永田 秀樹* Hideki NAGATA
曽根 与幸* Tomoyuki SONE
戸上 尚紀* Naoki TOGAMI
北野 智士** Satoshi KITANO
伊能 崇雄** Takao INOH
*
荏原環境プラント㈱
**
㈱ハイボット
従来のボイラ水管の肉厚測定では,管外からの定点測定と水浸UT法を主に用いていた。但し,定点測定の場合は測定点数が限られ,また水浸UT法の場合は多点測定が可能なものの,人が被検査管にセンサを挿入するため,管寄せ付属管では使用困難であった。そこで測定範囲の制約を受けない水浸UT法を実現するため,管寄せ内を走行し,被検査管にセンサを挿入できるロボットの開発を進めてきた。実機試験の結果,一連の測定動作において所定の性能を確認できたことから,本開発で検証できた範囲について,商用化に向けた準備を今後進めていく。
Conventional wall thickness measurements of boiler water pipes have mainly used fixed-point measurement and immersion ultrasonic testing carried out from outside the pipes. However, in the case of fixed-point measurement, the number of measurement points is limited; and in the case of immersion ultrasonic testing, although multi-point measurement is possible, it is difficult to apply to pipes with headers because it requires human work to insert sensors into tubes to be tested. To solve this problem, we have developed a robot that can run inside pipes with headers and insert sensors into pipes to be tested in order to realize immersion ultrasonic testing that is not limited by a measurement range. As a result of the test using the actual machine, we were able to verify the predetermined performance of the system in a series of measurement operations, and we will prepare for commercialization of the robot within the range we were able to verify in this development.
Keywords: Boiler , Water tube wall thickness measurement
固形廃棄物処理施設の廃熱回収ボイラでは,水管の摩耗,腐食等の経年劣化を把握するため,定期的に水管の肉厚測定を行っている。ボイラ内部で管外から定点測定する場合,足場組みや清掃等の準備作業が必要,また測定点数が限られるため,未測定部位の減肉を検知できないリスクがあった。一方,水浸UT法の場合は,ボイラ内部に入らず詳細な測定データが得られる反面,人が被検査管にセンサを挿入するため,検査出来る水管は人がアクセス可能な範囲に限定されるか,または被検査管を切断する必要があった。
そこで測定範囲の制約を受けず,また管の切断を不要とする水浸UT法を実現するため,管寄せ内を走行し,被検査管にセンサを挿入できるロボットの開発を㈱ハイボットと共同で進めてきた。
この度,実機による試験を完了し,商用化に向けて装置の所定の動作と性能を確認できたことから,結果を報告する。
開発した装置の概要を図1に示す。装置は大きく分けて3つの部位で構成される。測定の際は,管寄せに設けた点検口からロボットを挿入し,カメラ映像により管寄せ内部を被検査管まで走行させる。移動完了後,被検査管穴にホースを合わせ,水流によりセンサを移動させながら測定を行う。
図1 装置概略図
(1)ロボット本体(センサを挿入するホースと一体)
