今泉 隆司* Takashi IMAIZUMI
山下 秀夫* Hideo YAMASHITA
野村 俊介* Shunsuke NOMURA
*
荏原環境プラント㈱
新潟市「亀田清掃センター」の基幹改良工事を行い,2016年3月に竣工した。通常のごみ処理業務の継続,1炉当たり4箇月の短工期という制約の中,安全な車両動線の確保,綿密な工事計画によって工事を完了させた。各炉の工事終了ごとに実施した性能試験では,全ての基準値を満足しつつ,空気比1.3の低空気比,低NOx,低COでの安定した運転を実現できることを確認した。また, 基幹改良工事前と比較し, 設備から排出されるCO2を46.3%削減した。
The improvement work of “Kameda Waste Management Center” in Niigata City was completed in March 2016. This work was successfully completed through the ensuring of safe vehicle traffic lines and a carefully elaborated work plan, despite the fact that it had to be carried out under the restrictions of continuation of regular waste disposal operations and a short work period of four months per incinerator. In the performance tests of each incinerator conducted at the end of the work, it was confirmed that the incinerator was able to realize stable operation with a low air ratio of 1.3 and reduced NOx and CO while meeting all reference values. In addition, the amount of CO2 emitted by the center was reduced by 46.3% compared to before the improvement work.
Keywords: Improvement work, Fluidized-bed, Waste incinerator, Low excess air ratio combustion, Combustion control, Slow combustion, Exhaust gas recirculation, Carbon monoxide, Nitrogen oxides
2012年7月から2016年3月までの期間で亀田清掃センター(図1)の基幹改良工事を行った。既存施設は1997年に㈱荏原製作所が建設した発電設備及び粗大ごみ処理設備を備えたごみ処理施設であり,竣工から15年間の運転に伴って老朽化した設備を改良及び延命化させることを目的として基幹改良工事を行った。本施設は処理能力390t/d(130t/d×3炉)の流動床式の焼却処理施設及び処理能力50t/dの不燃物処理施設で構成され,発電設備を備えている。
図1 亀田清掃センター
基幹改良工事は老朽化設備の更新と機能の改善を目的とする改良工事からなる。施設全体を図2に,基幹改良後の焼却処理施設のフローシートを図3に,主要設備の仕様と基幹改良工事における主な工事内容を表1に示す。
改良工事は,20%以上のCO2を削減するために,①蒸気タービンの抽気タービンへの変更及び②燃焼の安定化による空気比の削減によって発電量を増加させ,消費電力を削減するとともに,③燃焼の安定化によるCOピーク削減を目的として実施した。
なお,基幹改良工事による改良効果の詳細については本号掲載の「流動床焼却施設の性能とポテンシャル」で報告する。本稿では基幹改良工事の概要を説明する。
図2 施設全体図
図3 基幹改良後焼却処理施設フローシート
受入供給設備 | 仕様変更 | |
ごみ計量機 | 秤量30 t(IC カード方式)×4 基 | 計量機増設 |
ごみクレーン | 全自動フォーク式グラブバケット×2基 | 省エネバケット採用 |
燃焼設備 | ||
給じん装置 | 4 軸スクリューコンベヤ× 3 基 | かき取機増強 |
インバータ方式 | ||
焼却炉 | 全連続燃焼式流動床炉(TIF 炉) | 緩慢化燃焼,低空気比運転,排ガス再循 環実施に伴う改造 |
処理能力:390 t/d(130 t/d×3基) | ||
不燃物排出装置 | ジャケット付2 軸スクリューコンベヤ× 3 基 | 更新 |
砂分級装置 | 密閉型振動ふるい× 2 基 | 更新 |
砂循環装置 | バケットエレベータ× 3 基 | 部分更新 |
燃焼ガス冷却設備 | ||
ボイラ | 自然・強制循環併用式水管ボイラ | 水管更新 エコノマイザ更新 |
蒸気量:22 t/h× 3 缶 | ||
常用圧力:2.65 MPa× 290 ℃ | ||
