エバラ時報 No.225 p.1 東京工業大学 大学院理工学研究科 材料工学専攻 教授 丸山 俊夫
エバラ時報 No.225 p.3 松村 正夫 ほか
地球温暖化への懸念から,地球環境保護のため,我が国に限らず,世界の多くの国において,エネルギー消費の抑制と対策が検討されている。省エネルギーは,人類が多くの現代文明を享受しつつ,原始の状態への逆戻りを抑止する有効な方法である。EUにおいてポンプの省エネルギー対策として先進的な試みがなされ効果を挙げている。我が国においても,ポンプの消費エネルギーは無視できない大きさであり,一層の実行ある施策が必要である。ポンプの省エネルギー対策としては最適なポンプシステム設計とポンプ羽根車外径加工,回転速度制御等による最適設計が有効である。
エバラ時報 No.225 p.7 長岡 一宏
水道事業で消費されるエネルギーの9割をポンプが占めている。ポンプや電動機の機械効率を上げる技術は限界に近く成果は期待できない。一方,運転制御や送水システム全体の運用方法には工夫の余地が残されている。
省エネルギーに繋がる運転制御システムを紹介するとともに老朽化した設備の更新に合わせた抜本的な見直しによって地球温暖化対策に貢献できる手法を提案する。
エバラ時報 No.225 p.13 川井 政人
高層ビルや集合住宅等で使用される給水装置では,様々な給水方式が採用されている。
これら各種の給水方式にて消費電力試算を行った結果,「増圧給水方式/推定末端圧力一定制御/PMSM駆動」方式が現在主流の方式に比較し,約70%の省エネルギーになる結果となった。しかし,給水装置は殆どの時間,定格よりも大幅に小さい水量で運転されているため,定格の小さいポンプを複数台並列設置し,運転する台数を制御することで更に省エネルギーを図ることが可能である。この場合,ポンプの機種と台数を最適化するため,給水装置が使用される建物の特徴と瞬時最大水量及び給水パターンとの関係を明らかにしていくことが重要な課題となる。
流体過渡現象解析プログラム(TRAPⅢ)による軸流ポンプ始動トルク特性のシミュレーション
エバラ時報 No.225 p.18 滝田 茂雄 ほか
軸流ポンプ始動時のトルク特性について,吐出し配管の充水状態変化に伴う運転点移行に着目しモデルケースの解析による数値的なケーススタディと実機場データとの比較検討を行った。解析では自社製の流体過渡現象解析プログラム(当社略称TRAPⅢ)によって現象を再現し,その有効性を確認するとともに軸流ポンプの始動トルク特性を評価する方法として期待できる結果を得た。
エバラ時報 No.225 p.24 山本 充利 ほか
近年,都市ごみ処理施設において,建設と運営を一体の事業とすることで,民間の能力を生かし,事業コストの削減と質の高いサービスの両立を目指す,DBO方式が事業形態の主流の一つとなっている。当社は,このDBO方式(運営期間20年間)により請負った事業において,次世代ストーカ技術を組み込んだ最新鋭の施設を建設した。このほど運転を開始し,その初期性能を確認した。本施設は排ガス再循環,強制空冷火格子を中核とした次世代型のストーカ炉を導入している。排ガス再循環によって,低空気比運転,排ガス量の低減,熱回収率の向上を図り,また,その窒素酸化物の低減効果から,触媒脱硝を用いることなく,低い窒素酸化物の基準値を達成している。
エバラ時報 No.225 p.32 檜垣 展宏 ほか
当社は,大出力のポンプ及び給水装置を実負荷運転状態で試験可能なEMC試験設備を導入した。本試験設備のシールドルームは,水の使用を考慮した設計となっており,外部試験機関にはないポンプ運転設備を備え,大型の供試体にも対応可能な広さを確保している。更に,電源設備及びEMC試験装置は,大電流容量機器や海外向け製品に対するEMC試験にも対応可能である。
エバラ時報 No.225 p.37 川﨑 裕之 ほか
