佐々木 浩 Koh SASAKI
荏原環境プラント㈱
流動床焼却炉へのごみの供給において,画像処理を用いて給じん量を制御する技術を開発した。焼却炉へ供給されるごみを画像処理することによって得られた情報により給じん量を制御し,焼却炉の燃焼安定性を向上させる技術である。流動床焼却施設に導入し1年間の運転を行った結果,CO濃度の低減を確認できた。今後,新規案件及び既納入施設の燃焼安定性を向上させる技術として展開していく。
We have developed image processing technology to control the amount of waste fed to a fluidized-bed incinerator. The information obtained from image processing of the waste fed into the incinerator is used to control the amount of waste fed into the system and thus improves the combustion stability of the incinerator. We have installed this technology in a fluidized-bed incineration plant and operated for one year. As a result, we confirmed that the CO concentration was reduced. This technology is expected to improve combustion stability of new projects and existing facilities.
Keywords: Feeding Control, Image Processing, Fluidized-bed Incinerator, Combustion Stability
流動床焼却施設は,主に受入供給設備,燃焼設備,燃焼ガス冷却設備,排ガス処理設備,余熱利用設備,飛灰処理設備で構成されている。設備フローを図1に示す。
図1 流動床焼却施設の設備フロー
燃焼設備である流動床焼却炉は,炉がコンパクトであるため設置スペースを小さくでき,発電量及び送電量の制御性に優れている等の特徴がある。しかし,燃焼速度が速いため,受入供給設備から供給されるごみの給じん量(炉へのごみ供給量)やごみ質の変動が燃焼に与える影響が大きい。したがって,流動床焼却炉において,燃焼を安定させるためには,炉へごみを定量的に給じんすることが必要である。
しかしながら,ごみ焼却施設に収集されるごみの種類は多種多様で性状が不均一であるため,焼却炉へ供給されるごみの量が安定せず,燃焼の変動を抑制するための給じん量制御が必要となる。
従来は,給じん装置から焼却炉に投入されたごみが燃焼した後のプラント運転情報から,給じん量を制御してきた。
本稿では,給じん装置から焼却炉へ落下中のごみを画像処理し,数値化したごみ給じん量(ごみ落下量)によって給じん量を制御することで燃焼安定性を向上させる技術を開発したので報告する。
流動床焼却施設では,ごみを以下のフローによって供給している。
① ごみピットに一時貯留されているごみをクレーンによってごみ投入ホッパ内に投入する。
② ごみホッパ内に投入されたごみを給じん装置(スクリューコンベヤ)が搬送する。
③ 給じん装置によって搬送されたごみを掻取機(スクリュー羽根式)が細かく掻き落として焼却炉へ供給する。
画像処理装置は,掻取機から焼却炉に落下しているごみを掻取機の排出口に設置したカメラで撮影した画像を演算処理し,数値化したごみ給じん量を出力する装置である。画像処理装置の構成を図2に示す。
図2 画像処理装置の構成
給じん装置は,スクリューの回転数により給じん量を制御する機器である。ごみ焼却施設に収集されるごみは性状が不均一であるため,給じん装置内のごみの充填率に粗密が生じる。その結果,給じん量と給じん装置の回転数に比例関係が成立しない場合が発生するため制御が必要となる。
従来の運転では,焼却炉内の火炎の輝度,排ガス中の酸素濃度及びボイラのドラム圧力など燃焼に応じて増減するプラント運転情報からフィードバック制御にて,給じん装置の回転数を増速・減速制御して焼却炉にごみを定量供給していた。
画像処理装置を用いた制御では,従来の制御に加えて燃焼前のごみ落下量から給じん装置及び掻取機の回転数を以下のようにフィードフォワード制御し,焼却炉内への給じん量の定量性を向上させる。
①給じん装置の増速制御
給じん装置内のごみの充填率が粗になり,ごみ落下量が少なくなったときに,給じん装置の回転数を増速する。本制御により,一時的にごみが不足する時間を短くすることができる。
②給じん装置及び,掻取機の減速制御
給じん装置内のごみの充填率が密になり,ごみ落下量が多くなったときに,給じん装置及び掻取機の回転数を減速する。本制御により,ごみ落下量が多くなったときのみ一時的に給じんを減量することができ,連続して過剰にごみを投入することを抑制することができる。
画像処理による給じん量制御を既納入流動床焼却施設に導入し,以下の方法で評価した。
1)ごみ落下量の評価方法
ごみ落下量と燃焼状態との相関関係より時間遅れを算出し,ごみ落下量が実際に焼却炉へ投入されるごみ量を表す指標として有効であることの評価を行った。
燃焼状態を表す指標として,以下を用いた。
① 焼却炉内の火炎の輝度
② 酸素消費量(=ごみの燃焼に使われた酸素量,ボイラ出口の酸素濃度からの演算値)
2)画像処理による給じん量制御の評価方法
導入施設には2系列の焼却炉があり,1系列は従来通りの給じん制御による運転(以下,従来制御),他方は画像処理による給じん量制御による運転(以下,画像処理制御)を行った。各系列での煙突出口排ガスCO濃度を比較し,画像処理による給じん量制御の評価を行った。
1)ごみ落下量の評価
2019年3月の運転データ(12時間)から算出したごみ落下量と燃焼状態を表す指標に対する相関係数及び時間遅れを表1に,時系列データを図3に示す。ごみ落下量と,各指標①②に対する相関係数は0.2~0.4であり,相関性は弱い。しかしながら,ごみ落下量の増加後,14秒遅れで火炎の輝度が上昇,22秒遅れで酸素消費量の増加が確認できることから,ごみの投入後,火炎が発生し,酸素消費量が増加するプロセスをよく表現できており,実際に焼却炉へ投入されるごみ量を表す指標としてごみ落下量は有効であると判断した。
指 標 | 相関係数 | 時間遅れ |
①焼却炉内の火炎の輝度 | 0.33 | 14秒 |
②酸素消費量 | 0.25 | 22秒 |
図3 ごみ落下量と燃焼状態を表す指標の時系列データ
2)画像処理による給じん量制御導入の評価
2019年6月から2020年5月までの1年間の運転期間で,煙突出口排ガス中のCO濃度(1時間平均値)が50 ppm以上となった頻度を図4に示す。なお,2019年8月と2020年1月,3月は休炉のため一系列分のデータを表示した。本図より以下のことが分かる。
① 従来制御と比べて,画像処理制御は,CO濃度が50 ppm以上(1時間平均値)となる確率が年間平均で5割以上削減されており,燃焼安定性が向上している。
② 従来制御は,季節的なごみ質変化に伴い,夏季にCO濃度が悪化しているが,画像処理制御は1年間通して安定した運転となっている。
図4 高CO濃度(1時間平均)発生確率
以上のことから,画像処理による給じん量制御を導入することによって,ごみ質変化に適応した安定供給が可能となり,燃焼安定性が向上していることが分かる。
本稿では,画像処理を用いたごみ焼却炉への給じん量制御技術について取り組みを述べた。
給じん量の定量化は給じん量制御だけでなく,燃焼制御に関わる他の制御(二次空気制御等)に対しても有効であると考えられ,本技術の応用範囲は広い。
また,本技術は既設の焼却炉施設に対し大きな改造なく追加できるため導入のリスクは小さいといえる。新規の焼却施設だけでなく,既設の焼却施設に本技術を活用し,安心・安全なごみ焼却処理技術の向上に努力する所存である。
1) 佐々木 浩,画像処理を用いたごみ焼却炉への給じん量制御技術の開発,第42回全国都市清掃研究·事例発表会講演論文集 (2020).