減温塔 | 水噴射式 | 部分更新 |
余熱利用設備 | ||
蒸気タービン | 多段式抽気復水タービン | 抽気式タービンに変更 |
発電機 | 三相交流同期発電機:5 500 kW | 発電量を5 100kWから5 500kWに増量 |
排ガス処理設備 | ||
バグフィルタ | エアパルス逆洗式× 3 基ろ布種:PTFE | ろ布面積増量ろ布種変更 |
通風設備 | ||
押込送風機 | ターボブロワ× 3 基 | 高効率タイプに変更 |
二次押込送風機 | ターボファン× 3 基 | 高効率タイプに変更 |
排ガス再循環送風機 | ターボファン× 3 基 | 新規設置 |
誘引送風機 | ターボファン× 3 基 | 高効率タイプに変更 |
灰出し設備 | ||
混練成形機 | 薬剤混合押出成形式× 2 基 | 更新 |
飛灰コンベヤ | チェーンコンベヤ× 3 基 | 更新 |
固化灰バンカ | 容量:19 m3 ×4基 | 更新 |
蒸気タービンを抽気タービンに更新し,発電機の定格 出力を5100kWから5500kWに増加させた。これまで余熱利用設備用の低圧蒸気は, 高圧蒸気を減圧して使用していたが,タービン抽気蒸気に変更した。これによって,発電に寄与する蒸気量を増加させ,発電量を増加させた。タービン更新に当たっては,タービン室南側の壁を大きく開口し,蒸気タービン及び発電機を搬入した(図4,5)。また,既設タービンよりも大きくなり,重量増加に伴うタービン基礎の改造も行った。
図4 蒸気タービン搬入状況
図5 更新後蒸気タービン発電機
燃焼の安定化は,給じんの定量性向上及び炉床燃焼の緩慢化によって達成した。
給じんの定量性を向上させることで燃焼を安定化させることができる。本工事では給じん装置のかき取機のかき落し頻度及びかき落し能力を増加させることで給じん性能の定量性を従来よりも向上させた。
炉床燃焼の安定化のため,緩慢燃焼方式を採用した。炉床緩慢燃焼では流動空気量を減らし,砂中空気比を下げることで,炉床温度を低下させ,流動層内の燃焼を緩やかにする。これによって,基幹改良工事前よりも低い空気比でも安定した運転を可能とするとともに押込送風機の負荷低減によって,消費電力を直接的に削減することができた。
二次燃焼空気量を減らし,ボイラ出口空気比を1.8から1.3まで低減させた。二次燃焼空気の削減によって,サーマルNOxの発生を抑制するとともに二次送風機及び誘引送風機の負荷低減によって消費電力も削減できた。
基幹改良による新規プロセスとして排ガス再循環を導入した。
排ガス量を削減することで排ガスの持ち出し顕熱が低減する。これによって,ボイラでの回収熱量が増加し,発電量を増加させることができた。
排ガス処理設備で処理した排ガスを炉内に吹き戻すことで炉頂注水をすることなく炉頂温度を低下させることが可能となり,注水による熱損失が低減できた。また, 希釈かくはん効果によってCOの発生を抑制できた。
消費電力量削減を目的として既設機器を更新するに当たり,高効率機器,インバータ制御方式の採用並びに照明のLED化を行った。
工事は監視制御システム(DCS)更新工事と基幹改良工事の二つの契約に分けて行い,2013年2月にDCS更新工事を,その後2014年6月~2016年3月の間に基幹改良工事を行った。本工事は,通常のごみ処理業務を継続させるため,全3炉のうち2炉を稼動させながら,残る1炉で工事を進め,各炉の工事終了ごとに部分引渡しを行った。主要な工事工程を表2に示す。1炉当たり4箇月間の短工期であった。
DCS更新工事契約 | 2012 年 7 月 |
DCS更新工事 | 2013 年 2 月 |
DCS更新工事竣工 | 2013 年 3 月 |
基幹改良工事契約 | 2013 年 12 月 |
共通系工事 | 2014 年 6 月 |
1号炉系工事 | 2014 年 7 月~ 10 月 |
予備性能試験 | 2014 年 11 月 |
引渡性能試験 | 2014 年 12 月 |
2号炉系工事 | 2015 年 7 月~ 10 月 |
予備性能試験 | 2015 年 11 月 |
引渡性能試験 | 2015 年 12 月 |
3号炉系工事 | 2015 年 2 月~ 5 月 |
予備性能試験 | 2015 年 5 月 |
引渡性能試験 | 2015 年 6 月 |
タービン関係工事 | 2015 年 7 月~ 12 月 |
全体予備性能試験 | 2015 年 12 月 |
全体引渡性能試験 | 2016 年 1 月 |
竣工 | 2016 年 3 月 |
通常のごみ処理業務を継続させながら工事を行うため,以下の点に留意して工事を行った。
各炉系の工事期間は4箇月と短く,この間に清掃,既設機器の撤去,更新機器の組立・据付を行わなければならず,また,通常の定期整備との調整も必要であった。そのため,建屋を6工区に分割し,綿密に工事計画を立て, 各エリアの作業工程を管理することで,各作業を並行して進めながらも錯そう作業,足場の架け直し等の無駄作業を排除し短工期での工事を実現した(図6)。
図6 建屋内6工区分