ターボ分子ポンプ(TMP)は半導体・液晶製造装置やSEM等の検査装置に広く使用されているが,タービン翼が真空中で高速回転することで超高真空を達成する回転機械式であることから,補助ポンプの大気圧からのバックアップ運転を必要としていた。この補助ポンプなしの単独運転を可能とするには,TMPの圧縮性能を飛躍的に向上させる必要がある。このため,薄型多段セラミックス遠心翼による翼クリアランスの極小化,動圧軸受及びセンサレス磁気軸受等の開発を実施し,完全オイルフリーの小型の「大気圧ターボ分子ポンプ」を完成させた。
エバラ時報 No.224 p.1 横浜国立大学 名誉教授(前学長) 飯田 嘉宏
エバラ時報 No.224 p.3 山口 忠司 ほか
ターボ冷凍機の効率は,従来技術の延長では理論的に限界に近いため,高効率化技術として,(1)二重冷凍サイクル及び伝熱機器(2)ギアレス高効率圧縮機(3)インバータ駆動高速モータを開発し,これらの技術を搭載した超高効率ターボ冷凍機を作製した。その実機にて伝熱機器,圧縮機,モータ,インバータ等の評価・改良試験を行った結果,定格点における目標値COP=7.0を達成した。超高効率ターボ冷凍機の温度特性,部分負荷特性,制御特性なども優位な結果を得た。そこで,本開発機を本年度市場投入する。
実証プラントを用いたりん回収を組み込んだオゾンによる汚泥減容化の検証
エバラ時報 No.224 p.10 荒川 清美 ほか
汚泥減容化においては,オゾン処理により汚泥が溶解し生成した有機物,窒素が生物処理に流入し生物処理の負荷が増加することから,現存する生物処理設備にオゾン処理を付加する場合,酸素供給量が不足することもあり得る。筆者らは,オゾン処理後の排出ガスは大部分が酸素であることに注目し,この排出ガスを酸素源として汚泥減量化型の生物処理プロセス(嫌気—無酸素—好気法)の開発を行った。更に,嫌気槽の上澄液を原水としたりん酸ヒドロキシアパタイト(HAP)によるりん回収工程を付加した。このプラントを愛知万博会場に設置し,処理性能の評価を行った。
エバラ時報 No.224 p.25 西本 将明
菊之露酒造では,最大15t/dの泡盛蒸留粕が発生し,これまでは肥料や飼料などとして利用されてきた。しかしこれらの利用は,天候や利用先の事情によって受け入れが左右されるため,新たに安定した処理方法が求められていた。一方で工場内においては,ビン詰め工程等で多量の蒸気を使用しており,その燃料として重油の消費量がかさんでいた。これら二つの問題点を解決するため,メタン発酵によって蒸留粕からエネルギーを回収し,再利用する設備を新設した。
「腐食防食講座-海水ポンプの腐食と対策技術-」第5報:ステンレス鋼及びニレジスト鋳鉄の腐食と対策技術
エバラ時報 No.224 p.28 宮坂 松甫
ステンレス鋼は表面の不働態皮膜によって耐食性が維持されるが,不働態皮膜は塩化物イオンの存在によって破壊され,すきま腐食,孔食,応力腐食割れなどの局部腐食を発生することがある。ステンレス鋼の特性,腐食事例及び対策技術を述べる。ニレジスト鋳鉄は,普通鋳鉄と比べて均一腐食速度が低い,孔食・すきま腐食を発生しないという特長があるが,応力腐食割れ感受性をもつことが欠点である。ニレジスト鋳鉄の応力腐食割れの機構,挙動及び対策技術を述べる。最近,腐食性の高い海域やプロセスで使用される海水ポンプで,2相ステンレス鋼の採用例が増えている。最後に,中東海域で行った各種2相ステンレス鋼の腐食実験及び海水ポンプへの適用事例を紹介する。
エバラ時報 No.223 p.1 九州工業大学大学院 生命体工学研究科 教授 塚本 寛
エバラ時報 No.223 p.3 杉山 憲一 ほか
多量な土砂を含む河川水汲上用に使用されるポンプはスラリー摩耗の発生が深刻な問題である。したがって,羽根車のスラリー摩耗深さ分布を予測することは,材料選定,メンテナンスなどの観点から非常に重要な技術である。本研究ではポンプ用羽根車のスラリー摩耗深さ分布を予測する手法について報告する。アルミニウム合金製羽根車のスラリー摩耗試験を実施し,摩耗試験結果と粒子挙動解析結果を比較したところ,解析による粒子の衝突位置と試験での摩耗深さ分布は相関がある。本予測技術は,摩耗深さ分布の定量的な予測精度において工業的に十分有用であると考える。
