわたりシロキサンを効率的に除去できることが確認できた。本方式によれば吸着剤の交換が不要で小型の吸着塔により効率的にシロキサンを連続除去できる。
エバラ時報 No.209 p.12 川西 卓 ほか
当社の固体高分子形燃料電池を用いた1kW級家庭用燃料電池コジェネレーションシステムは,東京ガス(株)が2005年2月から限定市場導入を開始し,第1号機は4月に新首相公邸に導入された。燃料電池システムは,省エネルギー性が高く,かつCO2排出抑制効果の大きいエネルギーシステムとして一般家庭への普及が期待されており,2008年度からの本格的な普及を目標に開発を進めている。
エバラ時報 No.209 p.15 川畑 潤也 ほか
金型温調器,純水製造装置,洗浄装置などのセット機器に組み込まれて使用される比較的小水量かつ高揚程の性能を満足するポンプとして,EHM型横形多段ポンプを開発した。本製品は,セット機器で要求される軽量・コンパクト性,静粛性,信頼性を追及した製品である。また,ポンプの接液部の材料は,液質によりFC/SUS304仕様とSCS/SUS316仕様が選定できるようになっている。本稿では,先行発売を予定している製品範囲における製品概要及び特長について紹介する。
エバラ時報 No.209 p.19 小松 崇秀 ほか
ビルやマンション向けのインバータ自動給水ユニット(F3100型)のモデルチェンジを行った。従来品の標準機種では対応が困難であった受水槽水位検知機能や軽故障による故障診断の充実を図ることで,ユーザの利便性を高めている。また高温仕様への対応など仕様範囲拡充も図っている。水質への対応としては,水道法の「給水装置の浸出性能試験」に適合し,飲料水としての安全性を確保している。
エバラ時報 No.209 p.23 杉山 和彦 ほか
当社は,ドイツの風車メーカであるフライデラーウインドエナジー社(現在はファーランダー・フライデラー社)との間で,日本国内の独占権を含むアジア地域での風力発電装置の製造,販売,アフターサービスを行う合弁会社荏原フライデラーウインドパワー(株)を設立することに合意し,2003年2月に調印した。荏原フライデラーは2003年4月から営業を開始し,日本及びアジアにおいて今後10年間で合計70万kWの風力発電装置の販売を目指している。同社製としては国内第1号機となる1500kW風力発電装置をコスモ石油(株)から受注し,山形県酒田市において2004年11月に引き渡した。ここでは,その風力発電装置の概要と特長について紹介する。
エバラ時報 No.208 p.1 東京大学大学院工学系研究科 教授 松本 洋一郎
電磁超音波共鳴法による2.25 Cr-1Mo鋼のクリープ損傷評価(第二報)
エバラ時報 No.208 p.3 大谷 俊博
電磁超音波共鳴法(EMAR)を用いて、923Kで数種類の応力下において、2.25%Cr-1%Mo鋼のクリープ損傷を評価した。EMARは、電磁超音波トランスデューサ(EMAT)によって金属内にMHz帯域の共鳴を発生させる方法で、非接触で、材料の超音波減衰と音速を得ることができる。丸棒の試験片の円周方向に横波を伝搬させる軸対称SH波EMATを用いた。クリープ試験中の伸びと時間の関係に基づき、修正θ法と破断パラメータPαから破断寿命を推定し、試験終了時の寿命消費率を求めた。その結果、寿命消費率と減衰係数の間にはよい相関関係が認められた。光学顕微鏡、走査型及び透過型電子顕微鏡により、内部組織の変化を観察した。その結果、減衰係数は、クリープの進行に伴う転位組織の変化に反応して変化すること、更に、転位振動の弦モデルにより減衰係数と転位組織の関係が対応づけられることが分かった。この評価法が、クリープ損傷に伴う損傷評価や余寿命予測に使える可能性を示した。
エバラ時報 No.208 p.12 牧野 力 ほか
