嶋 昇平* Shohei SHIMA
濵田 聡美** Satomi HAMADA
高東 智佳子* Chikako TAKATOH
和田 雄高** Yutaka WADA
福永 明*** Akira FUKUNAGA
*
技術・研究開発統括部 解析・分析技術室
**
精密・電子事業カンパニー 技術統括部 技術企画室
***
同 同
化学機械研磨現象の基礎的な理解のためには,液中での「その場(In-situ)」観察,評価手段が有用である。大気中と比較して,液中での測定はより難しくなる場合が多い。化学機械研磨はウェットプロセスであり,液中での評価が必須である。本稿では,光とプローブを用いた異なる三種の液中評価手法を試み,研磨プロセス中の表面反応,研磨粒子の挙動などを解析した。その結果,有用な評価手法として用いることができることが確認できたので,得られた結果を紹介し,これら液中in-situ評価手法を広めていきたいと考える。
In developing a basic understanding of what is happening during the chemical mechanical polishing process, evaluation techniques based on in-situ (in-liquid) observation are useful. Compared with in-air measurement, in-liquid measurement is often very difficult. Chemical mechanical polishing is a wet process, which absolutely requires evaluation based on in-liquid measurement. In this study, we tried three different evaluation techniques based on in-liquid measurement that uses light and a probe in order to analyze the surface reactions and behavior of abrasive particles during the polishing process. As a result, we determined that these techniques can be used as useful evaluation methods. In this paper, we describe the observation results with the hope that we can popularize these in-situ (in-liquid) evaluation techniques.
Keywords: Chemical mechanical polishing, In-situ, Ellipsometry, Fluorescent microscopy, Kelvin probe, Surface reaction, Abrasive particle, Fluorescent particle, Benzotriazole, Wet process
化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)技術はその名のとおり,化学反応と機械的研磨とを組み合わせた研磨技術であり,実際の研磨現象は多くの要因が複雑に絡み合って成り立っている。現在,LSI(大規模集積回路)製造のCMP技術に対しては,サブnmレベルの平坦化,研磨の選択性向上,欠陥低減など厳しい要求が課されている。
これらの要求を満たすためには,研磨,洗浄現象の詳細な解析と理解が必要であり,そのためには現象を正確に観察,評価できる技術が必須である。
ある現象を正確に把握するには,その現象が起きている「その場(In-situ)」で観察,評価することが最も良く,既に多くの「その場(In-situ)」観察及び評価技術が開発されている。
CMP機構の基礎的な評価のための研究開発においても,多くのin-situ観察技術を用いての検討が進んでいるが,なかなかその本質に迫れないのが現状である。その理由として研磨は,表面形状が複雑なパッドと,数十から数百nm径の微小研磨粒子と,界面活性剤,酸化剤,キレート剤など多くの化学物質を含むスラリーなどが関与したプロセスであり,研磨対象の物質表面で起きている現象を正確に把握するのが困難なためである。
