駒井 正和 風水力機械カンパニー 事業開発統括部 製品開発部長 1994年荏原製作所入社。荏原電産に出向し,荏原グループ内の電気制御機器製品の開発に従事。2004年に出向解除。以降,風水力機械カンパニー内の製品開発を担う。2020年より現職。
松岡 慶 荏原環境プラント株式会社 共通基盤本部 開発部長 1998年荏原製作所入社。環境プラント事業本部(当時)でガス化技術の研究開発に従事。2007年海外現地法人に出向。2012年から荏原環境プラントにて設計・運営部門支援,研究開発,産学連携等を幅広く担当。2021年より現職。
渡辺 和英 精密・電子事業カンパニー 装置事業部 CMPプロセス部長 1983年荏原製作所入社。荏原総合研究所で磁気浮上の研究開発に従事。2000年精密・電子事業カンパニーへ異動。2002年イービームに出向。2007年より現装置事業部,2011年より現職。
髙栁 秀樹 コーポレート知的財産・品質保証統括部 知財技術・契約部 知財技術課長 1999年荏原製作所入社。入社当初より,知財部門に従事。全ての事業部に関する知財業務を順次担当し,現在は,荏原全体の出願権利化調査を担当。2017‐18年は精密・電子事業カンパニーめっき装置事業部と兼務。2019年より現職。
荏原グループは,研究開発型企業として,数多くの知的財産(知財)を産み出してきました。知財は,長期ビジョンE-Vision2030の実現のためにも欠かせない企業資産で,今後もさらなる強化が期待されます。
そこで,風水力事業,環境プラント事業,精密・電子事業,3つの事業体の知財への取り組み,知財部門との関わり,知財活動の今後をお聞きするため,各事業体の研究開発部門から,駒井さん,松岡さん,渡辺さんに参加していただき,コーポレート知財の髙栁さんとオンライン座談会を行っていただきました。
荏原グループの研究開発現場での知財活動の未来を探ります。
この記事では,荏原グループの3つの事業体を,「風水力事業」「環境プラント事業」「精密・電子事業」と表記します。
荏原グループには,3つの事業体の中にそれぞれ「カンパニー知財」があり,それらや国内外の子会社とも連携し,全グループの知的財産,特に特許と意匠権,商標権などの管理・運営を行う「コーポレート知財」があります。この記事では,前者を「カンパニー知財」,後者を「コーポレート知財」と表記します。
駒井(風水):風水力事業では,知財活動で先行している精密・電子事業を追いかけて知財活動を充実させているところです。
風水力事業は,歴史が長くて,主力商品のひとつ「標準ポンプ」も「標準」というだけあって,製品自体の大きな技術革新は少なく,製品を安定して市場に届ける事業です。
私自身はいろんな事業体の仕事を経験していて,精密・電子事業関連の仕事も携わったことがありますが,そのときはすごくスピード感があって,とにかくどんどんやってみようという環境だったんです。それに比べて,風水力事業では,新技術の開発や知財の視点から見ると,時間がゆっくりと動いているように見えて,あせりを感じました。当時の上司もそれはわかっていて,既存製品を守りながらも,価格競争だけでなく,新しいことをプラスして,新しい市場に行かなきゃいけないと考えていました。
そのためには,知財は非常に大事で,調査の幅も広げなきゃいけない。そこで,カンパニー知財の協力を得て,他の分野や,市場のトレンドも調査をしていただくようになりました。15年くらい前のことです。
それから,精密・電子事業に倣ってカンパニー内に知財の組織を作ってもらいました。席のすぐ近くにカンパニー知財の人がいるようになって,いろいろやってもらっているうちに,もうカンパニー知財の協力は必要不可欠なものになっています。
渡辺(精密):精密・電子事業が先行しているのは,市場の時間軸の影響でしょうね。
次々と新しいスマホを出すためには,半導体メーカのお客さんはいろんなチップを次々に開発していて,新しいチップの製造に求められる性能や技術の時間軸がすごく早いんです。そのスピード感でビジネスにしなきゃいけないので,開発前にすぐに特許出願して「実施権」を確保していくのがマストです。
競合がどんな特許をどのくらい出しているかをカンパニー知財に調べてもらったり,数の均衡を保てるように特許を出願しています。
髙栁(知財):精密・電子事業の知財意識が高いのは,ほぼ単一の製品が世界中で展開されていて競合が少ないこともあるかもしれません。他の事業では,国によって製品が違ったり,機種が多かったり,競合が違っていて,特許の活用にあたって考慮すべきことがより複雑になって整理しにくいんです。
