岡本 晃靖* Teruyasu OKAMOTO
大石 智久* Tomohisa OISHI
白鳥 潤一* Junichi SHIRATORI
片山 一寿* Kazuhisa KATAYAMA
仁田 祐輝* Yuki NITA
髙橋 友和* Tomokazu TAKAHASHI
*
荏原環境プラント㈱
小山広域保健衛生組合にエネルギー回収推進施設「中央清掃センター70t炉」を納入し,2016年9月末に竣工した。エネルギー回収推進施設では,当社最新式のエバラHPCC21型ストーカ式焼却システムを採用して1.3以下の低空気比で運転し,かつ,ボイラの蒸気で最大1300kWの発電をし,既設施設への送電及び余剰電力の売電を行っている。既存施設を運用しながら,狭隘な敷地の中で本施設を建設したことが大きな特長である。
We delivered the municipal solid waste treatment plant Central Waste Management Center 70-ton/day Incinerator to the Oyama Wide-Area Hygiene Union, and completed its construction work at the end of September 2016. In the municipal solid waste treatment plant, our latest incineration system, the Ebara HPCC21 Grate-Type Incinerator, operates at a low air ratio of 1.3 or below, generates up to 1 300 kW of electricity with boiler steam, feeds this electricity to existing facilities, and sells the excess electricity. Construction of this facility was a distinctive task, requiring work in a limited area while operating existing facilities.
Keywords: Municipal solid waste, Grate-type incinerator, Incineration plant, Environment, Low air ratio combustion, Renewable energy
本工事は,既設ごみ焼却施設(160t/日)を1期(70t/日焼却施設の建設及び施設運営)並びに2期(70t/日×2基の焼却施設の増設及び施設運営)に分割して更新する「エネルギー回収推進施設等整備基本構想」の1期工事であり,DBO方式で発注された。
建設工事は当社[荏原環境プラント㈱]を代表企業とする建設会社二社[佐藤工業㈱,㈱板橋組]との共同企業体で設計・調達及び建設を行い,2016年9月末に小山広域保健衛生組合に納入した(図1)。
組合は,栃木県小山市,下野市,野木町の2市1町のごみ処理を行っており,施設稼働の10月1日以降,当社出資のSPC(Special Purpose Company)が20.5年間にわたる施設の管理・運営に当たっている。
図1 中央清掃センター70t 炉
中央清掃センターの既設施設は,1台の計量機(トラックスケール)を双方向通行で使用していた。また,一般持込みの車両台数が多く,ピーク時には待車の列が敷地周辺を取り囲んでいた。そこで本施設では,計量機2台を追加設置し,既設の計量機とシステム統合することによって,ごみの搬入・灰搬出時の計量に要する時間を短縮し,収集車及び一般持込車の渋滞緩和を図った。
エネルギー回収推進施設のフローシートを図2に,主要なシステムの概要を表1に示す。
図2 エネルギー回収推進施設 フローシート
受入供給設備 | |
ごみピット | 容量:2 450 m3(γ=0.143 t/m3,5 日分) |
ごみクレーン | 全自動クレーン× 2 基 |
燃焼設備 | |
焼却炉 | 全連続燃焼式ストーカ炉(エバラHPCC21 型) |
処 理 量:70 t/d(1 炉) | |
燃焼ガス冷却装置 | |
ボイラ | 過熱器付自然循環式水管ボイラ |
蒸発量:最大12.2 t/h× 1 缶 | |
蒸気条件:3.0 MPa× 320 ℃(過熱器出口) | |
排ガス処理設備 | |
排ガス減温方式 | 水噴射式 |
集じん方式 | ろ過式集じん器 |
脱硝方式 | アンモニア水による無触媒脱硝及び脱硝反応塔 |
HCl・SOx除去方式 | 乾式(消石灰噴霧) |
ダイオキシン類及び水銀対策 | 活性炭吹込式 |
余熱利用設備 | |
蒸気タービン | 8 段落衝動減速機付抽気復水式 |
発電機 | 三相交流同期発電機 1 300 kW |
灰出し設備 | |
焼却灰 | ピット&クレーンによる搬出 |
飛灰 | 加湿(非常時のみキレート処理),ピット&クレーンによる搬出 |
排水処理設備 | |
プラント排水 | 凝集沈殿+砂ろ過処理後,場内再利用により原則無放流 |
生活排水 | 合併浄化槽処理後,放流 |
ごみ汚水 | ごみピット返送方式 |
本工事は既設施設を運用しながら実施するため,ランプウェイを新たに設置し,既設施設へのごみ搬入ルートを切り替えた後,既設ランプウェイを撤去した。主要なマイルストーンを表2に示す。また,建設工事中の敷地状況を図3に示す。赤斜線の箇所が本施設の建設地である。
契約 | 2013 年 4 月 |
仮設工事開始 | 2013 年11 月 |
仮設計量機使用開始 | 2014 年 4 月 |
建築本体工事開始 | 2014 年 4 月 |
プラント工事開始 | 2015 年 5 月 |
受電,試運転開始 | 2016 年 3 月 |
性能試験 | 2016 年 8 月 |
竣工 | 2016 年 9 月末 |
図3 建設工事中の敷地状況