CMPプロセスを観察及び評価するための測定条件として必須なのは,第一に液中で評価できること,第二にnmレベルの分解能があること,第三に短時間で測定できることなどである。しかしながら,全ての条件を同時に満たす観察評価手法は現実にはない。本稿では,“液中観察”ということに主眼をおいた各種in-situ評価技術を,CMPプロセス評価へ応用した例を紹介する。
液中in-situ評価技術として,三種類の手法をCMPプロセスの評価に応用してみた。そのうち,二種類は光を応用したものであり,他の一種類はプローブを利用したものである。いずれも,空気中での測定については,特に問題なく容易に実行できるが,液中での評価になると,途端に困難さが増す。本稿では,評価結果だけでなく,これらの技術的な問題点にも言及し,今後の評価技術の進展に寄与できればと考える。
エリプソメトリー1),2)は,LSI製造ではSi基板上に成長した熱酸化膜の厚さを評価するのに古くから用いられてきた手法である。その原理は,基板上で反射した光の偏光状態の変化(楕円偏光のpとs偏光の位相差Δと振幅反射率比tanΨを測定)が基板の光学的特性に依存することを利用するもので,非破壊でオングストロームレベルの膜厚測定や,屈折率などの膜特性の評価に用いられている。
本実験では,分光エリプソメーターUVISEL装置(㈱堀場製作所製)を用いてCu膜上に成長させたBTA(ベンゾトリアゾール)インヒビター膜のパッシベーション特性を評価した。インヒビターは,Cuスラリー中に添加され,CMP中のCu表面に錯体保護膜を形成してCu配線の腐食を抑制する目的で使用されている。
実験装置の試料測定部が図1(a)に示されており,中央部に液中に浸漬したCu基板を中に収めた液中セルを設け,右から入射光を放射し,Cu表面から反射してきた光の特性を解析する。図1(b)は,液中セル部を拡大した像であり,中央部にCu膜を形成したSi基板が見える。液中セルはPEEK(Poly Ether Ether Ketone)樹脂材料で製作されており,左右には石英ガラス窓があり,入射光及び反射光が透過できるようになっている。なお,基板に対する入射光,反射光の傾きは70°で実施され,石英窓も70°傾いており,光は垂直に石英窓に入射,反射して,石英窓と液体との界面で屈折が生じないようにしてある。
図1 エリプソメトリー装置図 (a)測定部,(b)液中セルとその中のCu試料
二種類のインヒビター,BTAとm-BTA(メチルBTA)の純水溶液(濃度10 mmol/L)にCu試料を3分浸漬してCu表面に保護膜を形成した。これらの試料を液中セルの純水中に長時間浸漬して,Cu表面層の変化,すなわち保護膜の耐久性を試験した。図2はこの耐久性試験の結果であり,Cu表面に形成された各インヒビターの保護膜厚の時間変化を示す結果である。
図2 二種類のインヒビター,BTA(ベンゾトリアゾール)と メチルBTAを用いて形成した Cu表面保護膜の純水中浸漬 状態での膜厚の時間変化
この結果から,インヒビターBTAによるCu表面の保護膜は300分を越えたあたりから徐々に膜厚が増加する変化を示しているが,m-BTAインヒビターで形成したCu表面保護膜厚はほとんど変化がない。Cu-BTAの場合,何か変化がありそうであるが,保護膜の耐久性自体はこの結果だけでは判断できない。
エリプソメトリーでは,Cu表面の光学的構造モデルを仮定し,その光学的構造モデルから推定される分光特性と測定データとを組み合わせて実際の表面構造を推定する。Cu表面に成長するBTA保護膜は,Cu基板との間にCu酸化膜が成長し,その上にCu-BTA錯体層が成長して保護膜となっているとされている。図2に示した保護層の厚さもこの光学的構造モデルから導かれている。次に,CuとBTA,及びm-BTAとの界面にあるCu酸化膜の膜厚変化に注目してみた。
図3はその変化をBTAとm-BTAとで比較した結果であり,保護膜の膜厚変化があったBTAの場合は,界面のCu酸化膜厚も増加する傾向を示している。一方,m-BTAの場合は,m-BTA保護層と同様に界面のCu酸化層の膜厚も変化がない。BTAの場合の界面のCu酸化層の膜厚増加は,表面の保護層を水分が透過し,Cu表面に拡散,到達してCu表面が酸化され,その結果Cu酸化層の膜厚が増加したと推定される。すなわち,Cu-BTA保護層の完全性が疑われる。
