本田 恭久* Yasuhisa HONDA
田 書営* Shuyin TIAN
閻 暁軍* Xiaojun YAN
*
青島荏原環境設備有限公司
青島荏原環境設備有限公司は,1992年に設立され,現在では都市ごみ焼却炉や発電用廃熱ボイラ,搬送機器等の生産設計と製造を行い,日本の都市ごみ焼却プラントメーカから直接受注して,中国から国外に輸出している。また中国国内案件も受注して,焼却炉やボイラを納入している。近年,製造業でも色々な分野で自動化が進み,ボイラ製造分野においても,IoTや自動化による生産効率化や高い品質管理,ボイラ付加価値に対応する新しい技術の導入等,客先のニーズに柔軟に対応できる製造工場が求められるようになった。本稿では,当社が取り組んでいるIoT,自動溶接ロボット技術等について報告する。
Founded in 1992, Ebara Qingdao Co., Ltd. now designs and manufactures municipal solid waste incinerators, waste heat boilers for power generators, transfer systems, etc. It receives orders directly from municipal solid waste incineration plant manufacturers in Japan, and exports them from China to other countries. It also receives orders for projects in China and delivers incinerators and boilers. Recently, automation has been progressing in various fields of the manufacturing industry, and even the boiler manufacturing field has seen increasing demand for manufacturing plants that can flexibly meet customer needs, such as improved production efficiency and high-quality control through IoT and automation, as well as the introduction of new technologies that can respond to the added value that boilers provide. Here, we report on Ebara Qingdao Co., Ltd.’s efforts toward the IoT, automatic welding robot technology, and more.
Keywords: Boiler manufacturing, Welding robot, Multi-path/Multi-layer welding, Automatic welding, Path planning, Production efficiency
青島荏原環境設備有限公司(EBARA Qingdao CO., LTD. 以下EQC)は,1992年にボイラを主とする製缶工場として設立し,主に日本のごみ焼却施設及びバイオマス発電施設向けに,焼却炉や廃熱ボイラ,搬送機器等の生産設計,製造,輸出を行ってきた。
近年,都市ごみ焼却プラントは,厳しい価格競争のもとで高い技術力が求められている。その為,プラントの主要機器であるボイラは,低コスト,コンパクト化,長寿命化が必要となった。都市ごみ焼却プラントメーカは,ボイラの小型化や現場据付工事費を削減するブロック化,腐食環境下にある部分に耐腐食性のある金属表面処理により長寿命化等を行っている。
当社は,多様なニーズに応える為に,新しい技術や設備を導入し,製品品質や作業効率の向上に力を入れてきた。
EQCは,1992年設立時は一期工場のみであったが,2008年に二期工場を増設し,生産能力を上げてきた(図1)。
全従業員は約500人で,その内,設計や生産技術,総務等の事務方スタッフが約170人,工場現場作業員が約330人である。
特に,溶接品質を確保するため,溶接士は中国規格はもとより,JIS規格,電気事業法の有資格者が多数所属しており,またRT,UT,PT等の非破壊検査有資格者も従事している。
当社は中国におけるボイラメーカとして,2003年に国家質量技術監督局からA級ボイラ製造許可を認証されており,ボイラの圧力,容量共に無制限に設計,製作できる工場になっている。
2016年にはASMEのS及びUスタンプを取得し,日本や中国以外の海外にも対応出来る体制を構築した。
