清水 修* Osamu SHIMIZU
小宮 真** Makoto KOMIYA
平田 和也*** Kazuya HIRATA
*
風水力機械カンパニー システム事業部 社会システム技術部
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風水力機械カンパニー カスタムポンプ事業部 設計部
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技術・研究開発統括部 基盤技術研究部
ポンプ本体で渦抑制する新形立軸ポンプ「ポンプラス/PUMPlus」を製品化した。ポンプラスは,既存吸込水槽のままでポンプ排水量を増量,又は運転可能水位を下げた場合でも,渦抑制部材によってポンプに有害な渦を抑制する技術である。また,ポンプ本体の設置だけで渦対策できるため,土木構造物による対策工事が不要であり,工事費の削減,工事期間の短縮が可能である。
Ebara has commercialized a new vertical shaft pump solution “PUMPlus” that controls vortex generation using the pump body. “PUMPlus” is a technique to suppress vortexes detrimental to the pump using vortex suppressing members when pump capacity is increased or operable water level is lowered in the existing pump sump. Since the vortexes can only be controlled by installation of the pump, no construction work is required, thus the installation cost and period can be reduced.
Keywords: Drainage pump station, Pump sump, Pump intake model testing, Air-entraining vortex, Submerged vortex, CFD analysis, Vertical shaft axial flow pump, Vertical shaft mixed flow pump, Countermeasures against voticies
国内の排水機場においては,始動の確実性と迅速性及び吸込性能などの点から,河川排水,雨水排水用として立軸ポンプが多く採用されている。また,近年,特に都市部の雨水排水機場では,ゲリラ豪雨等の影響による短時間での流入量増大に対し,従来よりも更に「運転水位を下げたい」(低水位化),「排水量を増やしたい」(増量)といった客先ニーズが増加している。
既存雨水排水機場の吸込水槽のままで,低水位化や増量を行う場合,流入水のポンプ接近流速が速くなるため,ポンプに有害な空気吸込渦や水中渦が発生しやすくなることが分かっている。これらの有害な渦は,異常振動・騒音・性能低下などポンプの故障原因となるため渦対策が必要となる(図1)。
従来の渦対策は,吸込水槽内に土木構造による渦流防止板を設置するものであるが(図2),排水機場を継続運用しなければならない制約や対策工事費用の増大及び長期にわたる作業期間(ポンプ不稼働期間増大)が必要となり,課題が生じる。
荏原はこの課題を解決するために,立軸ポンプ本体に付設する渦抑制技術,「ポンプラス/ PUMPlus」(PUMP Level Up Solutionの略である。以下,「ポンプラス」)を製品化したので,ここに紹介する(図3)。
図1 有害な渦によるポンプへの悪影響
図2 従来の渦対策(過流防止板の設置)
図3 ポンプラスの特長
今回製品化した新形立軸ポンプ「ポンプラス」は,吸込水槽内に設置する渦流防止板を不要とし,ポンプ本体の渦抑制部材によって渦対策を可能としたものである(図3)。
渦抑制部材は立軸ポンプの外側に設置されるが,吸込ベルマウス及び吐出しボウルに設置される空気吸込渦抑制部材と,吸込ベルマウス下端に設置される水中渦抑制部材で構成され,立軸ポンプを設置するためのポンプ据付開口内に収まる設計とした。
渦抑制は,標準流速オープン型水槽において,最低吸込水位は吸込水槽底盤より1.6 D※1(D:ポンプ吐出し口径)まで,最大流量は160 %流量※2まで可能である(図4)。
※1 従来最低水位2.5Dから0.9D低水位化
※2 標準流速ポンプ100 %流量と比較した場合
これにより,従来は既設吸込水槽内に渦対策を施す場合に必要であった土木工事(水替えや止水壁を設ける仮設工事,過流防止板の設置工事)が不要となり,工事費の削減が可能となる。また土木工事そのものが不要となるため,工事期間(ポンプ不稼働期間)も短縮できる。
図4 ポンプラスによる渦抑制効果
標準ポンプと「ポンプラス」の水槽模型試験の検証結果の一例を図5に,それらに対応する流れ解析の検証結果を図6に示す。
水槽模型試験により同水位,同流量の条件における「ポンプラス」の渦抑制効果を確認している。流れ解析においても水槽試験結果と照合ができており,流れ解析による渦抑制効果の有効性が検証されている。また最低水位及び最大流量条件においても,水槽試験結果と同様な解析結果が得られ,実現象との照合も実施している。
図5 水槽模型試験における検証
図6 流れ解析による検証
「ポンプラス」は,立軸ポンプ機場において,従来より更に「運転水位を下げたい」「排水量を増やしたい」といったニーズを反映し,製品化したものである。今後は,実績を積み,更なるブラッシュアップを図り,運用面・維持管理性・信頼性・コスト面におけるソリューションをユーザに提供する立軸ポンプの改良・開発に努力していく所存である。
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