水道本管からの水を受水槽へためずに直接、加圧ポンプで加圧し、末端の給水器具へ供給する家庭用の水道直結形・給水補助加圧装置を開発した。戸建て住宅で水圧不足が懸念される2、3階の給水器具へ補助的に加圧することを目的とした(社)日本水道協会の認証登録品である。ポンプユニット部には、先に製品化した可変速形ホーム井戸ポンプを使用し、同様にインバータ駆動による推定末端圧力一定制御で省エネ・低騒音化を図っている。また、給水器具の使用を開始しても給水圧力が所定値以上に保たれる場合は、加圧ポンプは始動せず、加圧ポンプの吸込側と吐出し側を接続するバイパス流路を通し、水道本管の圧力による給水を行う。
エバラ時報 No.208 p.17 青山 淳
RFWシリーズは、高効率化の市場要求に合わせて開発した蒸気二重効用吸収冷凍機である。当社の最新技術を用いて開発したRFWシリーズは、定格運転時において世界最高技術レベルの蒸気消費率である3.5kg/(h・USRt)を達成しており、従来機種に比べて蒸気消費量を約20%削減することができた。制御盤は当社製新型ターボ冷凍機に採用しているシーケンサ搭載マイコン盤と液晶タッチパネル盤を採用し、ターボ冷凍機とGUI(Graphical User Interface)の統一を図るとともに、制御プログラムを新規設計することで、従来機種に比べ制御性、予防保全性等の機能を向上させた。
余剰汚泥の削減とりん回収を組み込んだ生物処理の実証試験プラント
エバラ時報 No.208 p.21 荒川 清美 ほか
省エネルギー型廃水処理技術開発」プロジェクトの最終段階として「愛・地球博」会場内にて実証試験を実施している。実証試験プラントはNEDOとの共同研究として(1)オゾンを用いた汚泥減容化とりん回収を組み込んだ生物処理、(2)促進酸化を用いた高度処理、(3)オゾン酸化を用いた高度処理の三つのプロセスを組み合わせたものである。本報では、筆者らが担当しているオゾンを用いた汚泥減容化とりん回収を組み込んだ生物処理の処理原理及び実証試験プラントについて紹介する。
エバラ時報 No.208 p.25 児嶋 勝 ほか
兵庫県西宮市に建設中の「兵庫県芸術文化センター」に系統連系型大規模太陽光発電システムを納入したので紹介する。産業用太陽光発電システムの建設容量は10~30kWが一般的であるが、今回は建設屋上部に160kW、壁面部に54kW、合計214kWの大規模太陽光発電システムを設置した。太陽電池で発電された電力は屋上で交流に変換され、地下の受電室内の防災・保安電力受電盤に接続され、センター内で消費される。また、本システムは系統連系タイプであるため、発電電力がセンター内の消費電力よりも大きい場合は電力会社に売電される。
エバラ時報 No.208 p.32 塚本 圭祐 ほか
日本製紙(株)勿来工場に木屑廃材を主な燃料とした内部循環流動床ボイラ(ICFB)によるバイオマス発電設備を納入した。2003年4月に着工し、2004年8月末に予定どおり完成した。本設備は1ユニットで工場全体の電力とプロセス蒸気を賄うメインボイラであり、そのために高い信頼性と迅速な負荷追従性が要求された。本工場の製造工程で使用される電力や蒸気は、従来は自家用の重油ボイラとディーゼル発電機から供給されていたが、年間約34000kl消費されていた重油が本設備の稼動によりその約98%が削減され、それに伴い年間約10万トンの化石燃料に由来する二酸化炭素の削減が見込まれる。
ISO/IEC JTC1/SC7におけるソフトウェア品質評価技術の国際標準化活動の紹介
エバラ時報 No.208 p.37 江﨑 和博
近年、世界規模で進展しているIT(情報・通信技術)による産業・社会構造の変革(いわゆる「IT革命」)が進んでいる。社会活動や企業活動の基盤として、ITを活用した諸々のミッションクリティカルな社会システム、医療、金融、航空、原子力、企業システムなどが不可欠となっており、これらのシステムに組み込まれるソフトウェア品質の高度化に対する社会的な要請も増々大きくなっている。このような背景からISO/IEC JTC1/SC7では、1980年代初頭からハードウェアに比して未知の技術であったソフトウェア品質を評価するための技術の研究や標準化が進められている。本報では、現在、当社も参画している国際標準化活動の概要、最新動向及び標準化技術の重要性等について紹介する。
