エバラ時報 No.249 p.1 北海道大学大学院 工学研究院 教授 松藤 敏彦
次世代型流動床高効率ごみ発電施設技術について ~平塚市「環境事業センター」の運転状況報告~
エバラ時報 No.249 p.3 岡本 有弘
平塚市環境事業センターは,DBO(Design:設計,Build:施工,Operate:運営)方式によって建設された施設である。施設運営の期間は20年間であるが,2013年9月に竣工・引渡後も順調な稼働を継続し,現在は約1.5箇年が経過したところである。本施設は,処理規模315 t/d(105 t/24 h×3炉)の流動床焼却炉を有している。流動床焼却炉の特長を生かし,安定したごみの処理を行いつつ送電量変動を小さく抑えた運用を実践し,グリーン電力発電所としての機能を最大限に発揮している。本報告では竣工後1.5年間の運転状況とともに,現在取り組んでいる発電量/送電量管理について報告する。
エバラ時報 No.249 p.8 古賀 大輔 ほか
我が国が全量を輸入に頼るリンは,肥料や工業利用に必須の貴重な資源である。一方,下水処理場では放流水のリン負荷低減や,リンによるスケール障害が課題となる場合がある。これらを解決すべく,消化汚泥中のリンをリン酸マグネシウムアンモニウム(以下MAPと略記)として回収できる機械攪拌式MAP法を開発した。国土交通省下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)を水ing・神戸市・三菱商事アグリサービス共同研究体で受託し,実規模実証プラントでの実証を行った。その結果,安定して良好な性能を示し,MAP回収量は従来法に比べ約1.8倍増加する試算となった。回収MAPは肥料登録を完了し,神戸市と共同で地域活用について研究している。
北海道岩見沢市向けストーカ式焼却施設「いわみざわ環境クリーンプラザ」の建設・納入
エバラ時報 No.249 p.14 秋葉 直人 ほか
2015年3月末にストーカ式ごみ焼却施設「いわみざわ環境クリーンプラザ」を北海道岩見沢市に納入した。本施設は岩見沢市,美唄市,月形町の3市町のごみを処理する施設であり,ストーカ式焼却施設とリサイクル施設で構成される中間処理施設である。本施設は,最新式ストーカ技術を組み込んだ環境負荷の低い最新鋭の施設である。また,排ガスを高度処理するだけでなく,ごみ焼却廃熱から得る蒸気を発電に利用し,エネルギーの有効利用を図るとともに自然環境や社会環境との調和,経済性に十分配慮した施設である。契約から竣工まで非常に短納期であったため,ストーカブロック化等の様々な工夫を行い建設に当たった。また,性能試験では設計どおりの性能が発揮されていることが確認できた。
よみがえれ越後平野 新川河口排水機場ポンプ設備更新工事-第2報)
エバラ時報 No.249 p.21 工藤 善夫 ほか
新潟市西蒲原地区に建設された国内最大級排水機場の一つである新川河口排水機場ポンプ設備更新工事が完了した。工事は既設の土木躯体を継続使用して,コンクリートケーシング構造の口径4200mm横軸軸流チューブラポンプを撤去・更新するものであり,機場の排水機能を維持しながら非出水期に毎年1台ずつ計6台を更新する難度の高い工事であった。工事中に発生した様々な課題にも,荏原で実施してきた更新工事のノウハウを生かすことで,更新工事を着実に実施,完了することができた。第1報では本排水機場の特徴と更新工事の設計的な要点を報告したので,本報では現地更新工事の着眼点と工夫について報告する。
エバラ時報 No.249 p.28 檜垣 展宏
当社の主力製品である給水装置(給水ユニット)の技術紹介シリーズとして,第1回・第2回講座では給水方式の種類と用途,選定方法などについて,第3回講座では,給水方式の中で最も基本的な圧力の制御方式であるON/OFF制御方式について,第4回講座では,ON/OFF制御方式に比べて水圧変動を抑えるとともに,省エネルギー効果の高い運転をする速度制御方式について説明を行った。第5回となる本稿では,水道本管から分岐した配水管に給水装置を直接接続し,配水管の圧力を利用し不足分だけを増圧する増圧給水方式と,それを用いた給水装置について,その制御方式の内容,実機の構造と主要構成部品,様々な特殊仕様,安全に運転するための保護機能等を紹介する。
エバラ時報 No.248 p.1 大阪大学大学院工学研究科 教授 工学博士 梶島 岳夫
エバラ時報 No.248 p.3 葛 甬生 ほか
従来法より省エネ,低コスト化となるアンモニア脱窒法を用いた窒素除去プロセスの検討を行った。合成廃水を用いた部分亜硝酸化プロセス及びアンモニア脱窒プロセスの基礎的検討結果に基づき,実廃水を用いた実証試験を行った。実証試験では,有機物濃度が低く,窒素濃度の高い下水消化汚泥分離液に続き,SS,有機物とも低く,塩類濃度の高い浸出水を対象としていずれも約6箇月以上行った。その結果,担体添加した部分亜硝酸化プロセス及びアンモニア脱窒プロセスのいずれも,担体による菌の付着保持が可能であり,安定した処理性能が得られることを確認できた。部分亜硝酸化プロセスとアンモニア脱窒プロセスを組み合わせた本流動担体処理方式を用いた実証試験では,T-N負荷は消化汚泥分離液で最大2.4kg/(m3・d),浸出水で最大2.7kg/(m3・d)であったが,いずれの場合もT-N除去率は平均80%以上と良好な脱窒性能が得られた。
