エバラ時報 No.241 p.1 早稲田大学 基幹理工学部 機械科学・航空学科 教授 先端生産システム研究所 所長 工学博士 齋藤 潔
エバラ時報 No.241 p.3 福住 幸大 ほか
工場のプロセスから排出される100℃以下の温水や250℃以下の排ガスといった熱は,温度が低いために未利用のまま捨てられているケースが多い。著者らは多段昇温型の吸収ヒートポンプを開発し,排熱を昇温して150℃の蒸気を発生させる試験装置を開発し,運転試験を実施してその有効性を確認した。運転中の機内圧力を大気圧未満とすることで,圧力容器の法規制を回避し,定期点検による負荷を大幅に低減した。排熱から蒸気を生成することで,既設のボイラの負荷を軽減し,ボイラで消費する化石燃料を削減する効果が期待される。
EUVマスク欠陥検査に用いる新写像投影(PEM)式電子光学系の製作
エバラ時報 No.241 p.9 畠山 雅規 ほか
hp(halfpitch)16nmのデバイスに適用するEUVマスク欠陥検査装置を実現するため,新写像投影(PEM:Projectionelectronmicroscopy)式電子光学系の設計・製作を行った。この新PEM式電子光学系を用いたEUVマスク欠陥検査装置は、従来のDUVやSEM式に比べ高解像度・高速検査を実現することが可能となる。16nm欠陥感度を可能とするため,hp2Xnmのデバイスに適用する装置(当社従来装置)をモデルとして必要とされる性能向上を見積った。次に,そのための仕様を検証して,新PEM式電子光学系の設計・製作を行った。製作した新PEM式電子光学系を評価した結果,収差・透過率等において,要求される性能向上を達成したことが確認できた。
エバラ時報 No.241 p.15 神田 薫平 ほか
大きな被害をもたらした東日本大震災で,当社が納入した多くのポンプ場も被災した。震災直後から復旧活動を行い,いくつかの機場は非常に短期間に応急復旧を果たし,その年の入梅前に排水運転を可能とした。引き続いて行われた本復旧工事は,恒久的に使用できるように設備の更新と再整備が求められ,そのためのいくつかの特徴がある。地震は沿岸部一帯を地盤沈下させた。ポンプ実揚程の増加による排水量の低下を改善するため,排水能力を見直すなどをした。また,事前調査ができなかった箇所は詳細点検して更新提案を行った。これらの過程を経てポンプ設備は震災前の設備までに機能回復する途についた。
エバラ時報 No.241 p.23 山崎 直樹 ほか
中国南水北調東線第一期工事で全送水能力150m3/sの2級ダムポンプ場向けポンプの現地試運転が完了した。超大口径3000mmの本ポンプは,電動機と羽根車を一軸直結する独特な大型水中電動機形式を有している。ポンプ内ケーシングと電動機の外ケーシングが共用構造となっており,電動機軸にオーバーハングして羽根車を設置する構造となっている。また52多極同期電動機を採用し周波数制御によって水位変動に即した広範囲運転レンジが可能である。電動機直結型チューブラポンプの大型化は今後経済的で安定した揚排水機能のポンプ製造が可能となる。
エバラ時報 No.241 p.30 橋本 恭二 ほか
厚木市環境センターにて,環境省の循環型社会形成推進交付金を活用した基幹的設備改良工事を行った。竣工後24年経過し老朽化した設備の更新,維持管理費増加などの問題を解決し,二酸化炭素の排出量を削減する改良工事である。改良工事には,多くの省エネ型の機器を採用し場内消費電力の削減を行った。電気計装設備の更新に当たっては,余剰蒸気を有効利用する制御システムを構築したことで発電量を増加することができた。改良工事の結果,二酸化炭素の排出量を大幅に削減し,安定した運転を行うことができた。また,二酸化炭素の削減量を帳票に取り込み,最適な焼却運転計画に活用することが可能となった。
バイオマスエネルギー利活用施設における下水汚泥と事業系食品残渣の混合消化事例