エバラ時報 No.207 p.1 東京都立大学大学院工学研究科 教授 太田 正廣
半導体製造関連製品小特集号2によせて-Back To the Future-
エバラ時報 No.207 p.3 辻村 学
エバラ時報 No.207 p.5 小寺 雅子 ほか
超LSIデバイスでの高集積化、高速化要求に伴い、新材料であるCu配線とLow-k膜(低誘電率膜)を用いるCu/Low-kダマシン(埋め込み配線)プロセスが登場しているが、これら新材料によりCMP(Chemical Mechanical Planarization)後洗浄プロセス開発も困難に直面している。課題の一つは疎水性のLow-k膜上の残さである。我々はLow-k膜プロセス用に開発されたスラリー(研磨剤)と洗浄液を組み合わせてLow-k膜上での洗浄性能を評価し、最適なプロセスの開発を行った。更に最適プロセスをCu/Low-k構造のデバイス製造に適用して電気特性評価を実施し、本プロセスが実際の超LSIデバイス製造に適用可能であることを示した。
無電解キャップめっきプロセス(無電解めっきによるCu配線上へのCo合金薄膜の形成技術)
エバラ時報 No.207 p.10 王 新明 ほか
ダマシンCu配線上に無電解めっきにより保護層となるコバルトの合金薄膜を形成する技術は、配線の信頼性を向上させるための最も有望な新規プロセスとして認識されつつある。本報では、次亜りん酸塩を還元剤とした無電解めっきプロセスの基礎及び技術課題を解説し、当社での研究・開発によって得られたプロセス性能の評価結果を報告する。膜厚の制御性、膜厚のウェーハ面内均一性、銅又は酸素の拡散に対する膜質のバリア性、膜表面のモフォロジ、成膜の選択性、配線の電気抵抗及びリーク電流等の性能指標について、良好な結果が得られ、本プロセスの実用性が確認された。
電子線を用いたウェーハ欠陥検査装置(EBeye)の開発(第1報)-開発の背景と装置の原理(コンセプト)-
エバラ時報 No.207 p.15 佐竹 徹 ほか
欠陥検査装置は半導体チップの歩留まりをよくするために、欠かせない装置となっている。この目的のために、現状では、主に光方式の検査装置が多く使用されている。そのなかで、明視野方式は撮像した画像から欠陥を見つける方式であるが、最近の微細化されたチップの検査には分解能が不足している。このため、より分解能が高い検査装置である、走査電子顕微鏡(SEM)方式の欠陥検査装置が一部に使用されている。しかし、検査速度が明視野方式に比べて一桁遅い。当社では光方式の検査速度とSEM方式の分解能を併せもつ、電子線を用いた高速・高分解能検査装置(EBeye)を開発しており、その開発内容を解説する。
エバラ時報 No.207 p.21 大里 雅昭
CVD、エッチング等各種半導体製造装置や液晶製造装置において、従来から温暖化ガス(PFCs:Perfluoro Compounds)が使用されていたが未処理であった。1997年12月の京都会議(COP3)を契機に、PFCsガスの処理も必須であるとの認識が高まり、各国、各地域とも、2010年までに削減率10%として温暖化対策への取り組みを開始した。その後、より温暖化係数の低い代替ガスへの転換、PFCsガス処理用排ガス処理装置の設置等、削減に向けた各種対応が進んでいる。こうした動向の中、今後のPFCsガスの処理と、PFCsガス以外(LED製造装置等)の処理も含め当社の取り組みについて記述する。
エバラ時報 No.207 p.25 大田 真朗 ほか