渡辺(精密):私は,入社後,ターボ分子ポンプに搭載する磁気軸受の開発を担当しました。荏原にはない技術だったので,三鷹の航空宇宙技術研究所(現・(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)調布航空宇宙センター)に数か月勉強しに行き,磁気軸受を内製,制御回路も秋葉原で買ってきたパーツで手作りして,最初に浮いたときは感激しました。それが私の開発業務の原点です。
ところが,そのターボ分子ポンプの構造が他社のある特許を回避しきれていないリスクがあることが判明し,商品化を断念,開発内容を見直した経験があります。特許で最初に味わった手痛い経験で,特許の重要性を強く認識しました。
精密・電子事業にとっても,事業体がスタートしたばかりだったので,知財を重視する意識が刻み込まれたのかもしれません。
松岡(環境):環境プラント事業では,大学や企業との共同研究・共同開発が多くなっていて,そこで知財部門の役割が大きくなっています。中心的な事業は,都市ごみの焼却施設を設計・建設して,その後の運営,オペレーション,メンテナンスを行うことですが,焼却炉もすでに成熟した技術であり,ハードウェアの技術開発だけでトップを争う時代ではなくなっています。それよりも,いかに運転やメンテナンスを高度化・省力化してお客様に付加価値を提供できるかが重要になっています。
特許も,AIやロボット,IoT,データサイエンスといった新技術をプラントの運営にどう使っていくかに焦点が当てられています。運転をもっと自動化しましょうとか,薬剤の消費量を最適化しましょうとか,メンテナンスでは,早めに故障を判断する,診断する,異常を予測する,そういったところが重要になっています。他社の特許も同じ傾向ですね。
さらに,ここ数年,大きな流れになっているのが,脱炭素というキーワードで,廃棄物処理そのものが今後大きな変革期を迎えると考えています。プラスチックなどの石油系の資源を焼却するとCO2が排出されるので,熱分解ガス化技術を使って,化学原料に戻していくケミカルリサイクル技術の実用化を当社でも進めています。また,それでも残るごみの焼却によるCO2の排出を,どうやって減らすかということが,産官学の各セクターでさかんに議論されています。
焼却炉に変わる別の処理技術を使ったり,既存の処理技術に新たな要素技術を組み合わせることになるので,新たなパートナーとの共同開発が増えてきます。また,分別収集する会社や再生製品を引き取ってくれる会社など,廃棄物処理に係る様々なプレーヤーとのパートナーシップがこれまで以上に重要になります。
そうしたパートナーと共同開発や事業を円滑に進める上で,お互いにWin-Winな形になるように,知財契約や特許出願を行っていくことが重要になってきます。
松岡(環境):単純に比率で決める場合もありますが,お互いの事業の方向性や将来性を考えて,この部分の権利はいらないけれど,この部分は譲れない,といった会話をきちんとさせていただいて,お互いに納得した形で,お互いの事業をさらに発展させるような形で成果を利用できるようにしていくことが重要です。そのためには,会社としてもポリシーや考え方を整理していく必要があります。
具体的な成果がはっきりしない段階から過度に細かく取り決めようとしても話が前に進まないですし,何も決めないでスタートしてすごい成果が出てきて後で揉めるのも避けたいですよね。
松岡(環境):そうです。共同開発などの契約を締結する際には,知財部門に必ず協力を頂いていますし,特許出願の案文作成の際にも相談しています。事務的なところだけでなく,将来の知的財産の活用をどう最大化していくかという観点から,実践的なアドバイスをもらいながら案文を詰めていきます。
髙栁(知財):環境プラント事業は,パートナーと共有の案件が多いですね。
全社的には,EOI(エバラ・オープン・イノベーション。2010年に始めた,荏原の研究者と国内外の研究機関がオープンに連携して研究する仕組み)という組織やシステムで,個別の大学や事業体と共同開発していますが,持ち分を何対何にするかといったことより,実施したときの利益を誰が得るかという取り決めが難しいです。
ベンダーとユーザーで立場が変わってきます。ユーザーは,その技術で差別化したいので,他には売ってほしくない。ベンダーは,ユーザー以外の顧客にも売りたい。その取り合いですね。
環境プラント事業では,荏原がユーザー側になることが多いですが,精密・電子事業では,荏原がベンダー側になることが多いですよね。
