エバラ時報 No.229 p.1 岡山大学名誉教授 鳥取環境大学環境マネジメント学科特任教授 サステイナビリティ研究所所長 田中 勝
エバラ時報 No.229 p.3 米山 豊 ほか
低濃度有機性排水のメタン発酵処理技術の確立を目的に,生活排水を対象とした無加温下でのUASBパイロットプラント実験(処理量:50m3/d,有効容量20.2m3,有効水深5m)を行った。実験では原水として流入下水,種汚泥として下水の中温消化汚泥をそれぞれ使用した。実験経過後397~631日目期間の平均値で,水温23.8℃,CODCr容積負荷0.99kg-CODCr/(m3・d),CODCr汚泥負荷0.12kg-CODCr/(kg-MLVSS・d)において,バイオガス発生量2.4m3/d,メタンガス組成70.5%,CODCr除去率63.8%の安定したUASB処理結果が得られた。
エバラ時報 No.229 p.10 黒岩 聡 ほか
コントローラ一体型の永久磁石形同期電動機(Permanent Magnet Synchronous Motor: PM motor)を搭載したインラインポンプ(In-line pump)SSLD型を開発した。回転速度の最適化と流れ解析によるポンプ効率の向上,高効率な永久磁石形同期電動機の採用,ポンプコントローラ(Pump controller)による用途に合わせた各種の回転速度制御機能により当社従来同等機種と比較し,最大50%以上の消費電力削減を実現した。
エバラ時報 No.229 p.15 櫻井 清之 ほか
当社次世代ストーカ技術を組み込んだ2件目の施設を納入した。本施設は周囲の環境・景観と調和した,地域にやさしいごみ処理施設として運営されている。
本施設は排ガスの高度処理だけでなく,焼却灰や飛灰を溶融処理し再利用するためのスラグを製造する施設である。また,ごみ焼却廃熱から得たエネルギーで発電し,灰溶融炉を含む場内使用だけでなく,隣接する施設の使用電力も年間を通じ賄っている。さらにプラント排水を場外に排出しないクローズドシステムを採用している。また,既設管理棟の再利用や工場棟の壁面を緑化し景観に配慮するなど,設備性能面だけでなく環境,地域との調和に配慮した施設である。
エバラ時報 No.229 p.21 渡邊 和章 ほか
倉浜衛生施設組合向けに,流動床式ガス化溶融炉「エコトピア池原」を納入した。2009年10月より試運転を開始,性能試験を経て2010年3月に竣工・引渡しを終え,現在順調に運転を継続している。性能試験では,加熱脱塩素化処理無しで灰中ダイオキシン類含有量の厳しい自主基準値をクリアした。また,本施設のスラグは道路用とコンクリート用の二つのJIS規格も満足している。更に発電の安定性を確認する蒸発量制御試験でも良好な結果を得ることができた。
エバラ時報 No.229 p.27 片岡 直明
嫌気性生物処理は,酸素のない嫌気環境下で生育する嫌気性菌の代謝作用により,有機物をメタンガスや炭酸ガスに分解する方法である。この処理法は,19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパで始まり,1950年代には加温や機械式かくはんなどの処理方式が開発され,国内でも下水汚泥やし尿処理での汚泥減量化・安定化を目的とした嫌気性消化法が普及した。1980年代になると微生物固定化方式による高負荷型嫌気性処理法が開発され,産業排水処理分野を中心に普及した。そして現在,低炭素社会に向けた未利用資源の活用技術として,生ごみや食品加工残渣,汚泥などの廃棄物系バイオマス向け嫌気性処理法が大きく脚光を浴びている。
エバラ時報 No.228 p.1 熊本大学副学長 大学院自然科学研究科 教授 古川 憲治
汚水・廃水用水中ポンプ インターナル・クーリング・システム(ICS)の開発
エバラ時報 No.228 p.3 牧野 力 ほか
汚水・廃水用水中ポンプのモータ冷却用インターナル・クーリング・システムを開発した。本システムにより,ポンプが水没していないときでもモータを安全に運転でき,ポンプ取扱液に混入している種々の異物の影響を受けずに,モータ冷却が可能となる。開発した本システムにおいては,新規に設計した羽根車を二つのメカニカルシールの間に配置し,新たに設けた流路を通って,モータの周囲にある水冷ジャケットへ向かうように,冷却液を循環させている。このようにして,モータより発生した熱は冷却液へ伝わり,熱交換器を介して効率良くポンプ取扱液へ放出される。