CMPの研磨中に膜厚変化をモニタして研磨終点を検出する技術はCMPの生産性向上のために必須である。従来終点検出が困難であった酸化膜CMP全般に適用できる光学式終点検出モニタを開発した。光源には多波長のハロゲンランプを採用し、研磨中の測定部位に純水を供給して光路を生成した。透明な光路の確保と多波長のメリットを生かしたデータ処理により、ノイズが少なく安定したモニタ信号が得られる。本装置のシステム構成やSTI、ILDプロセスへの適用事例について述べる。
エバラ時報 No.207 p.30 蓬臺 昌夫 ほか
1992年に半導体パッケージ用のバンプめっき装置を製品化するなど当社は半導体業界においては古くからめっき関連事業を手掛けている。前工程の銅配線用としては2000年に1号機をリリース、更に2004年7月には半導体テクノロジーノード90nm世代以降に対応できる配線めっき装置として「E☆REX」シリーズをリリースした。本装置はテクノロジーノードが進むにつれてますます微細分化する配線へのめっき埋め込み性能を満たすと同時にウエーハ面内の優れためっき膜均一性を維持するという課題に対して独自のハードウエアを開発することで対応した。その他にも多くの特長をもつ本装置の概容を紹介する。
エバラ時報 No.207 p.34 栗山 文夫 ほか
当社は2001年に全自動形300mmウェーハ用バンプめっき装置UFP-300Aの第1号機を顧客に納入した。以来、米国を中心として、アジア及び国内の最先端半導体デバイスメーカにこの装置を納入してきた。本装置は品質の高いバンプ形成を行うことができ、量産性にも優れている。半導体デバイスの高速化及び高機能化への進行に伴い、更に多くの顧客へと採用が広がろうとしている。本報では、バンプめっきプロセスと当社が納入しているバンプめっき装置の特長を紹介する。
エバラ時報 No.207 p.39 白樫 充彦 ほか
半導体デバイス製造において、半導体ウェーハは数多くのプロセスを経て処理され、デバイスを形成する表面に対しては以前から細心の注意が払われてきていた。最近では歩留まり向上の観点から、ウェーハの裏面の清浄度向上に加え、ウェーハのベベル部に残留するダメージや物質を除去することが求められている。当社では、極めて高い清浄度が求められる半導体デバイス製造プロセスに適用できる研磨テープを使用したベベル研磨装置を開発した。本システムのコンセプトや特長、性能について紹介する。
エバラ時報 No.207 p.44 杉浦 哲郎 ほか
重負荷プロセスで使用されるドライ真空ポンプはポンプ内部への反応副生成物のたい積により停止する例が見られる。これを予知するためドライ真空ポンプの電流値の変化を監視し警報出力するようアルゴリズムを構築した。また故障予知計算とデータ蓄積のための故障予知用アダプタを新たに開発し、既存の集中監視システムに組み込み可能な故障予知システムとした。
エバラ時報 No.207 p.50 杉山 憲一 ほか
海水を取り扱うポンプ等の流体機械において、耐食・耐摩耗性を要求される部位のみに所望の性能を有する材料を被覆することは、費用、補修等の面から有効な手段である。そこで、耐食性はステライトNo.21、硬さはコルモノイNo.6(Hv697)と同等の肉盛材料の開発を目標として、大同特殊鋼(株)が開発したCo基合金KV系粉末材料の製造技術と(株)荏原総合研究所が開発した耐すきま腐食合金クレバロイ((株)荏原製作所商標、代表成分:Ni-30%Cr-10%Mo)を組み合わせることを試みた。その結果VC:15%、Cr:35%、Mo:15%、残部Niからなる粉末材料を肉盛することにより、高硬度かつ耐食性に優れる被覆層を開発した。
エバラ時報 No.207 p.58 三宅 良男 ほか