渡辺(精密):そうですね。デバイスメーカーはそれぞれ競争しているので,独自の技術で先行したいですが,我々ベンダーはたくさんのお客さんにその技術を売ってビジネスを広げたい。そういう場合は,期限を切って,何年後以降は他に売っても構わないという契約を結びます。
駒井(風水):あります。ポンプ単体より組み合わせが重要になってきているので,パートナーと組んで共同開発することが増えています。そういうときは,契約事項が重要になるので,知財部門にアドバイスを頂いて,落としどころを探ります。
「協業,共同開発の特許や契約に知財部門に 蓄積されたノウハウは欠かせません」(松岡さん)
髙栁(知財):問題が起きたときですよね。たとえば,事業になる前に,他社の特許を侵害していたことがわかって新製品を出せなくなったときなどでしょうね。新製品を出すにあたって,他社が特許を取っていたために,新製品の目玉となる新しい技術を搭載できなくなってしまうというのは,避けなければいけません。
渡辺(精密):2012年に始まった「知財大会」(精密・電子事業のマネージャーを対象に知財活動やその方針について周知する会議)でも知財活動の重要性を強く認識しました。
この大会によって,「会社はこういうことを考えているんだ」「こういうところを目指しているんだ」とか,「競合はこういう分野でこんなに出しているのか」などと全体像が見えるようになりました。そんな中で,各人がどこに関わっていて,特許を出すならどの分野なのか,会社の考えとどうつながっているかが分かるようになったと思います。
髙栁(知財):あのころは,荏原の特許数が減ってしまった時期でもあり,技術者の意識が特許から離れてしまうことに危機感を持っていました。そこで,当時,精密・電子事業のカンパニープレジデントであり研究開発・知的財産部門の担当役員でもあった辻村さんが「まずは,出願数を増やしましょう!」と音頭を取って呼び掛けたのが始まりです。
「知財大会でも,会社の目指すところや自分の研究開発 の位置付けから知財の重要性がわかりますよね」(渡辺さん)
松岡(環境):そんなことはないです。特許って,普通の設計や開発と違う仕事で,何か特殊な知識やセンスがないと書けないと思っている人もいますが,そんなことはないです。
日頃,設計や開発の仕事の中で,技術に真摯に取り組んでいれば,ちょっとしたアイデアや,なんかこれうまくいきそうだなっていう改善提案みたいなものが出てきます。それを特許につなげていけばいいんです。
そういうアイデアや提案を,特許出願の明細書の形にまとめていくことで,その技術の価値が的確に定義されるだけでなく,技術者自身の価値を高めていくことになると思います。
そのための手助けや提案を知財部門の方は本当に親身になってやってくれます。私もフォローしますし,自分だけで抱え込むまずに,新たなアイデアがあれば,どんどん投げかけて欲しいですね。
渡辺(精密):とくに若いうちに「明細書」を書いたほうがいいと思うんですよね。
出願作業をすると,特許とはどういうものかが分かるし,「請求項」(特許を受けようとする発明を文にまとめたもの)を書くことで,自分がこの特許で何を権利化したいのかが明確になります。
自分が開発した技術は,特許として権利化しないとビジネスにつながらないという認識を持ってほしいですね。売るものの技術の特許権を確保してからビジネスにする。もし,他社に訴えられたりすると,ビジネスできなくなる。それが最悪のシナリオですからね。
駒井(風水):風水力事業では,まず「ひとくちメモ」を書くことから始まります。
こんなのを発明したいんだけど,こういうのを出願したいんだけど,っていうアイデアをメモにまとめます。ひとくちで説明できるくらいのことを簡単にA4一枚に書いて,それを知財に送ります。絵だけでもいいんです。「ひとくちメモ」を書くと知財と相談できるようになります。
松岡(環境):環境プラント事業でも,「アイデア連絡書」というものがあって,やっぱりA4一枚くらいで,何が課題で,それをこういうやり方で解決して,ここに独自性があるということを,簡単なメモや図面で書くんです。それを出すと,コーポレート知財の方と環境プラント事業の中のカンパニー知財が出願に向けていっしょに動いてくれる仕組みになっています。
A4一枚にまとめるのは,かえって難しいところもあるんですけどね。必ず書かなければいけないポイントもあって,けっこう頭を使います。いい加減にまとめると出願までなかなかたどりつけないこともあります。