エバラ時報 No.228 p.7 岡賀 祥平 ほか
既設土木水槽を利用した国内最大規模(最大処理水量30000m3/d)の浸漬式膜ろ過施設を佐野浄水場(兵庫県豊岡市)に納入した。今回の工事は,既設浄水場の運転を停止することなく既設の急速ろ過設備を膜ろ過設備に更新するものであった。この工事では,既設沈澱池を膜の浸漬槽として再利用したので,建設コストと建設廃材の発生を低減できた。更に,膜ろ過に必要な動力には,膜浸漬槽(既設沈澱池)と膜ろ過水槽の水位差2.3mを利用し,大幅な省エネルギー化を図った。このように,既設土木水槽を利用し,水位差利用による無動力運転を採用した槽侵漬式膜ろ過施設は,国内では初めてである。
エバラ時報 No.228 p.13 北川 政美
好気性生物処理は,有機性汚濁物を含む排水の主要な処理技術となっている。また,富栄養化の原因となる窒素,りん除去に対しても重要な役割を果たしている。本文では好気性生物処理技術の特徴と発展の流れを概説した。併せて,エネルギーや汚泥発生量削減,安全で衛生的な水処理の観点から今後進展が期待される,嫌気性処理と好気性処理の組合せ,アンモニア脱窒,MBR(Membrane Bio Reactor)技術を紹介した。
エバラ時報 No.227 p.1 電気通信大学 情報理工学研究科 知能機械工学専攻 教授 石川 晴雄
エバラ時報 No.227 p.3 島村 和彰 ほか
筆者らは,下水からりんを除去するとともに,除去したりんを資源として有効利用できるりん回収プロセスの開発を行った。下水処理過程で発生する排水や汚泥の特性(含有成分,濃度,水量等)を考慮して五つの処理プロセスを開発した。りん酸マグネシウムアンモニウム(MAP)の晶析現象を利用した二つの処理プロセスは,実証試験においてりん回収率90%以上を達成でき,また,回収したりんを肥料として利用できることから,これらのプロセスが実用的であることを実証した。ヒドロキシアパタイト(HAP)の晶析現象を利用した三つの処理プロセスは,実証試験でりん濃度を数mg/Lまで低下でき,また,回収したHAPはりん鉱石の代替としての利用を検討している。いずれの処理プロセスも,水系の環境問題の解決と資源回収の両面を満足できることを明らかにした。
エバラ時報 No.227 p.9 小西 康貴 ほか
東京都水道局に認可された高層建物向けの直列多段型増圧直結給水装置を開発した。本製品では,給水圧力変動の抑制効果やメンテナンスの容易性から,2台の増圧給水設備を通信線で接続して給水状況に合わせた連携運転を行う通信方式を採用している。
エバラ時報 No.227 p.13 伊東 一磨 ほか
近年,半導体や液晶パネル製造工場において環境負荷の低減が活発化している。ドライ真空ポンプに対して,ユーティリティ(電力,冷却水,窒素)のコスト削減やポンプの設置スペース削減の要求が増えており,ポンプの総合的なランニングコスト削減が重要な課題である。当社では従来から製造販売してきた製品に対して,更なる省ユーティリティ化と省フットプリント化を実現したドライ真空ポンプを開発した。圧縮動力の削減とモータ効率の向上により消費電力を低減し,大幅な省ユーティリティ化を実現した。また,ポンプモジュールの小型化と計装品のレイアウト改善によりポンプを省フットプリント化した。
エバラ時報 No.227 p.18 大里 英雄 ほか
現在,地球規模で温暖化対策に取り組むなか,環境対策にビジネスを見出す動きが加速してきた。当社も,半導体製造工程に納めているドライ真空ポンプの消費エネルギーを調査し,消費エネルギー量が多い旧型ドライ真空ポンプを最新の省電力ドライ真空ポンプへ置き換える活動を開始した。
エバラ時報 No.227 p.22 小川 俊之 ほか
富津事業所は,当社の大型・高圧カスタムポンプ製品の主力生産工場であった羽田工場の移転を背景に,将来にわたる風水力事業の主要拠点として千葉県富津市に建設された。新工場は羽田工場と同等の生産能力を有するとともに,コストダウンや製品生産リードタイムの半減を実現し,高付加価値をもつ競争力の高い製品を生産する工場として計画され,100000m2の敷地を活用する建築配置と工場内の生産動線及び設備配置を実施し,計画から約2年の短期間で完成した。
エバラ時報 No.226 p.1 九州大学大学院工学研究院 教授 古川 明徳