本工事では,ごみ搬入車両や残さ搬出車両の往来に支障を来さないように建屋周辺に大型クレーンなどの重機を極力設置せずに,建屋内に仮設天井クレーン,各階床に大型マシンハッチを設置し,建屋内への機器の取り込みを行い,建屋内で組立を行った。その際,バグフィルタ,給じん装置等の大型機器は建屋内に搬入可能な最大限の大きさにブロック化して搬入することで,現場での作業工数の低減を図った(図7)。
図7 バグフィルタ搬入据付状況
本施設は各炉の工事終了ごとに性能試験を行い,順に稼動を開始し,2016年1月に全体引渡性能試験を終えた。表3に各炉の引渡性能試験時の試験結果を示す。
全ての試験項目において,基準値を満足し,安定して運転することができた。特にNOx濃度,CO濃度についてはそれぞれ平均値で24ppm,4ppmと低く,基幹改良の効果を示す結果であった。
また,本工事によるCO2削減率は基幹改良工事前と比較し,基幹的設備改良事業に対する循環型社会形成推進交付金要件の20%を大きく上回る46.3%
※を達成した。
※文献 2)に則り算出
項目 | 単位 | 判定基準 | 結果 | 判定 | ||
1号 | 2号 | 3号 | ||||
焼却能力 | t(/ d・炉) | おおむね130 | 125 | 129 | 129 | 合格 |
排ガス | ||||||
ばいじん濃度 | g/m3
(NTP) |
≦0.016 | <0.001 | <0.001 | <0.001 | 合格 |
硫黄酸化物 | m3(NTP) /h |
≦2.4 | 0.027 | <0.019 | <0.024 | 合格 |
窒素酸化物 | ppm | ≦160 | 26 | 22 | 23 | 合格 |
塩化水素 | g/m3
(NTP) |
≦280 | 18 | 44 | 49 | 合格 |
一酸化炭素 | ppm | ≦100 | 3 | 3 | 6 | 合格 |
DXN類 | ng-TEQ/ m3(NTP) | ≦0.5 | 0.0083 | 0.004 | 0.015 | 合格 |
焼却残渣(炉下残渣) | ||||||
水銀 | mg/L | ≦0.005 | <0.0005 | <0.0005 | <0.0005 | 合格 |
アルキル水銀 | mg/L | 検出されないこと | 検出せず | 検出せず | 検出せず | 合格 |
カドミウム | mg/L | ≦0.3 | <0.005 | <0.005 | <0.005 | 合格 |
鉛 | mg/L | ≦0.3 | <0.01 | <0.01 | <0.01 | 合格 |
六価クロム | mg/L | ≦1.5 | <0.02 | <0.02 | <0.02 | 合格 |
ひ素 | mg/L | ≦0.3 | <0.01 | <0.01 | <0.01 | 合格 |
セレン | mg/L | ≦0.3 | <0.01 | <0.01 | <0.01 | 合格 |
熱灼減量 | % | ≦3 | 0.3 | 0.2 | 0.3 | 合格 |
焼却残渣(飛灰処理物) | ||||||
水銀 | mg/L | ≦0.005 | <0.0005 | <0.0005 | <0.0005 | 合格 |
アルキル水銀 | mg/L | 検出されないこと | 検出せず | 検出せず | 検出せず | 合格 |
カドミウム | mg/L | ≦0.3 | <0.005 | <0.005 | <0.005 | 合格 |
鉛 | mg/L | ≦0.3 | <0.01 | <0.01 | <0.01 | 合格 |
六価クロム | mg/L | ≦1.5 | <0.02 | 0.02 | 0.03 | 合格 |
ひ素 | mg/L | ≦0.3 | <0.01 | <0.01 | <0.01 | 合格 |
セレン | mg/L | ≦0.3 | <0.01 | <0.01 | <0.01 | 合格 |
熱灼減量 (原灰) |
% | ≦3 | 0.6 | 0.5 | 0.5 | 合格 |
CO2 削減率 | % | ≧20 | 46.3 | 合格 | ||
空気比 | − | − | 1.3 | 1.3 | 1.3 | − |
本施設の基幹改良工事は2016年3月に竣工し,順調に稼動している。竣工後は,当社[荏原環境プラント㈱] にて夜間,休日の運転も請け負うこととなった。今後, 長期間の施設運営を滞りなく行い,持続可能な社会の構築に貢献する所存である。
最後に本施設の設計から建設,試運転を行うに当たり, 多大な御指導,御協力を頂いた新潟市をはじめとする関係各位に深く感謝の意を表する。
1) 塚本圭祐・西山健一ほか,秋田県横手市向け 一般廃棄物処理施設 「クリーンプラザよこて」 の建設,エバラ時報,No.252,P.69-74(2016-10).
2) 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課,廃棄物処理施設の基幹的設備改良マニュアル,平成27年3月改訂.
「第38回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集」(2017年1月)に掲載した内容を一部加筆・修正して転載した。
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