前田 東一
取締役 代表執行役社長
この度,エバラ時報が1952年の創刊から第250号の発刊を迎えるにあたり,発刊を支えてきた歴代の編集・発行を担われた方々,荏原グループにおける研究開発・製品開発を担い成果を上げてこられた歴代の研究者・技術者の方々の研鑚と努力に対しお祝いを申し上げます。
エバラ時報は,創業以来技術を経営の中心においてきた荏原グループが行っている研究・開発活動,その結果を反映した技術と製品の優位性,また事業における技術的成果等を論文形式の文章で記録保管するとともに,技術に関係するステークホルダーへの情報発信媒体として発刊されてきました。創刊以来のエバラ時報の変遷については,創業100周年記念号で当時の矢後社長が書かれた巻頭言に詳しく紹介されていますが,その時々の荏原の経営方針と注力する事業の方向性に沿って行われた研究・開発活動と,その成果に基づく技術と製品に関する論文や記事が掲載されており,まさに荏原グループの経営の中心である技術のレベルとクオリティーの高さを内外に示す存在であったし,今後もそうあり続ける存在であると考えています。
現在,エバラ時報の他に荏原グループの企業活動を社内外に発信する情報媒体としては,年度毎の事業活動の内容と業績,すなわち財務情報を中心に発信するアニュアルレポートと,事業と並行して荏原グループの全てのステークホルダーに対して行っている企業活動を発信するCSRレポートがあります。
一方で,企業は従業員,顧客,取引先,仕入先,消費者,株主,地域社会,自治体や行政など多様なステークホルダーとの関わりの中で,事業活動をしていきますので,多様なステークホルダーと積極的に対話し,良好な関係を保ちながら経営を行う企業のCSR活動が注目されており,そのような非財務的な企業活動を財務情報と統合する「統合報告書」としての情報発信が求められています。
そこで,この度当社も財務情報以外の当社の企業価値を創造する多様な情報,すなわち従来からの財務情報に加えて,技術力,コーポレートガバナンス,人材,環境,社会等のテーマに対し,社会に認知される企業価値を創造し企業として成長していくために,どのような企業活動を実施していくかについての非財務情報と,年度毎の事業活動の内容と業績である財務情報を合わせた統合報告書を作成することにしました。
さて,このような当社の企業価値を継続的に向上させる情報発信としての位置づけを考えますと,この度第250号の発刊を迎えるエバラ時報は技術力に関する重要な情報媒体であると理解しますが,そのスタイルは長年学術論文の体裁から変わっておらず,技術の研究・開発とその応用に基づく製品開発について,企業価値を継続的に創造する視点から関係するステークホルダーに的確で判りやすい情報発信になっているかについては,一考の余地があるかと感じています。
荏原グループの研究開発体制は2009年に総合研究所体制から,基礎研究や製品開発のテーマごとに広く世界の大学・研究機関と連携する研究開発体制(EOI※1,EOL※2)に移行し,現在まで多くの成果が生まれ製品競争力の強化を支えてきました。そして今期より将来の事業の種を生み出すべく新たな研究開発体制をスタートさせようとしています。このような節目の年に,「エバラ時報」を従来と変わらぬ研究開発と製品開発のレベルの高い成果を発信する情報媒体としてのみならず,企業価値を継続的に創造する視点から関係するステークホルダーに的確で判りやすい情報発信の媒体となるように,関係各位の今後の検討をお願いする次第です。
※1 EOI :Ebara Open Innovation
※2 EOL :Ebara Open Laboratory
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