流量3L/min以下、全揚程10m以下の各種システム・装置に搭載できるコンパクトなブラシレスDCキャンドモータポンプを2種類開発した。このクラスのポンプは容積式とターボ式の両者が多数市販されているが、高効率、長寿命、低脈動、コンパクト、軽量を同時に満足する製品がなかった。ここでは、伝統的渦巻ポンプを最適寸法化することで前述コンセプトの実現を図るとともに、より小流量の用途向けにギヤポンプの開発を並行して行った。運転時間の長いコンパクトな装置・システムへの搭載に効果的である。燃料電池、ソーラ関連、各種冷却・熱回収システム、マイクロ空調などの市場を念頭に製品化を進める予定である。
エバラ時報 No.207 p.62 中山 淳 ほか
呉峠をバイパスする休山トンネルは歩道を有する道路トンネルで、2002年3月に供用開始となった。換気設備は車両から排出される排気ガスによるトンネル内空気の汚染を防止するとともに、トンネル坑口から排気ガスのもれだしを抑制し地域への環境に配慮した設備、制御となっている。しかし、渋滞が激しく、トンネル内歩行者に対して車両による排ガスや騒音の環境改善が急務となっていた。今回、換気設備の対策工事として「換気制御の見直し」「遠方監視制御システムの導入」を行い、順調に稼動中であるのでその概要を報告する。
エバラ時報 No.207 p.67 桝井 啓 ほか
本工場は腕時計部品の表面処理設備を主とした精密部品工場である。建設にあたっては初期計画段階から「環境負荷が低減された工場」「省エネルギーに配慮した工場」「作業環境の良い工場」をコンセプトとして進められた。本報ではコンセプトとしてあげた設備のうち“表面処理排水の無排水システム”“表面処理室での成層空調方式”“めっき装置”について具体的内容を紹介する。
エバラ時報 No.207 p.71 栗原 勝幸
製紙会社から排出され、再利用が困難なPS(ペーパスラッジ)と不法投棄によって社会問題化している廃タイヤを焼却し、焼却廃熱によって発電する設備である。PS及び廃タイヤの産業廃棄物だけで14000kWを発電する国内最大級の設備で熱効率、制御、運用面においても化石燃料並の優れたボイラ特性を有している。本設備は、既設発電設備と連系運転され、低公害性及び事業性の面からベースロードユニットとして運用されている。更に、工場定期検査時の既設発電設備の停止の際には、工場への保安電力の供給をも担っている。従来の廃棄物発電は脇役的存在であったが、事業性の大きい本設備の稼動は今後の廃棄物発電の方向性を示唆するものであることを確信する。
エバラ時報 No.206 p.1 長岡技術科学大学 教授 COEリーダー 原田 秀樹
ポンプ水路系で発生した複雑な脈動と振動現象及びその対策(第1報,現地計測による現象の把握)
エバラ時報 No.206 p.3 郭 士傑 ほか
可動羽根ポンプをもつ大形排水機場で過大流量運転時に大きな脈動が発生した。水路脈動、軸振動、羽根角制御機構の油圧変動などを測定し、更に吸込口に空気を送った場合及び水路内に空気袋を設置した場合の測定も行い、原因究明を図った。加振源は羽根からのはく離渦で、水路共鳴が励起されていたことが判明した。しかし、脈動の卓越周波数はポンプの回転速度に敏感で、回転速度が低下すると逆に上昇する。逆もいえる。また、脈動と軸振動は同じ羽根角で発生せず、羽根角を徐々に変えると、脈動が突然なくなり、それと同時に軸振動が大きくなる。調査結果に基づき、渦放出の周波数が水路の共鳴固有振動数より高くなるように対策を施し、脈動の発生を解消した。
ポンプ水路系で発生した複雑な脈動と振動現象及びその対策(第2報,羽根面はく離制御による対策)
エバラ時報 No.206 p.10 岡本 秀伸 ほか
大形排水機場で発生した圧力脈動・振動問題の解決のために、脈動の加振源と考えられる、ポンプ羽根面からの流れのはく離の非定常特性を調べた。2次元渦法を用いた流れ解析により、オリジナルの翼型では、羽根面からの非定常はく離により、水路の音響固有値と近い周波数の周期的な変動流体力の発生が予測された。羽根の前縁近傍に小突起を取り付けることにより、羽根面流れのはく離を制御し、流体力の変動量を減少させると共に変動周波数を大きく変更できることがCFDにより予測された。加振周波数と水路の音響固有値を離すことにより、共鳴による脈動振幅の増大を防止できる。実機への小突起の適用により、脈動問題を解決した。