エリプソメトリーでは,薄膜の膜厚だけでなく屈折率などの光学的特性も測定できることを前述した。そこで,測定結果からCu-BTA及びCu-mBTA保護膜の屈折率を前記光学的構造モデルから求めてみた。その結果は図4に示すようになり,Cu-mBTAの場合は,保護層の屈折率は600分の純水中浸漬試験後でも大きな変化がなかったが,Cu-BTAの場合は浸漬初期から徐々に低下し始め,400分手前で急激に屈折率が低下し,1.0に近づいた。この屈折率の低下は,物性的にはCu-BTA膜の密度低下を示す。すなわち,保護膜の特性が低密度になるということは,膜中に欠陥が生成し,純水が保護膜中を透過しやすくなることを意味して,保護特性が低下することを示している。400分手前までの屈折率の低下はCu-BTA層に水分が侵入し,最後は水の屈折率1.3近くまでなり,最後の1.0近くまでの屈折率低下はCu-BTA層の崩壊を示していると考えられる。Cu-BTA層の屈折率の時間変化は,界面のCu酸化膜の成長(図3)とCu-BTA層の膜厚増加(図2)の時間変化と一致している。
図3 CuとBTA,m-BTA保護層との界面にあるCu酸化膜厚の時間変化
図4 Cu-BTA,Cu-mBTA錯体保護層の屈折率の時間変化
以上のin-situ液中エリプソメトリー測定結果から,インヒビターとしての特性は,BTAよりm-BTAの方が優れていることが明らかになった。
図2から図4までの液中エリプソメトリー測定は,波長を変えながら測定するため一回の測定に数分の測定時間を要する。では,短時間の変化を評価する手法がないのかというと,波長を変えないで一定にして光学特性を評価する手法がある。波長を変えないで測定することから,評価時間は1秒以下となり短時間の表面反応を評価できることになる。
具体的には,一定波長の入射光を試料に照射し,反射光の位相差を検出することで表面層の変化を推定する。膜厚変化が100 nm程度までは,位相差Δと膜厚変化とは線形の関係となっている。図5は,このような評価手法を用いてCu膜を純水中に浸漬した直後のCu酸化膜の成長と,BTA溶液を滴下した時のCu-BTA保護層の成長を測定した結果である。
Cu膜を純水中に浸漬して測定を始めてすぐにΔ値が低下し始める。Δ値の低下は,Cu膜表面に酸化膜が成長していることを示しており,純水中の溶存酸素の影響でCu表面がすぐに酸化し始める様子が明確に観察できている。ある時点で0.1 mol/Lの高濃度BTA溶液を滴下した。この条件は,液中セル中にある純水と完全に混ざると今までの評価に用いた10 mmol/L濃度のBTA溶液と同じ濃度となる条件である。BTA溶液滴下後は,急激なΔ値の低下と,その後の徐々にΔ値が低下する領域が続いている。このときのCu表面のBTA層の成長に関しては,EOI(エバラ・オープン・イノベーション)による山梨大学との共同研究3)で,まずBTA分子層の吸着が生じ,その後にCu/BTA界面でのCu酸化膜成長があるとの詳細な解析が報告されている。図5の結果は,急激なΔ減少がBTAの吸着,その後の緩やかなΔ減少が界面Cu酸化膜の成長を反映していると考えられる。
さらに,このBTA錯体層のエッチング挙動を同様な手法を用いて評価した結果を図6に示す。Cu-BTA層を成長させたCu膜を純水中に浸漬した後に,TMAH(Tetramethylammonium hydroxide)溶液を滴下して,Cu-BTA層のエッチング挙動を評価した例である。最初は純水中に浸漬されているため,Δが一定であり,そこに5%の高濃度TMAH水溶液を滴下してΔ変化を評価した。TMAH滴下後にすぐにΔ値が増加し始め,表面のBTA錯体層がエッチングされたことを示している。Δ値の変化は極大値を示した後に,今度は徐々に減少し始めた。この変化は,TMAH濃度は希釈されて0.5%となるがまだ強アルカリ性となっており,一旦清浄化されたCu表面に,Cu(OH)xなどの保護膜が成長したためと考えられる。
図5 波長一定(633 nm)でΔ(位相差)変化を測定する手法による 純水中でのCu表面酸化とBTA溶液滴下によるCu-BTA層 成長の測定例
図6 波長一定(633 nm)でΔ(位相差)を測定する手法による TMAH溶液によるCu-BTA層のエッチング挙動
以上,異なるエリプソメトリー手法を用いることで,液中での長時間にわたるゆっくりとしたオングストロームレベルの表面反応だけでなく,短時間の表面反応も評価できることが分かる。
CMPプロセスにおいて,特に研磨プロセスではスラリー中の研磨粒子は重要な役割をしている。この研磨粒子は,研磨パッドと研磨対象の基板との間に存在して,スラリー中の薬剤と研磨基板との化学反応で形成された反応層を研磨粒子が機械的に接触して,削り取ると考えられている。したがって,研磨中の研磨粒子の挙動をきちんと把握することが,研磨速度の向上,平坦性の向上,研磨後の洗浄性の向上などのプロセス開発には必須となる。しかしながら,研磨粒子の大きさは100 nm以下と小さくなっており,このような微小な粒子の挙動を観察することが困難となっている。
研磨中の砥粒の挙動を観察する手法として,エバネッセント光を利用した全反射顕微鏡法による測定の試みが既に報告されている4)。