エバラ時報 No.248 p.15 鈴木 浩之 ほか
荏原環境プラント㈱は,このほど,㈱クリーンパワー山形向け産業廃棄物焼却設備建設工事を完工し,流動床式産業廃棄物焼却設備を納入した。本設備は,流動床焼却システム(TIF:Twin Interchanging Fluidized-bed)の導入によって,流動砂による撹拌・破砕効果を生かし,汚泥,廃油,廃液,破砕ごみ(廃プラスチック等)など,多種多様な産業廃棄物を混焼一括処理し,環境負荷排出規制をクリアするとともに,産業廃棄物の焼却過程で発生する廃熱を利用した発電を行っている。
エバラ時報 No.248 p.19 塚本 輝彰
ごみ焼却処理施設の役割は,エネルギーの有効利用や地域社会への貢献などの付加価値に加え,施設の強靱化や防災拠点としての役割が更に求められてきた。武蔵野クリーンセンターは,市役所に隣接した都市型施設として注目され,20年間の運営を含めたDBO事業として2013年に総合評価方式による入札を行った。荏原環境プラント㈱は,最新の技術と29年間の運転実績を最大限に活用し,市の求めるコンセプトに更なるアイデアを加えて提案を行った。本稿では,東日本大震災の経験を踏まえた施設の耐震性の向上,周辺施設を含む災害時の熱電供給システムの構築,一時避難者へのサポート,早期の自立再稼動が可能な設計と安心安全な施設づくりについて紹介する。
エバラ時報 No.248 p.24 能見 基彦
ポンプにキャビテーションが発生する際の問題点として壊食に関し解説する。周囲の圧力が高い領域に流入した低圧の単一球形気泡は,急激に収縮し,最終的に気泡が崩壊する際に高圧の圧力波が発生し,周囲の固体に伝播する。壁面に近く,気泡が非球形に変形する場合は,壁面方向に向かうマイクロジェットが発生し,壁面に衝突する。さらに多数個の気泡の崩壊が繰り返される状況では,物体表面には多数回の荷重印加が生じ壊食が生じる。材料特性として耐壊食性を評価するため,材料のキャビテーション壊食試験法に関しては,ASTMG32,及びASTMG134という二つの規格が制定されている。耐壊食性にすぐれた材料や部分的な肉盛り溶接等を使うことによって,ポンプの壊食を低減することができる。今後,数値解析による壊食予測の進展が期待される。
エバラ時報 No.248 p.30 金田 一宏
当社の主力製品である給水装置(給水ユニット)の技術紹介シリーズとして,第1回・第2回講座では給水方式の種類と用途,選定方法などについて説明を行った。第3回講座では,給水方式の中で最も基本的な圧力の制御方式であるON/OFF制御方式について説明を行った。第4回となる本稿では,ON/OFF制御方式に比べて水圧変動を抑えるとともに,省エネルギー効果の高い運転をする速度制御方式と,それを用いた給水装置について,その制御方式の内容,実機の構造と主要構成部品,様々な特殊仕様,安全に運転するための保護機能等を紹介する。
エバラ時報 No.247 p.1 東北大学 流体科学研究所 教授 圓山 重直
エバラ時報 No.247 p.3 出水 丈志 ほか
原子力発電プラントの使用済み燃料プールでは,水質を高純度に維持するためにイオン交換樹脂によって浄化を行っている。プール水中には水の放射線分解によって発生した過酸化水素が存在しており,これがイオン交換樹脂の酸化分解を促進し,樹脂寿命を短くする原因となっている。そこで筆者らは,過酸化水素を分解する技術としてPd(パラジウム)担持樹脂の適用を検討した。イオン交換樹脂にPd担持樹脂をオーバーレイし,プール水中に含まれる過酸化水素を分解することで,イオン交換樹脂の酸化劣化を抑止することが可能であることをコールド試験で確認した。この成果に基づき,2014年1月から3月まで,日本原子力発電㈱敦賀第二発電所の使用済み燃料プール水を用いたホット試験を実施した。これらの試験結果について報告する。
ピン拘束型火格子を用いたストーカ式焼却炉の長期連続運転向上の事例紹介
エバラ時報 No.247 p.10 塚本 輝彰
都市ごみ焼却施設の役割は,本来の衛生処理に加え,発電などのエネルギー有効利用もその重要性を増してきた。また昨今では,災害時の防災拠点としての役割も期待され始めている。そのような背景の中,安定した長期連続運転が更に求められるようになってきた。荏原環境プラント㈱では,従来型の火格子やストーカ構造を改良し,より機械的安定性及びメンテンナンス性の高いピン拘束型火格子を開発した。また,その技術を都市ごみ焼却施設に導入し,長期安定運転試験を行いその効果を確認した。これによって,様々なごみ質に適応した新型ストーカ炉の開発に成功した。