エバラ時報 No.241 p.35 蒲池 一将 ほか
黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設では,PFI手法(BTO方式)を採用し,特別目的会社(SPC)である黒部Eサービスによって運営されている。本施設では,下水汚泥と事業系食品残渣としてコーヒー粕を混合・前処理した後メタン発酵を行い,消化槽中の有機酸蓄積の少ない良好な混合消化処理を行っている。消化液は脱水後,バイオガスを燃料とした蒸気ボイラを利用して乾燥処理することで,ほぼ化石燃料を用いずバイオマスエネルギーだけで汚泥を乾燥することができた。さらに乾燥汚泥を有効利用することで,バイオマス資源の循環利用システムを構築することができた。
エバラ時報 No.240 p.1 福井大学大学院工学研究科 教授 工学博士 服部 修次
エバラ時報 No.240 p.3 中本 浩章 ほか
浄水場や発電所などの重要施設において,ポンプは,長期間の使用に耐えるため,定期的な保守管理のもとで運用されている。近年では比較的軽微な損傷の補修には,施工性に優れた樹脂系補修材料が用いられることが多く,用途に応じて様々な材料が販売されている。樹脂系補修材料の評価項目としては,施工性,耐水性,耐薬品性,耐キャビテーション壊食性,耐摩耗性,接着力が挙げられるが,メーカのカタログ情報だけでは十分ではなく,特に耐キャビテーション壊食性は定量的に評価されていない。そこで実際の補修現場で使用されている樹脂系補修材料の耐キャビテーション壊食性を評価した結果,ガラス繊維強化プラスチックが優れた結果を示した。
プレミアム効率(IE3)モータ搭載 省エネルギー形陸上ポンプ
エバラ時報 No.240 p.7 中村 陽一 ほか
プレミアム効率モータを搭載し,ポンプ部分の効率も改善した省エネルギー形陸上ポンプのLPS-E型,LPD-E型,FSD-E型を開発した。これらのポンプはいずれもプレミアム効率モータを搭載した省エネルギー形標準ポンプシリーズの“Save Energy Pumpシリーズ”の一つである。高効率ハイドロとプレミアム効率モータを組み合わせることで従来製品よりも総合効率が向上し,省エネルギーに貢献できる。併せて発錆対策や安全性の向上などの対策を講じた。また,取付寸法など従来機種との互換性を維持している。
エバラ時報 No.240 p.11 篠原 豊司 ほか
燃焼式排ガス処理装置G5-Dual型は,装置内に2系統の排ガス処理系統を搭載していることを特長とした製品である。排ガス処理運転を停止することなくメンテナンスや修繕作業を実施することができるためダウンタイムを大幅に削減することができ,2系統を同時に運転させれば大風量の排ガス処理にも対応することができる。また,排ガス流入ポートも最大12ポートまで設置可能としており,近年の半導体等の製造装置における多チャンバ化の流れにも対応した仕様となっている。
よみがえれ越後平野(新川河川排水機場ポンプ設備更新工事-第1報)
エバラ時報 No.240 p.15 高部 哲男 ほか
新川河口排水機場は新潟市の西蒲原地区に建設された国内最大の排水機場の一つである。常時海水にさらされる過酷な環境のため腐食が著しく,建設から約40年が経過して施設の更新が必要となった。機場の排水機能を維持しながら非出水期の限られた期間内で,コンクリートケーシング構造の超大型ポンプを毎年1台更新する極めて難度の高い工事となったが,荏原の更新工事ノウハウを結集して順調に進められている。本工事では現地据付工事の工程を円滑に進めるために維持管理作業の改善に着目し,様々な工夫やアイデアが採用されている。本報では第1報として同排水機場の特徴と更新工事の設計的な要点を報告する。
排水機場更新工事における流れ解析の適用(糖田排水機場ポンプ設備改修工事におけるポンプ吸水槽渦対策)
エバラ時報 No.240 p.22 江藤 文宣 ほか