水を磨くダイヤモンド-ダイヤモンド電極の廃水処理性能について-
エバラ時報 No.223 p.11 芹川 正浩 ほか
CVD法で製造した導電性の人工ダイヤモンド膜が蒸着された電極は,ダイヤモンド表面で発生する強力なOHラジカルで各種産業廃水に含まれるCOD,色度を効率的に除去した。貴金属電極と比較しても優れた耐久性が証明され,工業的に用いることができる耐久性とサイズの電極が製造可能となっている。本電極を搭載したパイロット処理装置は,フィールド試験でも安定な運転ができることが確認された。
セルロース含有廃棄物の高温メタン発酵処理系における微生物群集の挙動解析
エバラ時報 No.223 p.20 立澤 知子 ほか
含水率の高い難分解性セルロースを含む有機性固形性廃棄物を,高効率に高温(55℃)メタン発酵し安定に処理することが課題となっている。これに対し,メタン発酵関連微生物群の16S rDNAをターゲットとした定量PCR法を確立して挙動を調査したところ,我々が単離・同定したセルロース分解細菌JC3株は,セルロース含有模擬原水処理汚泥中で優占化し,セルロースの分解に寄与していることが分かった。また,安定処理の指標となる菌として,水素資化性メタン生成古細菌Methanoculleusの菌が有効であり,この菌濃度の低下がメタン発酵の効率を低下させるプロピオン酸の蓄積を引き起こす一つの要因であることが分かった。
エバラ時報 No.223 p.26 栗原 康成 ほか
2008年6月に開業した東京メトロ副都心線に高効率ヒートポンプを用いた氷蓄熱システムが導入された。主な特長は,①コンパクトで高効率なヒートポンプの採用,②コンパクトで高IPF(氷充填率)のコンテナ型氷蓄熱槽の採用,③地下鉄特有の電力事情並びに空調負荷に合わせた最適な空調制御システムの採用である。本システム導入により従来方式の空調システムと比べて年間約40%のランニングコスト削減と24%(670トン)のCO2削減が見込まれている。
エバラ時報 No.223 p.32 高橋 貞良 ほか
当社が取り組んできた風洞設備は,これまでほとんどが日本国内に建設されてきたが,このたび初めて海外日系企業へフルターンキー契約で納入した。要求精度に対する技術検討として主ノズル出口での気流分布精度のシミュレーション検討を行い,その結果に基づいて現地製作施工とした。完成後における気流性能の検証では,主ノズル出口3.0m断面で風速分布3.0%以下,第二ノズルの出口1.0m断面で風速分布1.0%以下を達成し,予測どおりの気流分布精度が得られた。今回の納入結果より,当社で長年培った風洞ノウハウと気流シミュレーション技術を使った今後の展開が可能となった。
「腐食防食講座-海水ポンプの腐食と対策技術-」第4報:腐食防食解析技術
エバラ時報 No.223 p.37 宮坂 松甫
カソード防食及び異種金属接触腐食や酸素濃淡電池のようなマクロセル腐食を定量的に予測するために,境界要素法解析技術を開発した。差分法や有限要素法と違って,領域内部までの要素分割を必要としない境界要素法は,複雑な3次元領域の腐食問題を効率的に解析するためには最適な方法である。本報では,まず,腐食防食解析技術開発の歴史を簡単にレビューする。次に,境界要素法解析技術及びそれを使用した解析システムについて説明し,そのシステムの解析精度と有効性を,カソード防食及び異種金属接触腐食に関する検証実験及び解析事例によって示す。
エバラ時報 No.222 p.1 早稲田大学理工学術院応用化学専攻 教授 平沢 泉
エバラ時報 No.222 p.3 山田 宏幸 ほか