エバラ時報 No.206 p.16 井上 修行 ほか
冷温水同時供給形吸収冷温水機は、冷房負荷と暖房負荷とが同時に存在する空調システムに用いられる。本報では、冷温水同時供給形の吸収サイクルとその制御方法を分類し、サイクルシミュレーションにより実機で採用するサイクルと制御方法などを検討した。吸収サイクルは、温水器の凝縮冷媒を冷水製造に利用するエコノマイザサイクルが、省エネルギーとなる。エコノマイザサイクルには、温水器の凝縮冷媒を冷水製造側に移動する方式として、全量移動と必要量移動方式があるが、必要量だけを移動する方式が優れている。このサイクルに溶液循環量制御の改良を加え、全運転範囲で良好な省エネルギー性が達成できた。
エバラ時報 No.206 p.23 島村 和彰 ほか
筆者等は、高回収率が維持可能で、且つ薬品コストを低減したりん回収システムの開発を行った。リアクタはメインリアクタとサブリアクタからなる2槽式リアクタを採用し、メインリアクタ内のMAP粒径を平準化することで高回収率を維持した。また、高濃度のりん含有廃水に対し、安価な水酸化マグネシウムと硫酸を併用することで薬品コストを低減した。今回、処理量20m3/dのパイロット実験プラントをMセンタに設置し、嫌気性消化の脱離液を対象に上記の実証試験を行った。消化脱離液のりん濃度が約300mg/lに対し、処理水のりん濃度を10~25mg/lに低減できた。りん回収率は90%以上であり、良好に処理することができた。
エバラ時報 No.206 p.33 原 俊雄 ほか
カスタムポンプは、顧客の要望に対応する性能・機能・附属品の組み合わせが複雑で、膨大になる。このため、仕様決定には、顧客と営業と技術部門間での繰り返し調整が必要であり、従来からこのプロセスの革新が課題とされていた。カスタムポンプ電子カタログシステムは、カタログ情報と性能・機能選定機能とドキュメント出力機能をシステム化することによって、見積業務のフロントエンドでの処理を可能としており、営業・技術業務の効率化と見積リードタイムの短縮を図ることができる。本稿では、このカスタムポンプ電子カタログの内容と、電子カタログシステムの開発、及び電子カタログ関連の一般動向について記述する。
エバラ時報 No.206 p.39 佐藤 裕一
空調設備業界におけるCO2排出削減に貢献するため、成績係数(COP)が他の熱源機と比べて高いターボ冷凍機が注目されている。RTCシリーズは、空力性能の向上や玉軸受採用による機械損失の大幅低減を図った高効率多段圧縮機を中心に、サイクル効率、システム効率の改善などを行い、大幅な省エネルギー化を達成した。冷水仕様では、従来機に比べて約25%省エネルギーのCOP6の製品を出荷した。製氷仕様では、従来機と比べて約40%省エネルギーのCOP4.6に達することを実証試験で確認した。本報では、開発構想、省エネルギー化の手法、高効率多段圧縮機の特長、試験結果等の概要を報告する。
エバラ時報 No.206 p.43 佐藤 郁 ほか
(株)ブリヂストン甘木工場向けに、タイヤ製造工場から発生する多種の産業廃棄物を燃料とする産業廃棄物焼却ボイラ設備を納入した。本設備で燃焼した産業廃棄物のエネルギーは、ボイラで蒸気として熱回収され、タイヤ製造プロセスに利用される。また、不燃物として排出されたワイヤは鉄鋼原料、焼却灰はセメント原料としてそれぞれ回収される。本設備で焼却する産業廃棄物は多種多様であり、負荷変動が大きいため、酸素濃度、炉床温度を安定化させるための燃焼制御を採用した。その結果、排ガス性状に関してはいずれも公害防止基準を下回る良好なデータが得られ、竣工引き渡し後、順調に稼働している。
エバラ時報 No.206 p.47