排水機場の更新に当たり機場総排水量の増量によってポンプ吸水槽に有害な渦発生が予想されたので,流れ解析によって渦対策検討を行った。流れ解析では遊水池を解析対象に含めることで渦対策形状の最適化を図り,さらに模型水槽試験によって有効性を確認した。本検討で考案した渦対策形状は既設土木形状への負担が小さく,施工期間も短縮できることから,更新工事における渦検討として画期的な成果を得ることができた。将来的に流れ解析だけでポンプ吸水槽の渦検討を行うことが期待されており,本検討はベンチマークとして今後の渦検討の高度化に寄与するものである。
エバラ時報 No.240 p.27 高橋 貞良 ほか
インド国内の日系企業に設備設計と機器供給を主体のEPS(Engineering, Procurement and Supply)契約で環境風洞を初めて納入した。建物と計測装置・空調機器・現地工事を除いた空力風洞・環境設備全体に関する設計及び機器供給が納入範囲である。風洞は運転効率の高いゲッチンゲン型風洞とし,ノズル吹出し口は測定対象物の周囲を流れる気流が必要にして十分な状態となるように隅切り形の縮流ノズルとした。隅切り形の縮流ノズルを採用することによって,当社が納入してきた従来のゲッチンゲン型風洞に比べ25%以上の動力低減効果が見られた。また近年納入した風洞での実績と各部の設計改良で,主ノズル風速比で4%以上能力アップした結果が得られた。今回納入の設備能力を縮流ノズルの出口最大風速で示すと,主ノズル寸法W2.9m×H2.2mで136km/h,第二ノズルW2.05m×H2.05mで171km/hである。
エバラ時報 No.239 p.1 九州工業大学大学院 教授 木村 景一
エバラ時報 No.239 p.3 出水 丈志 ほか
近年の原子力発電プラントでは,原子炉や蒸気発生器の材料の応力腐食割れなどを防ぐために,これらの水質をより高純度に維持することが求められている。特に,復水脱塩装置で使用しているカチオン樹脂から酸化劣化によって溶出する硫酸イオンの低減が重要である。最近では,耐酸化性に優れた架橋度が14%の均一粒径ゲル型カチオン樹脂が開発され,複数のプラントに適用されている。水質の更なる高純度化を目指して,カチオン樹脂オーバーレイ等の復水脱塩装置内の樹脂の配置法を改善する方法を考案し,コールドカラム試験を実施した。また,カチオン樹脂溶出有機物の除去能力の高いアニオン樹脂を開発し,コールドカラム試験を実施した。
エバラ時報 No.239 p.10 駒井 正和 ほか
ポンプの省エネルギー化をユーザが積極的かつ容易に実現することを可能としたポンプ専用多機能可変速ドライバ(EVFC型)を開発した。EVFC型は,誘導モータ及び高効率な永久磁石同期モータの両方を可変速運転できるモータドライブ機能だけでなく,これまで当社が培ってきたポンプの圧力・流量制御をはじめとした最適制御や複数台連携運転機能,ポンプ保護機能を多数搭載した。その結果,EVFC型はポンプの省エネルギー化だけでなく,アプリケーションに適した制御運転と保護をユーザに提供することができる。
エバラ時報 No.239 p.15 池田 正禎 ほか
海外各地域の市場要求に適合する給水装置と,その構成部品の現地調達を実現することをコンセプトとする多機能型可変速給水装置用コントローラEIPC型を開発した。最大6台までのポンプとその制御方式を柔軟に選択できるようにしたので,多様な要求仕様に合わせて最適な給水装置が構成できる。また,EIPC型は各メーカの主要なインバータ機種と組合せ可能であり,海外各地域での給水装置構成部品の現地調達率向上を図っている。給水装置の構成部品の内,ポンプ停止判定条件の給水流量(=小流量)を検知できるフロースイッチレス方式を採用してメンテナンスフリー化したことや,給水ポンプシステムの詳細な運転情報を上位監視装置,通報装置へ伝送する通信機能を備えたことで,海外各地域での給水装置の維持管理を容易にした。