既存のごみ焼却施設「中央清掃センター160t炉」は, 荏原インフィルコ㈱[注:1994年に㈱荏原製作所と合弁] が建設し1986年3月に竣工した。新旧の設計諸元の比較を表3に示す。新施設のごみ発熱量設計値は旧施設設計値から大幅に増加している。旧炉は竣工後30年以上経過し,当時の設計値(ごみ質など)が現状に合わなくなってきている。
項目 | 既設(160 t炉) | 新設(70 t炉) | |
竣工 | 1986 年3 月 | 2016 年9 月 | |
ごみ発熱量(設計値) 低 質: [kJ/kg] 基準質: 高 質: |
3349 6279 8372 |
5960 9300 12630 |
|
排ガス規制値(設計値) | |||
ばいじん | g/m3(NTP)※ | 0.05 以下 | 0.01 以下 |
硫黄酸化物 | - | K値7以下 | 30 ppm※以下 (K値=0.166 相当) |
窒素酸化物 | ppm※ | 250 以下 | 50 以下 |
塩化水素 | ppm※ | 246 以下 | 50 以下 |
一酸化炭素 | ppm※ | - | 1h平均 100 以下 4h平均 30 以下 |
ダイオキシン類 | ng-TEQ/m3
(NTP)※ |
- | 0.05 以下 |
余熱利用 | |||
場外熱供給 | GJ/h | - | 3 |
発電 | kW | - | 1300 |
※上記は全て乾きガス基準,O2=12%換算値
低空気比で良好な燃焼を安定して行わせエネルギー回収効率を向上させるため,排ガス再循環システムを採用した。排ガス再循環は,一般的にろ過式集じん器出口ガスを使用する場合が多いが,本施設ではエコノマイザ出口排ガスを二次送風機で吸引し再循環している。それによって,排ガス処理設備のコンパクト化を図り立地条件に対応するとともに,炉内温度を維持しつつ従来より2~3割循環ガス量を増加して炉内ガスのかくはん混合を促進しCO発生を抑制することで,結果として,脱硝のためのアンモニア水使用量が削減された。設計値を1とした場合のアンモニア水流量の比率を図4に示す。
図4 排ガス再循環量増加時のアンモニア水使用量
本施設では,再生可能エネルギーを積極的に導入している。
通常のソーラーパネルではなく,太陽の動きを追尾しながら太陽光を特殊な集光レンズで集めて発電する集光型太陽光発電を, ごみ処理施設では国内で初めて設置した。
日照時は高効率で発電する特長があるが,曇天時には 通常のソーラーパネルと異なり出力0 kWとなる。
本装置は,本質的には赤道付近の砂漠地帯など直達日射量の多い地域で使用されるものであり,社会見学で訪れる小学生への啓発を目的としている。
図5 太陽光発電(午前)
図6 太陽光発電(午後)
太陽光を電気に変換せず,そのまま室内に光を導入するものである。トップライトと異なり,通常の照明器具のような外観で,室内の雰囲気を損なわない。また,曇天や雨天時にもそれなりに明るいのが特長である。見学者通路に設置した。
図7 光ダクト(採光部)
図8 光ダクト(室内照明部)
エネルギー回収推進施設では,2016年6月1日からごみを受け入れ,6月10日から実負荷焼却試運転を開始した。7月末までには発電所としての使用前自主検査を終了し,2016年7月に予備性能試験,8月に引渡性能試験を行った。
表4に引渡性能試験時の排ガス測定結果他を示す。
ボイラ出口酸素濃度は平均3.4%(wetベース)で,空気比1.3以下で安定して運転することができた。一酸化炭素及び窒素酸化物はそれぞれ平均で11ppm,36ppmといずれも基準値に対して十分に低い値であった。なお,その他ダイオキシン類をはじめとする公害防止条件についてもいずれも基準値を十分に満足する結果であった。
項目 | 判定基準 | 結果 | 判定 | |
1 日目 | 2 日目 | |||
焼却能力 | 70 t/d以上 (100 % 以上) |
100 % 以上 | 100 % 以上 | 合格 |
ばいじん濃度 | 0.01 g/m3
(NTP)以下 |
0.001 未満 | 0.001 未満 | 合格 |
硫黄酸化物 | 30 ppm以下 | 7 | 11 | 合格 |
窒素酸化物 | 50 ppm以下 | 37 | 35 | 合格 |
塩化水素 | 50 ppm以下 | 30 | 31 | 合格 |
一酸化炭素(4 h) | 30 ppm以下 | 10 | 11 | 合格 |
ダイオキシン類 | 0.05 ng-TEQ/m3
(NTP)以下 |
0.00041 | 0.00019 | 合格 |
本施設で発電した電力は,施設の所内動力を賄うとともに既設施設に電力供給している。既設施設がフル稼働,特に粗大ごみ処理施設が運転している平日昼間の時間帯は買電が必要となるが,70t/日の焼却炉の単独運転では余剰電力を売電している。
本施設では,当社の新電力事業者(PPS;Power Producer and Supplier)である,㈱おやまEサービスに売電し,電力の地産地消を目指している(図9)。
図9 新電力による電力供給
本施設は2016年9月30日に竣工し,順調に稼働している。今後の20.5年間という長期間の施設運営を滞りなく行い,持続可能な社会の構築に貢献する所存である。
最後に,本施設の建設に当たり多大なるご指導・ご協力を頂いた小山広域保健衛生組合の方々をはじめとする関係各位に厚く御礼申し上げる。
1) ごみ焼却施設-小山広域保健衛生組合納入-,荏原インフィルコ時報,第94 号,P.63-64(1986-03).
2) 塚本輝彰・佐瀬正光・佐々木稔,HPCC21 型ストーカ式焼却炉 川崎市王禅寺処理センターの運転状況,エバラ時報, No.236,P.30-36(2012-07).
3) 秋葉直人・井口哲治,北海道岩見沢市向けストーカ式焼却施設 「いわみざわ環境クリーンプラザ」の建設・納入,エバラ時報, No.249,P.14-20(2015-10).
4) 塚本圭祐・西山健一ほか,秋田県横手市向け 一般廃棄物処理施設「クリーンプラザよこて」の建設,エバラ時報, No.252,P.69-74(2016-10).
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