固体酸化物電解セルを用いたバイオガスからの高純度水素製造プロセスを提案した。本プロセスでは,脱硫などの前処理を介してバイオガスを固体酸化物電解セルアノード側に,カソード側には水蒸気を導入し,700℃以上の温度で電解することにより,省電力で高純度水素を製造できる。実証試験により,低電圧電解及び水素製造を確認し,本プロセスの有効性を実証した。本プロセスは簡易なシステム構成で高純度水素が得られる特長を有しており,特に,発生地域が分散し,形状・性状が多種多様なバイオマス資源に適していると思われる。また,バイオマスに限らず,色々な低品位の還元性ガスが発生するところにも適用できると考えられる。
エバラ時報 No.222 p.10 神田 裕之 ほか
次世代半導体ウェーハの配線技術として,Cuの電解めっき装置が適用されている。このめっき法ではウェーハ表全面をいったん金属膜(シード)で覆い,その面をカソード電極,外周を端子部としてCuが成膜されることになる。しかしながら,微細化すなわち配線溝幅の縮小化に伴い,このシード膜も数nm程度への薄膜化が必然となり,ウェーハ面での電気抵抗(シート抵抗)も増大する。したがって,従来のめっき法では外周端子部にめっきが集中(ターミナルエフェクト)し,均一性が得られない。アノードとカソード間に高電気抵抗の含浸材を設置し,薄膜のRu(ルテニウム)シード上に電解めっきにてCu成膜,良好な膜厚分布,膜質及び埋め込み特性が得られた。
フレッシャー3100高層ビル用高揚程タイプの制御システムバックアップ
エバラ時報 No.222 p.19 手嶋 友治 ほか
近年のビル高層化に伴い開発された高揚程形自動給水ユニット(F3100高層ビル用高揚程タイプ)において,CPU基板や圧力センサに異常が発生した場合でも,正常なときと同じ給水が可能な制御システムバックアップの開発を行った。前記異常発生時自動的にバックアップ運転に切り替わるため断水時間が短く,またユニット設置面積も従来の標準品と同一である。推定末端圧力一定制御による最適な給水も継続可能である。
エバラ時報 No.222 p.22 佐々木 克之 ほか
水道分野においては,水道水中のクリプトスポリジウム等対策の一つとして,紫外線処理設備の導入が進められている。当社では,紫外線照射装置の開発を進める一方,紫外線照射による水質への影響評価など,紫外線処理の適用に向けて様々な研究開発を行ってきた。このたび,これらの研究開発の成果をもとに富山県砺波市の湯山配水池に,当社の第1号機となる水道用紫外線処理設備を納入した。
エバラ時報 No.222 p.26 小野澤 益信
デバイスの製品歩留まりに影響を及ぼすウェーハベベル部に残存している不要物質やシリコンのダメージを除去する技術として開発され,既に半導体デバイス製造の量産において歩留まり向上の実績をあげている当社のEAC300bi-Tに対して,更なる高スループット,省設置面積,そして,低CoCを望む声に応え,この度新型機EAC300bi-hpを発売した。従来のシステムに比べ,3.3倍の処理能力,約1/3以下のCoC,設置面積16%削減を達成した。
「腐食防食講座-海水ポンプの腐食と対策技術-」第3報:異種金属接触腐食とカソード防食
エバラ時報 No.222 p.33 宮坂 松甫
海水中で電位の異なる材料が混用されると,異種材料間で海水を電解質とするマクロセルが構成され,電位が卑側の材料の腐食が異種金属接触腐食によって助長される。異種金属接触腐食は,条件によってはその速度が,通常の(単一材料の)腐食の数十倍以上にも及ぶことがあるので,海水腐食の中で最も注意を要する腐食形態の一つといえる。一方,電位が貴側の材料は腐食が抑制される。この腐食抑制現象を積極的に利用した防食法はカソード防食(流電陽極法及び外部電源法)と呼ばれる。本報では,海水ポンプに見られる異種金属接触腐食の事例,機構及び対策技術,並びにカソード防食の機構及び適用法について述べる。
エバラ時報 No.222 p.49