エバラ時報 No.239 p.20 塩川 篤志 ほか
ドライ真空ポンプは,半導体・液晶・太陽電池等のハイテク製品の製造ラインに多数用いられている。近年はこれに加えて,油回転ポンプが利用されてきた機械部品・金属製造,食品製造,理化学機器などの幅広い産業分野においても,作業環境の改善,稼働率の向上あるいはメンテナンス頻度の低減等を目的として,真空ポンプのドライ化が徐々に進んでいる。EV-A10型は,強制空冷方式の採用,大気側排気速度の維持,及び凝縮性ガスへの対応等を図ることによって,上述のような幅広い用途での使用を可能にしたドライ真空ポンプである。
「エバグロースU-700」シリーズによる汚泥脱水性能の向上−脱水ケーキ含水率改善と汚泥処理運転改善−
エバラ時報 No.239 p.24 大川 高寛 ほか
水ing㈱の薬品「エバグロースU-700」シリーズは生分解性のセルロース系原料を主成分とする繊維長さ5又は10mmの短繊維状の脱水助剤である。近年の生活様式の多様化や汚泥処理方式の変化によって,有機高分子凝集剤の単独処理では効率的な脱水処理が難しい場合が多い。松本市宮渕浄化センターでの下水消化汚泥を対象とした長期試験などの実証試験で,汚泥脱水時に「エバグロースU-700」シリーズを高分子凝集剤と併用し,汚泥の固形物あたり1~4%添加することで,①脱水ケーキ含水率の低減に伴う搬出量の削減,②汚泥処理量の増加など運転効率の改善効果が得られた。
エバラ時報 No.238 p.1 東北大学流体科学研究所 所長 教授 早瀬 敏幸
ヤシ殻系球状活性炭「エバダイヤLG-40」シリ-ズの高度浄水処理への適用性について
エバラ時報 No.238 p.3 佐藤 克昭 ほか
ヤシ殻原料を一旦粉砕し,特殊バインダーを加え混練・圧縮,造球後,炭化・賦活処理することで,ヤシ殻を原料としながら2nm以上のメソポアからマクロポア領域が発達した,高機能・高硬度の球状活性炭「エバダイヤLG-40」シリーズを開発した。一般の石炭系破砕炭やヤシ殻破砕炭との比較試験を実施し,当該「エバダイヤLG-40」シリーズの有機物等に対する処理性や生物活性炭としての特性に関する優位性を確認した。また再生利用や二酸化炭素排出量等,その他高度浄水処理への適用性について幾つかの知見を得た。
エバラ時報 No.238 p.9 山田 誠一郎 ほか
海外市場向け大型汚水汚物水中ポンプDSC4型は当初,北米市場向けに60Hzシリーズが開発され,その後50Hzシリーズを追加し,更に今回,大容量,大出力範囲を追加した。本ポンプは,異物通過径,インバータ運転対応,槽外設置方式,各種保護機能,防爆認証などグローバル市場で要求される機能と性能を網羅した仕様となっている。
エバラ時報 No.238 p.14 黒沼 隆行 ほか
「省エネルギー」「環境配慮型」をキーワードに,今回,永久磁石型同期電動機及び樹脂製キャンを採用し,従来のキャンドモータにおけるモータ温度上昇の大きな要因の一つであったキャンの発熱を低減させ,小型(従来比1/2~1/3)・高効率化(従来比約25%省エネルギー)を図った2機種のPMキャンドモータポンプSSPC型,SSPD型を開発した。
エバラ時報 No.238 p.19 磯部 英次
本製品は,我が国の建築物における給水設備の更なる省エネルギーを目的に開発した製品である。最近の建物では,給水栓末端の圧力不足が問題となっており,設備全体の水圧を上げずに末端の圧力不足を解消する方法が求められている。その手段は,各水栓の末端近くに本製品を設けて,末端の要求圧力に応じて必要分を増圧する方法をとる。更に,各住宅で使われる水栓は,目的や用途によりそれぞれ必要圧力が異なっている。本製品は,DCブラシレスモータとインバータの組合せでポンプを可変速にし,効率良く目的の圧力まで加圧することができる。その結果,建物の給水によるエネルギーの無駄を排除し,設備全体の省エネルギー化を推進する。
エバラ時報 No.238 p.26