大迫 政浩
工学博士
国立研究開発法人国立環境研究所
資源循環・ 廃棄物研究センター長
㈱ひらつかEサービス(以下,適宜「事業者」と記述)は,荏原環境プラント㈱と㈱荏原製作所が出資して設立された特別目的会社(SPC)であり,平塚市のごみ焼却処理に関連する官民連携のDBO事業を担っている。同事業は20年間の長期に亘るもので,平成25年10月から開始され今年度で7年度目に入った。私は,同事業を第三者的に評価し助言等を行う運営評価委員会(以下,委員会)の委員長を仰せつかっている。委員会はSPCが設けており,事業者自身のPDCAによるマネジメントに第三者の意見を反映させようとする意欲的な取り組みである。私の知る限りでは,廃棄物処理分野で初めての事例といえよう。
委員会メンバは,事業の趣旨を踏まえて環境(環境安全性・施設安定性・資源リサイクル),経済(経営状況),社会(市や地域とのコミュニケーション,地域貢献など)の視点から当該年度の事業運営状況を評価し,助言等を行う。また,将来の事業の在り方を事業者とともに考える機会にもなっている。最初は,評価軸や基準,結果公表,平塚市との共有などの評価手続き等の進め方自体が定まっていなかった。これまで事業者側と相談しながら試行錯誤で委員会運営を行ってきたが,現在では軌道に乗り,PDCAによる事業運営改善に成果が上がっている。本委員会の存在意義を事業者側と委員会メンバが共有し,事業者が積極的に委員会機能を活用して,内部ガバナンスの改善と外部への説明責任を果たすことにつなげている。その姿勢に敬意を表するとともに,廃棄物処理分野において「ひらつかモデル」として称揚されるような先進プロジェクトに育っていくことを期待したい。
委員会が事業運営に特に求めているのは,処理施設が地域のランドマークとなり,地域に信頼され愛される事業に育つことである。そのために,地域とのコミュニケーションを積極的に図ることを勧奨してきた。それに応えて,近くのビーチの自主的な清掃活動の実施や,平塚市との連携による環境教育イベントへの参加,小学生の総合学習での見学受け入れ,平塚市との連携による災害時の事業継続計画(BCP)作成・訓練など,事業者は地域に密着した活動を積極的に行っている。特に環境教育への取り組みには,工夫して作成したごみ処理に関する資料が,小学校の副教材として採用されるほどの熱の入れようである。このような活動は,直接的に事業者の経済的利益につながるものではないが,事業者の地域に貢献しようとする姿勢から自発的に生まれたものであり,地域市民との触れ合いを通して,地域からの信頼や愛着に繋がっている。また同時に,従業員ひとり一人が社会における事業の意義を実感し,誇りとともに事業をより良いものにしていこうとするモチベーションを引き出している。
筆者は,本事業が真の意味で「ひらつかモデル」へと今後発展していくためには,以下の通り,「新たな社会的責任」「創発性」「連携性」のキーワードが重要であると考える。
CSRから想起される従来の社会的責任を果たすという意味は,法令遵守のように法令という有限な範囲の中で責任を果たしていく意味合いが強く,言い換えれば社会的な説明責任(アカウンタビリティ)を果たすという狭義の意味で解釈されることが多かった。しかし,本来は,多様な社会のニーズに応えることが社会的責任であり,その範囲に境界はなく,社会ニーズを事業者の活動範囲に自発的に取り込んでいくことが新たな社会的責任の果たし方である。社会が求める価値と事業者が生み出す価値の共通化を図ることであるともいえる。ひらつかEサービスの地域社会へのアプローチは,その好事例であるといえる。
社会ニーズは多様であり,それに応えていくためには,従業員ひとり一人が「自発的」に考え,自由な発想で「創発的」に新たな事業を生み出していくことが重要である。これはボトムアップの活動であり,トップは目の前の利益にとらわれず,高邁な理念を示せばよい。ボトムアップの取り組みが,従業員のモチベーションアップと新たな能力開発につながることも重要な要素である。先述した環境教育イベントでの市民との触れ合いは,従業員の事業への使命感と誇りの醸成に繋がっている。
社会ニーズは多様であり,また分野横断的な狭間の領域にも様々なニーズが存在する。多様な関係主体に積極的にアクセスすることで,それらの新たなニーズに気づき,そして連携することで新たな社会的責任を果たすことができる。ひらつかEサービスの事業の特長の一つに「連携性」がある。焼却残渣の資源リサイクルを促進するために,民間の溶融スラグ化を行っている3社との連携によりゼロエミッションを達成し,レアメタル等の高度リサイクルも実現している。また,先述したように,平塚市や地域社会との連携により,環境教育への貢献など地域社会に対する新たな価値を創出している。また,委員会を通じて外部の見識を活用しようとする試みも,「連携性」の一つであるといえる。
今やSDGs(国連のアジェンダ2030に基づく持続可能な開発目標)の時代である。民間セクターも大いに関心を寄せているが,概して自らの事業内容の一側面をとらえて,SDGsの17のゴール(貧困,飢餓,健康と福祉,教育,ジェンダー,水と衛生,エネルギー,雇用と経済,産業と技術革新,人と国の不平等,都市・まちづくり,消費と生産,気候変動,海洋,陸域生態系,平和と公正,パートナーシップ),すなわち社会が求める様々な価値に関連付けてアピールする程度にとどまっている。
一方で,私は,ひらつかEサービスの事業展開にSDGsへの取り組みの萌芽を感じている。すなわち,持続可能な社会づくりのために,社会が求める多様な価値を「創発性」と「連携性」をもって理解し,それらの価値づくりに取り組んでいくことが,SDGs時代の「新たな社会的責任」の果たし方であり,上述したように,ひらつかEサービスはその理念を実践している。
現在,国の環境基本計画で掲げられている「地域循環共生圏」のコンセプトは,まさに地域版のSDGsの取り組みであり,循環型社会形成推進基本計画や廃棄物処理法における廃棄物処理施設整備計画においても反映されている。地域循環共生圏の理念のもとに,地域において廃棄物処理事業を中核として多様な価値を創出していくことが重点的な取り組み事項となっている。ひらつかEサービスが目指す事業の将来像は,まさに私たちが目指す持続可能な社会づくりの方向とも一致しており,SDGs時代の先導的なプロジェクトに今後育っていって欲しい。私自身も引き続き支援していきたいと考えている。
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