若手の方でも,1,2件経験すると,3件目にはかなりのものを出してくれるので,こういうことを地道に続けていくのがいいのかなと考えています。
「こんなの発明したいんだけどっていうアイデアをA4一枚 に書く『ひとくちメモ』から始まります」(駒井さん)
渡辺(精密
):ちょっと違うんですが,「発明評価テーブル」というものがあって,担当者が特許を考えたらこれで評価と検討を行う評価ツールなんです。この特許は本当にやるつもりなのか,他社に対して効果があるのかとか,そういう評価を早い段階でいっしょに確認して,内容によって特許化は難しいんじゃないか,ここをちょっと足せばいい特許になるんじゃないかとか,そういうことをやって,特許出願の中身や数を維持しています。
髙栁(知財):この「発明評価テーブル」を利用して,発明者と発明者の所属する部長(または課長)と知財の三者で話合います。この三者で議論して評価を決めます。そうすると,部長(または課長)は事業の中での位置付けで発明を見ていて,発明者はその技術はどうかを見ていて,知財はその技術ならこの辺で特許を取れそうとか,こうしたらもっと広くなるよってことが言えます。こうして評価を決めていくので,発明者の教育としてもいい仕組みだと思います。
渡辺(精密):たしかにそうですね。いろんな視点で意見が出てくるので,担当者が考えていなかったことも出てきて,特許ってそういうことまで考えなきゃいけないということも分かるので,教育の一環としてもとてもいいと思っています。そこでもっといいアイデアが出ることもあるんですよ。
松岡(環境):すごく良い評価の仕組みなので,環境プラント事業向けにアレンジして導入しようと整備を進めているところです。
駒井(風水):風水力事業でも検討しています。
松岡(環境):出願数の目標は毎年用意しています。今までの傾向,今持っている特許の数,今までの出願傾向,これからへの期待などを織り込みながら,今年は何件出そうという目標を掲げます。それを受けて開発部門のエンジニアのみなさんは,私は1件,私は2件という目標を立てて,何か出せないかなって頭をひねっています。
駒井(風水):風水力事業でも,出願数の目標を立てて,全体の目標を各人の目標に落とし込んでいます。目標を立てると,何か出さなきゃいけないなって,アンテナを張って,日々そういう活動をやっていますね。
渡辺(精密):精密・電子事業でも数の目標を立てています。私は,部員に「年に1件,出そう!」と言っていますが,これはなかなか達成できません。
髙栁(知財):特許を出願して権利化するのには,けっこう時間を取られますよね。技術者にとっては,設計や開発が本来の仕事であって,我々知財としてもできるだけそこに時間を使っていただきたいと思います。
かといって,特許を出さないと,将来の事業に影響を与えてしまいます。
そこで,いかに技術者が時間をかけずに出願するかということになるんですが,技術をいちばんわかっているのは技術者なので,知財部門だけが動いても良い出願はできません。我々は,事前調査や,出願のサポートをすることで,出願すべき発明をできるだけ効率よく,かつ,質を高めて出願できるよう心掛けています。
駒井(風水):出願すべき発明を選ぶのは難しいですよね。なかなかホームランを狙った特許は出てこないんです。ヒットの積み重ねなんです。これは絶対やっておいたほうがいいっていうものは当然やるんですが,それ以外は判断が難しいです。過去にも,とりあえず出願したものが,後で出しておいてよかったねってケースも経験しているので,一概にばさっとは切れないです。トレンドもありますが,将来何がトレンドになるのかわからないですし。
カンパニー知財に協力してもらって,開発する前に知財情報や関連分野の技術を調査して,「この辺の技術は他社も押さえてるね」とか「ちょっと手薄だよね」とか「我々はこの辺にも強みがあるよね」といったマップにしてもらって,どんなものを出願がすればいいかは検討しています。
駒井(風水):「ひとくちメモ」といっても,競合の情報を書きこむ欄や「公知例」(開示されている広く知られた出願。先行技術。出願前に公開公報などで調査する)の欄もあるんです。公知例調査も慣れていないと大変なんですよ。
渡辺(精密):「公知例」の調査も,論文とは違った観点で非常に勉強になるんですけどね。
明細書を書くのも大変ですよね。最近,テレビでAIを使った契約書の制作支援ツール見ましたが,特許明細の支援ツールはできないんでしょうか。