しかしながら,エバネッセント光を用いた観察は,100 nm程度の極表面だけに限られてしまう。現実には,研磨粒子は極表面だけに限らず,多孔質のパッドの奥深くまで動き回っている。このような深い領域での研磨粒子の挙動も把握しておく必要がある。特に,研磨粒子の残り,洗浄,パッドコンディショニングなどを評価する上で必要となる。
この研磨粒子の挙動観察の他の手法として,蛍光シリカ粒子と蛍光顕微鏡を用いた粒子観察を試みた結果を以下に報告する。
蛍光シリカ粒子は,赤色蛍光粒子及び緑色蛍光粒子で,粒子径は1.0μm径の大きいものと研磨粒子に近い50 nm径のものを用いた。予備実験で,緑色蛍光粒子を用いた場合,IC-1000パッドと洗浄用PVAロールブラシ共に同じ緑色に発光してしまい,研磨粒子を区別して検出できないことが判明した。一方,赤色の蛍光シリカの場合は,IC-1000パッドとPVAロールブラシ共に発光が弱く,赤色蛍光シリカ粒子だけが選択的に発光して研磨粒子の挙動を観察できることが判明した。
実際の評価実験は,図7に示す方法を用いた。倒立型レーザー共焦点顕微鏡を用い,カバーガラス上に蛍光シリカ粒子を混ぜた純水溶液を載せ,その上にPVA(Polyvinyl Alcohol)ロールブラシ,IC-1000パッドを浸漬して,研磨粒子に模した蛍光シリカ粒子を観察した。
この観察手法の特徴は,観察位置の焦点をずらすことでカバーガラスとブラシ,パッドとの界面だけでなく,ロールブラシやパッドの内部まで入り込んだシリカ粒子を観察できることである。図8はその結果であり,PVAロールブラシとカバーガラスとの界面からロールブラシ内部側(表面0μmから20μmと40μmの深さ)での赤色蛍光シリカ粒子1.0μm径の発光を観察した結果である。PVAロールブラシは,多孔質構造でありしかも孔同士がつながっている。表面においては蛍光シリカ粒子が不均一に分散し,ロールブラシ表面には付着せずブラウン運動をしていることが確認できた。このためPVA表面平坦部から押し出されたシリカ粒子は,ロール内部にまで入り込み,40μmの深さまでもシリカ粒子が入り込んでいることが明確に分かる。
図9は,図8に示したように異なる深さでのシリカ粒子の二次元分布データを多数取得しておき,これらのデータを基に縦方向の断面のシリカ粒子深さ方向分布像である。このようにPVAロールブラシ内部での深さ方向の分布状況も確認することができる。図9は,1.0μm径のシリカ粒子であったが,研磨粒子と同程度の50 nm径の蛍光シリカ粒子の分布状況も同様な実験で確認できており,この手法を使うことで実際の研磨粒子に近い挙動を確認することができる。なお,蛍光シリカ粒子と研磨シリカ粒子の物性が異なるのでないかとの懸念があるが,付着性については,通常のシリカ粒子と同等であり,蛍光シリカ粒子を用いても研磨粒子と同等と考えている。
図7 レーザー共焦点蛍光顕微鏡を用いた研磨粒子に模した 蛍光シリカ粒子の挙動観察方法
図8 PVAロール表面及び内部にある蛍光シリカ粒子からの発光像
図9 PVAロールブラシの任意断面での蛍光シリカ粒子の深さ方向分布状況を示す発光像
ケルビンプローブ評価は,Princeton Applied Research社製の走査型電気化学顕微鏡システムを用い,直径が20μmのWプローブを用いて実験を実施した。
詳細は,ICPT2014 5)で報告した液滴部をケルビンプローブで走査する手法を用いたウォータマークの評価結果を参照されたい。ケルビンプローブは,電気化学腐食の研究に使用されることがあり6),ウェット雰囲気での評価も実施されることがある。CMPプロセスもウェットプロセスであり,スラリーによる腐食欠陥発生などについての評価に使えないかと考え,図10に示す試料台を作成し,ウェット雰囲気でのボルタ電位変化の評価を試みた。評価する試料上に薄い溶液の層を設け,プローブは直接には溶液に浸漬しないで,表面を走査させて表面電位の変化を測定してみた。
まずCu表面酸化膜のエッチング時の電位変化を測定した。図11は,Cu自然酸化膜が成長しているCu膜を純水に浸漬後,クエン酸を滴下したときのCu表面の電位変化を示した結果である。クエン酸はCu酸化膜の選択的なエッチング溶液である。クエン酸の滴下によって表面のCu酸化膜がエッチングされ,それに対応して電位の急速な低下が示されている。その後,電位の低下がゆっくりとなり,極小値を示した後に徐々に電位が増加する変化を示した。電位が低いのは,電気化学的に活性な状態を示すことを前報の実験5)で示した。Cu自然酸化膜のエッチングによって清浄なCu表面が露出し,電位が低下したと考えられる。その後の徐々に低下する現象は,クエン酸がCu錯体を形成する有機酸であることから,Cu-クエン酸錯体形成反応と考えられる。その後の電位上昇は,再酸化現象と考えられるが,エリプソメトリーなど他の評価手法の結果と合わせて詳細に検討する必要がある。