2018年度の製造量は,約6000 t/yに達した。
また,2000年にはドイツの技術監査会社(TUV)からISO9001の認定を取得し,中国国内及び国外共に客先の信頼を得ている。
図1 EQC平面図
都市ごみ焼却施設の焼却炉やボイラは,プラントメーカや案件毎に構造や形,大きさなど様々で,一品一様の製品になる(図2,図3)。
EQCでは,このように案件毎に異なる製缶品を,管材や板材から部品に加工し,溶接,組立て,歪取り,各種検査や試験を経て製作している。
図2 廃熱ボイラ
図3 大型の廃熱ボイラ仮組作業
このような色々な形のボイラや製缶品を,品質を確保しながら,効率良く製造していく必要がある。EQCでは,溶接の機械化は幾つか行ってきたが,今まで人が調整をして溶接を行ってきた。様々な形のボイラがあるが,類似した溶接で,繰り返しの溶接が多い部分を自動溶接にできないかを考え,人の目や頭の代替としてセンサーやプログラムで溶接を制御し,自動で溶接できるロボットの開発に取り組んだ。
ロボットシステムの構成を図4に示す。
緑色部に管寄せ(製品)をセットし,両端にあるポジショナで管寄せを回転させることができる。溶接機を搭載したロボットは,管寄せ前後に平行に引かれたロボットレール上を移動することができる。
ロボットアームの先端には,レーザセンサとMIG溶接トーチを設置しており,溶接の熱で製品が伸縮するため,製作公差に収めるために,図面寸法のプログラミングだけではなく,溶接する部位の位置や形状を,レーザセンサでデータを取得し,溶接ルートを自動で計画し,MIG溶接で溶接する。
図4 自動溶接ロボットシステム
メーカや案件が異なっても,ボイラの管寄せの溶接構造は,ほぼ似ており(図5),管寄せに溶接する水管やノズルの数が多いことから,管寄せ溶接をターゲットにして,管寄せ自動溶接ロボットシステムの開発を行った。
図5 管寄せノズル開先溶接モデル
溶接の層数は溶接ノズルの厚さで決まり,ノズルの肉厚が厚くなると多層溶接になる。1層目を溶接すると開先角度が広がるため,1パスだけでは肉盛りが不足し,2パス,3パスとパス数を増やす必要がある。この形状的な理由から多層多パス溶接を行う必要がある。
図5に示すノズルの開先溶接では,XYZの座標軸を決め,管寄せの外径,管寄せの厚さ及びノズル外径より,管寄せ側のノズル穴の曲線,ノズル側の開先内側の曲線及びノズル側の開先外側の曲線を計画する。
φ1:管寄せの外径
δ1:管寄せの厚さ
φ2:ノズルの外径
δ2:ノズルの厚さ
曲線1:管寄せ側のノズル穴の曲線
曲線2:ノズル側の開先内側の曲線
曲線2:ノズル側の開先外側の曲線
多パス溶接の場合,溶接トーチの角度は,∠P1 P0 P2の開先形状では,図6に示す青い線の角度となる。
次に,1層が1パス,2層が2パス,3層が3パスと,層が多くなるにつれてパス数が増えるので,溶接トーチの軌跡は図7の線に沿う経路計画となる。
図6 開先形状の理想的な溶接ビードのモデル
図7 溶接トーチの軌跡
図8にロボット溶接システムによる管寄せと同径ノズルの鞍型溶接の様子を示す。
改良した管寄せ自動溶接ロボットの特長は,以下のとおりである。
・製品を大まかにセットしても,レーザーセンサーで検出して補正するので,センサーを持たない自動溶接機に比べて作業効率が良い。
・手溶接に比べて約10倍のスピードで溶接ができ,非常に効率が良い。
・溶接ビードの形状,寸法が綺麗で,PT検査でも欠陥は無く,高品質を安定して保持できる。
図8 管寄せと同径ノズルの鞍型溶接
EQCでは,今回導入した管寄せ自動溶接ロボットの他にも,水冷壁自動溶接機システムや水冷壁水管パネルの自動肉盛溶接機等もある。しかし自動化ができているのは,全溶接量の10 %程度にしか過ぎない。また,自動溶接ロボットにカメラやセンサーを追加することで,作業者がより効率的に安全に作業することができるようになる。今後もより効率的且つ品質の安定化に向けて,自動化の範囲を広げたい。
EQCでは,IoT化に向けて,工場内の溶接機全数の使用状況(使用時間や電流値・電圧値など)を,ネットワークでつなぎ,一括してデータを管理している。現時点では状況データの一元管理だけであるが,将来的には,作業に対する溶接施工要領書(WPS)に従い,電流電圧値を管理したり,溶接データを溶接管理書類にリンク付けさせていきたい。溶接機以外の機器についても管理対象にすることで,作業効率の改善点が見える可能性もある。
今回新しく開発した寄せ自動溶接ロボットについて,報告した。同じ物を大量生産している工場とは異なり,一品一様の製缶品を作る上で,今回の技術を応用して,自動化の範囲を広げて,効率と品質を上げていきたい。 EQC工場のIoT化は,まだ緒についたばかりであるが,利用できる物は利用し,ボイラ製缶工場のAI工場化に向けて,取り組む所存である。
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