出願特許は,全の内容が新規になるものは少なくて,多くが既存技術の延長線上の発明だと思うんです。だから,自社特許の明細をデータベースにしておくと,部分的に使いまわしたり,参考にできるはずです。
ミスや抜けをチェックできれば質も上がるし,書いている途中に,「それはすでに出願してるよ」とか教えてくれるとさらにいいですね。
特許をたくさん出している人は明細のデータベース持っていますが,あまり出していない人はそれを持っていないので,なおさら出すのが難しいんですよね。
髙栁(知財):一般的な契約書には雛型を用意しているんですが,特許は,知財の担当者が相談を受けて,こういう風にまとめたらいいよっていうアドバイスをして書いてもらったり,個別のOJTで覚えていただくことが多いです。
AIを使った出願支援ツールも,世の中にありますが,現状当社でも導入するというこころまでは至っていません。今後の課題ですね。
「知財って見えにくいものなので,『発明評価テーブル』 などを作って見えやすくしているんです」(髙栁さん)
渡辺(精密):最近は,初期の段階から評価テーブルを使ってカンパニー知財と話をするので,けっこう身近で,パートナーという存在になってきているんじゃないかと思います。
松岡(環境):かつては,単純に出願や権利化の事務手続きや弁理士さんとのやりとりなど,事務的なところをお願いしていたのですが,年々,知財に求められるものが高度になってきています。
技術者は,技術に対して真面目すぎて,すべてを明細書に盛りこもうとする傾向があります。また,出願した特許を権利化する過程で,特許庁からの「拒絶理由通知」に反論する場合がありますが,「こういう理由でこれは新しいんです,進歩しているんです」って反論する際に,技術者は真面目に技術だけの視点で反論しようとする傾向がどうしてもあります。
そういうとき,知財部門の方は,特許法の考え方や手続き,過去の出願での経験など,特許のプロとしての観点から「こう反論した方がいいよ」ってアドバイスしてくれます。それが,実はすごく重要なんです。
出願のときも,「ここをもっと膨らませられるよね」とか,「ここは本当はいらないんじゃない?」とか,冷静な視点で普遍的なアドバイスをしてもらう場面が増えてきました。いちばん期待していたことなんです。
技術者は,自分の出願が「拒絶」されると,自分が取り組んでいる技術そのものを否定されたと思って意地になって反論しがちなんですが,切り口を変えてこう返した方が権利化につながりやすいんじゃないかってアドバイスしてもらえるととても助かりますし,その技術の価値を見直すよい機会にもなっていると思います。
駒井(風水):事業体を横断する知財活動をやれれば,面白い化学反応が起きるんじゃないかなってことはすごく感じています。風水力事業は,事業範囲がすごく広いので,それだけで知財活用の幅が広がります。情報共有って,いちばん大事だと思うんですよ。
松岡(環境):3つの事業体で,お客様との関係,競合との関係,どこでマネタイズしていくかっていう部分がかなり異なるので,今はそれぞれ違う分野で違うお客様に対して,知財に取り組んでいるんですが,これを組み合わせて行くと,荏原にしかできない知財戦略ができるんじゃないかと思っています。
渡辺(精密):私の部門はいろんな要素技術を開発していて,マーケット情報から,市場にどういう要求があって,どういう商品や技術が必要とされているのかを読み取りたいんですが,その技術トレンドを見る方法の一つとして特許情報があると考えています。
知財的な技術トレンドをタイムリーに知ることが出来れば,開発の方向性,指針検討に使えます。各要素技術の特許数を把握するところまでは出来ているのですが,技術レベルまで落とし込んで,マーケット情報とリンクした技術トレンドが見えたらいいなと思っています。
髙栁(知財):事業横断で知財情報の共有や社内外の技術動向の把握を加速したいと思っています。
そのためには,各事業体にカンパニー知財を置き開発部門をより近くでサポートし,我々コーポレート知財は,全社の知財状況を見ていきます。3事業体はそれぞれ事業の特色がありますが,各事業体のカンパニー知財とコーポレート知財の連携をさらに深めていくことで「事業を横断する知財活動」が実現できると思います。
今後は,社内外のステークホルダーとの連携も増えてくると思います。お互いに成果をWin-Winな形で活用できるよう,事業に貢献していきます。
備考)本記事は社外ファシリテーターがインタビューを行い,編集したものです。
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