エバラ時報 No.226 p.5 神野 秀基 ほか
CO2の回収貯留(CCS)において,分離回収後のCO2を搬送し貯留するには,ほぼ大気圧のCO2ガスを,地下の圧力及び管路抵抗を考慮に入れた圧力まで昇圧する必要がある。CO2ガスの昇圧に必要な動力は圧縮経路により変化する。シミュレーション検討にて,圧縮機で5.0~5.5MPa程度まで昇圧して凝縮させた後,液化CO2をインジェクションポンプで昇圧する経路が,省エネルギー上最適であることを確認した。
エバラ時報 No.226 p.11 戸田 暁人
石油化学分野の中でも特に当社の主力分野であるエチレンプラント向けのガス圧縮機駆動用蒸気タービンについて,当社の最近の技術動向を紹介した。近年はプラントが大型化し年産100万トン規模のエチレンプラントが主流となっている。(株)荏原エリオットではガス圧縮機とその駆動機である蒸気タービンの双方について大容量化に対応して市場のニーズに応えている。蒸気タービンでは大容量化に対応するためにN1620DC二重胴高圧ケーシング,N105排気ケーシング,137-F1高差圧ダイアフラム,506-D1高圧段動翼,661最終段動翼,新型蒸気加減弁などを開発した。
特定施設水道連結型スプリンクラー用消火ポンプユニット -FSDFS型-
エバラ時報 No.226 p.16 大神田 和巳
社会福祉施設向スプリンクラー設備用に補助水槽一体型の消火ポンプユニットFSDFS型を開発した。本消火ポンプユニットは補助水槽の下に消火ポンプを配置することで小型化,屋外カバーを設けることで,屋外設置を可能とした。消火ポンプは4機種とし,吐出し量に応じて適切な容量を有した補助水槽(FRP製とステンレス製を用意)を組み合わせる。また,始動は遠隔スイッチによる手動始動に加え,ダイアフラム式小型圧力タンク・圧力スイッチによる自動始動にも対応可能である。主要機器には多数実績のある従来品を使用し,ポンプは片吸込渦巻ポンプFSD型,制御盤はEPM2型,流量計はFA2-25型としている。
バイオマス燃焼発電用ICFBの建設と運転・維持管理 -神之池バイオマス発電所-
エバラ時報 No.226 p.21 岡本 晃靖 ほか
日本最大の木質バイオマス専焼発電設備を建設し,1年以上の安定稼動を確認した。当社は建設のみならず,試運転に引き続き施設の運転・維持管理も行っている。このICFB(内部循環流動床ボイラ)は,これまでの特長を活かしつつバイオマス燃料に特化したボイラで,廃棄物焚きボイラより構造をシンプルとし,低空気比運転による高効率化と建設費用の低減を達成した。神之池バイオマス発電所では,バーク・生オガ・乾燥オガの3種類の燃料を使用し,故障・停止時には相互にバックアップ運転が可能な設計となっている。引渡し後1年間の運転日数は350日であった。
バイオマス発電設備 内部循環流動床ボイラ -住友大阪セメント(株)栃木工場向け-
エバラ時報 No.226 p.26 飯田 裕一 ほか
住友大阪セメント(株)栃木工場向けにバイオマス発電設備を納入した。主燃料は木質チップ,副燃料は石炭とチップタイヤを使用する。ボイラは当社独自の内部循環流動床ボイラ(ICFB)で蒸発量は最大105t/h,発電出力は定格25MWである。本設備の特長は,発電効率32%というバイオマス用としては高効率発電で,その方策として①蒸気条件の高温高圧化,②層内過熱器の設置,③高圧給水加熱器の設置,④水冷式復水器の採用,の4項目の技術を採用している。引渡後の運転状況は,2009年5月の中間点検後167日間の連続運転を継続中であり,昼間は定格に近い24MWの発電を行い,夜間は工場負荷に合わせた発電負荷で運転している。
エバラ時報 No.226 p.31 築井 良治
新潟県上越市にある上越バイオマス循環事業協同組合に,生ごみ・下水汚泥・未利用間伐材などのバイオマスを複合的に有効利用するバイオマス変換施設を納入した。本施設では,生ごみをメタン発酵処理するときに発生するバイオガスを燃料として,下水汚泥を乾燥処理しセメント原料などに有効利用している。また,未利用間伐材などを下水汚泥乾燥用燃料として利用するとともに,一部を成形し木質ペレットを生産している。複数の未利用バイオマスを複合的に処理し,バイオマスエネルギーを高い効率で有効活用する施設となっている。2008年10月から,実稼動運転に入っており,現在に至るまで順調に運転を継続している。
エバラ時報 No.226 p.35