図10 ウェット雰囲気の試料上の表面電位測定用 ケルビンプローブ試料台
図11 Cu自然酸化膜があるCu膜のクエン酸による エッチング反応時の仕事関数変化
次にBTA保護膜の形成反応についても同様な測定を試みた。図12は,Cuを浸漬した純水溶液中にBTA溶液を滴下してCu-BTA錯体層形成反応時のボルタ電位を評価した結果である。最初のBTA溶液滴下によって急激に電位が低下し,すぐに上昇し始めるが電位は元に戻らず,低い電位を示した。その後,再びBTA溶液を滴下してみた,このときも電位の低下が見られたが,一回目ほどの電位の回復は見られなかった。この現象はエリプソメトリー評価結果(図5)の急激な膜厚増加とその後の緩やかな成長に対応していると考えられる。最初の急激な電位低下はBTAの吸着反応を示し,それに続く上昇はCuとBTA界面の酸化膜成長によるCu-BTA錯体保護層の形成を示している。二回目のBTA滴下でも電位の低下が生じており,これはBTAの吸着反応は生じるが,既に錯体層があるためにCu酸化膜成長が小さいと考えると納得がいく。BTA保護層は障壁層として働き,Cuの電位はBTA層がない状態の最初のCu膜の電位から上昇すると考えていたが,実験結果は反対に低下した。BTA層を形成した領域とCu膜だけの領域との電位を空気中で比較測定したところ,BTA形成領域が周囲のCu領域よりも高い電位を示し,障壁層を形成していることが示された。しかし,液中ではBTA層が完全な障壁層を形成しないため(図4に示すエリプソメトリー実験),Cu表面での反応が進行し続け,表面電位が低くなっていると考えられる。
図12 純水中のCu膜へのBTA溶液の滴下によるCu表面電位変化
このようなケルビンプローブ法はプローブ径が数十μmと大きいために,LSIの配線部の評価には空間分解能が不十分である。同様な表面電位評価手法としてnmレベルの分解能がある原子間力顕微鏡(AFM)を用いたケルビンフォース顕微鏡法(KFM)があるが,液中評価には適用できない。液中での電位測定を可能としたOpen-loop electric potential microscopy(OL-EPM)7)が開発され,現在,EOIとして,液中電位評価をCMPプロセスに応用する試みを進めている。
以上,CMP研磨及び洗浄機構の理解を目的とした液中in-situ評価のいくつかの手法を用いた実験結果を紹介した。CMPプロセスの研究開発に液中での評価手法を適用する試みは必ずしも多くはない。その理由は,やはり液中測定には空気中,真空中などに比較して困難さが多いためと考えられる。ここで紹介した液中評価手法を更に発展させてCMPプロセスの高性能化を進めていきたい。
1) 藤原裕之;分光エリプソメトリー,丸善出版㈱,(2003).
2) H. G. Tompkins; A User’s Guide to Ellipsometry (DOVER PUBLICATIONS, 1993).
3) Eiichi Kondoh; ADMETA Plus 2015.
4) Keiichi Kimura, Keisuke Suzuki, Panart Khajornrungruang; Proceedings of International Conference on Planarization/CMP Technology (ICPT2012) p345.
5) Shohei Shima, Satomi Hamada, Yutaka Wada, and Akira Fukunaga; Proceedings of International conference on Planarization / CMP Technology (ICPT2014) p87.
6) M. Rohwerder, G. S. Frankel, M. Stratmann, and P. Leblanc; Analytical Methods In Corrosion Science and Engineering, Edited by Philippe Marcus and Florian Mansfeld CRC Press 2005,Chapter16:Application of Scanning Kelvin Probe in Corrosion Science.
7) N. Kobayashi, H. Asakawa and T. Fukuma; JAP, 110, 044315 (2011).
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