ロボットは管寄せ内部を走行するのに適した形状の蛇型ロボットを採用した(図2)。センサは,層内管等のU型ベンドを有する管での使用も想定し,複数の関節を設けて通過を可能としている。
なおセンサは,超音波センサを管周方向に12 CH×2段で配置し,24 CHで管全周の肉厚測定を行う。
図2 ロボット本体
(2)メインユニット
コンベヤとリールが同調し,先端にセンサがつながったケーブルを送りながら,測定データの採取を行う。
(3)ポンプユニット
ポンプによりホース及び被検査管内に水流を作る。ケーブルに等間隔で取り付けた丸い抵抗体が水流を受けて,センサの推進力を得ている。
図3に示すアクリルで製作した試験装置を用いて,測定時の所定の動作を確認した。
図3 ラボ試験装置
試験の結果,管寄せ内部へのロボットの挿入と取り出し,被検査管までの移動と被検査管穴へのホースの合わせ,センサ挿入と戻しの一連の動作に問題が無いことを確認した。
本装置では,U型ベンドで構成される層内管での測定も想定しており,図4に示す実物の層内管でセンサの通過に問題ないことを確認した。実際のボイラでは,マンホール等の開口部廻りでも水管を曲げており,センサが詰まると大きな事故となることから,層内管でセンサの通過に問題がないことを確認することで,他のボイラ部位でも使用できることを確認した。
〈層内管仕様〉
水管:φ63.5×t6.5(内径:50.5 mm)
曲げR:R45,R135
図4 層内管通過試験
実機ボイラにおいて水管の肉厚測定を行い,装置の動作確認及び測定精度を検証した。測定は以下の条件で,ボイラ天井から前壁までを行った。天井パネル管寄せ点検口よりロボットを投入し,ロボットを被検査管に移動させ,センサを投入して測定を行った(図5)。
〈実機試験条件〉
測定対象:ボイラ天井~前壁パネル(測定長さ11.3 m)
管寄せ(ロボット走行部):200 A(適用範囲:200~250 A)
点検口(ロボット挿入部):100 A(内径:102.3 mm)
水管(被検査管):STB340 φ63.5×t4.0
センサ投入速度:100 mm/s
測定スパン:50 mm間隔
測定CH数:24 CH
図5 実機試験部位(天井~前壁パネル)
試験の結果,実機でも測定における所定の動作に問題が無いことを確認した。特に各所R部において,センサ挿入及び戻し動作に問題は無く測定を完了した。測定結果の一例として,肉厚マップを図6,最小肉厚を図7に示す。測定は水管全周を行うため炉内(減肉側)と,炉外(非減肉側)を同時に測定する為,炉内外の減肉傾向の違いを把握できた。
図6 肉厚マップ
図7 最小肉厚
なおセンサは水管内で水流により不規則に回転が生じるため,図6では炉内側と炉外側の境界位置が変化している。ただしメンテナンス上は最小厚さの把握が重要であり,管理上の支障はない。なお白色部は管の変形等により,測定出来なかった部位を示す。
実機ボイラにおいて所定の動作と測定精度を確認し,以下の開発目的が検証できた。
(1)炉内での定点測定に付随する足場組み・清掃等の準備作業の削減と,未測定部位の減肉リスク低減。
(2)管寄せ内部からロボットが被検査管へセンサを投入出来ることで,水浸UT法の適用範囲を拡大。
(3)センサはU型ベンド管(層内管)の通過も可能で,水管φ63.5 mm~76.2 mmで測定が可能。
以上により本装置で,水浸UT法を広範囲に適用でき,ボイラの詳細な減肉傾向の把握と余寿命診断が可能となる。
本開発で検証できた範囲について,商用化に向けた準備を今後進めていくと同時に,さらなる小口径の被検査管に対しても,本ロボットによる計測が可能となるように開発を推進していく予定である。
藤沢工場ものづくり50年の歴史
1966年頃の藤沢工場
縁の下の力持ち 高圧ポンプ -活躍場所編ー
100万kW火力発電所内で活躍する50%容量ボイラ給水ポンプ
RO方式海水淡水化用大容量、超高効率高圧ポンプの納入
長段間流路内の流線と後段羽根車入口の流速分布
縁の下の力持ち ドライ真空ポンプ -真空と真空技術の利用ー
真空の領域と用途例
座談会 エバラの研究体制
座談会(檜山さん、曽布川さん、後藤さん)
縁の下の力持ち 標準ポンプ -暮らしを支えるポンプー
標準ポンプの製品例
座談会 未来に向け変貌する環境事業カンパニー
座談会(三好さん、佐藤さん、石宇さん、足立さん)
世界市場向け片吸込単段渦巻ポンプGSO型
GSO型カットモデル
エバラ時報に掲載の記事に関する不明点やご相談は、下記窓口よりお問い合わせください。
お問い合わせフォーム