エバラ時報 No.247 p.14 大神田 和巳 ほか
家庭用給水ポンプとして2004年から販売しているHPF型(可変速型),2007年から販売しているHPA型(固定速型)を統合し,2014年11月から可変速型の新型ポンプとしてHPE型の出荷を開始した。本製品は,高効率ポンプ,IE4相当の永久磁石形同期電動機,効率的運転を行うコントローラとインバータを組み合わせ,近年の市場要求である,省エネルギー志向と住宅地での低騒音化に対応した製品である。250W機種では従来製品(HPA型)と比較し,約48%の省エネルギー化,約12dB(A)の低騒音化を実現している。
エバラ時報 No.247 p.19 大竹 良治 ほか
北海道電力㈱朱鞠内発電所向けに口径800×700mmのポンプ逆転水車と補機を納入し,現地工事及び試運転を行った。ポンプ逆転水車はポンプ水車に比べ低コストで,揚水運転と水車運転でほとんど効率が変わらない。ポンプ逆転水車の採用に当たっては事前に模型ポンプでモデル試験を行い運転特性を把握した。また,過渡現象解析の結果から機器仕様及び制御方法を決定した。なお,本設備では現地の条件変化に対応した運転を行うためインバータ,コンバータを用いた回転速度制御を採用している。この発電所の完成によって今まで未利用のかんがい放流水を電気エネルギーとして回収することが可能となった。
給水装置製品技術紹介 -第3回 ON/OFF制御方式について-
エバラ時報 No.247 p.25 奥田 和孝
当社の主力製品である給水装置の技術紹介シリーズとして,第1回・第2回講座では給水方式の種類と用途,選定方法について解説を行った。第3回となる本稿では,給水方式の中で最も基本的な圧力の制御方式であるON/OFF制御方式と,それを用いた給水装置について,その制御方式の内容,実機の構造と主要構成部品,様々な特殊仕様,安全に運転するための保護機能等を紹介する。
エバラ時報 No.246 p.1 東京工業大学大学院理工学研究科 工学系長・工学部長 工学博士 岸本 喜久雄
エバラ時報 No.246 p.3 早房 敬祐 ほか
回転軸は想定荷重から計算された応力と材料強度を比較して設計されるが,実働荷重下の軸については想定外の外力が作用することが多く,実験による応力測定が併せて行われることが多い。サーモグラフィによる方法は電気的なノイズの影響がない上に非接触的な測定が可能であるから,回転軸に適用すれば実機稼働下の曲げ応力や引張・圧縮応力を測定できる可能性がある。本研究では,サーモグラフィを使った熱弾性応力測定によって実機稼働中の回転軸に対する応力分布の測定法を提案し,シミュレーション及び実験データに基づいて曲げ応力の測定を行い,提案した手法が妥当であることを確認した。
エバラ時報 No.246 p.11 古谷 光輝 ほか
再生可能エネルギーの一つである地中熱を利用したヒートポンプシステムを普及拡大していくためには,そのシステム特性を把握し,条件に応じて適切に運転する制御手法を確立することが不可欠である。東日本旅客鉄道㈱と荏原冷熱システム㈱は,地中熱を最大限有効利用するための制御手法を確立することを目的に,実証試験を行った。埼玉県さいたま市にある東日本旅客鉄道㈱の敷地内に,地中熱ヒートポンプシステムの試験設備を設置し,2013年7月から2014年2月までの8箇月間の試験運転を行い,ボアホール方式における地中熱ヒートポンプの運転特性を把握した。また,実測データを基に最適運転制御手法を考案した。
エバラ時報 No.246 p.18 能見 基彦
ポンプにキャビテーションが発生する際の問題点の一つである振動,騒音現象に関し解説する。キャビテーション気泡の圧縮性によって流体中にバネ要素が発生する。単一気泡に関しては挙動を示すRayleigh Plesset方程式がある。ポンプ全体では,連続の式とキャビテーションコンプライアンスとマスフローゲインファクター,管路系の集中定数モデルの組合せで挙動が解析されている。キャビテーション気泡が多様な周波数で振動することによって広帯域なキャビテーション騒音が発生する。ポンプの中のキャビテーション気泡全体が低周波数で振動する現象がキャビテーションサージと呼ばれる一次元的な不安定現象である。三次元的な不安定現象として旋回キャビテーション,交互翼キャビテーション等が発生する。インデューサに発生するキャビテーション不安定に関し,多くの研究がなされている。
給水装置製品技術紹介 -第2回 給水装置の選定,設置,配管,配線方法-
エバラ時報 No.246 p.22 浜田 博和
集合住宅やオフィスビル等の給水設備として使用される給水装置は,いくつかの給水方式に対応するシリーズがあり,各シリーズにポンプ口径,モータ出力の異なる機種をラインナップしている。連載の第2回は,これら多くの給水装置から,設備に合った機種を選定する上で,給水装置の性能に関する給水量と給水圧の求め方,また給水装置の設置,周囲の配管,配線について紹介する。
エバラ時報 No.246 p.29