太田 晃志 システム事業部長 1994年荏原製作所入社。当時の公共営業部に配属となり,約22年国内公共営業に従事。2016年に人材開発部に異動し,採用と研修を担当。2021年から社会システム営業部長。2022年から現職。
稲垣 圭三 事業管理部長 1990年荏原製作所入社。当時の公共営業部に配属となり,約30年国内公共営業に従事。2021年から現職。
内田 義弘 社会システム技術部長 1992年荏原製作所入社。入社以来,ポンプを主体とした設備設計,技術営業,開発に従事。楽々点検ポンプ,フレキシブルベース付ポンプ,ドライ始動,ガードマウスなどの開発に携わる。2019年から現職。
松島 一夫 社会システム建設部長 2001年荏原製作所にキャリア採用にて入社。入社以来,一貫して国内公共工事の建設業務に携わる。2015年から現職。
荏原製作所は,1912年にポンプメーカとして創業以来,「ものづくり」を通じて,人,社会,環境の未来を考え続けてきました。その中でも全国の治水や灌漑をはじめとするインフラ設備を作り,守り続けているのが「システム事業部」です。台風や集中豪雨による水害から私たちを守り,水源の少ない地域に水を送り届ける社会インフラを支える役割を担っています。
この「システム事業部」で協働していくつものプロジェクトを進めてきた,太田さん,稲垣さん,内田さん,松島さんに集まっていただきました。
「大更新時代」を迎える中,システム事業部はどんなプロジェクトを進めてきたか,どんな技術を開発・提案してきたかをお聞きします。
内田:荏原製作所が製作している風水力機械(流体機械)の中で,主にポンプや送風機を使った社会インフラを作るのがわたしたちシステム事業部の仕事です。
稲垣:国土交通省や農林水産省,地方自治体などが主なお客様で,公共事業として発注されたインフラ設備を施工することが私たちの仕事です。営業部,技術部,建設部,事業管理部の4つの部門で構成されています。受注した案件の多くはポンプ単体ではなくEPC※案件であるため,4つの部門が一体となって案件に対応しています。
具体的に言うと,ポンプを使った排水機場や下水処理場,浄水場などの施設や送風機を使ったトンネルなどのインフラ施設を作っています。
※EPC:設計/Engineering,調達/Procurement,建設/Construction
太田:河川や水路の水門って見たことはありますか? よく小さい河川(支川)が大きな河川(本川)に合流していて,その部分に水門がつけられています。あれは治水のためのもので,本川側の水位が上がった時に支川の方に水が逆流するのを防ぐための水門です。降雨で本川の水位が上昇して,いつもは支川から本川に流れている水が逆流しないように水門を閉めるんです。それだけだと放出先がなくなった支川の水位が上がって,周囲の農耕地や住宅が浸水してしまいます。そこで,ポンプを動かすことでその水を強制的に下流側に送り出すのが「排水機場」です。台風や集中豪雨で大雨が降ったときに大活躍する施設です。
内田:ポンプには,小さいものから大きいものまでいろいろあります。河川の水を吐き出すような排水機場には,直径が1メートルを超えるような大きなポンプがいくつも並んでいて,停電時でも運転できるようにエンジンで動かす設備が多いのが特徴です。このエンジンも「乗用車の中に入ってる」ようなエンジンではなくて,エンジンそのものが「乗用車みたいな」大きさのものでポンプを動かすんです。
稲垣:私たちがどんな仕事をしているかをご紹介するには,最近の6つのプロジェクトを見ていただくといいと思うんです。そうすると,4つの部門がどのように協働・連携してプロジェクトを進めているかもわかると思います。
太田:この機場は,新潟県の新川という川の河口にあります(図1)。いくつもの支流が集まって大きくなった新川が,日本海に流れ込んでいて,その日本海とをつなぐ河口位置に建設された排水機場です。
図1 新川河口排水機場<sup>1)</sup> 江戸時代に稲作地帯の灌漑と防災のためにつくられた新川の河口近くにある排水機場
我々の感覚でいうと,数あるポンプの中でもトップオブトップ,ポンプの王様みたいなポンプがここにあります。
第二次大戦後,国力復興ということで,国が農業にとくに力を入れていた時代に取り組んだ中でも最も規模の大きなもので,当社にとっては非常に思い入れのある機場です。この機場のリニューアル工事ということで,我々営業としても,なんとしても受注したい案件でした。
当社は70年代初頭にポンプを納めて以降,ずっと維持・管理をさせていただいているので,更新する10年くらい前から老朽化が著しくなっていたことはわかっていました。ところが,これがたいへん難しい工事で,技術担当がなかなかできると言ってくれないんですよ。
内田:そうでしたね。正直,要望されている短い期間での更新は不可能だと思っていました。
既設のポンプを新しいポンプに取り換えるという言葉だけだと簡単に聞こえるのですが,この機場のポンプは羽根車の直径で4.2 mもある超大型というだけでなく,非常に独特なポンプ構造をしてるんです。当然,高度なポンプ製作技術も必要なのですが,短期間に既設をどう撤去して,新しいポンプをどう入れるかと言った高度な施工技術も要求される技術テーマの多い難工事でした。
このポンプはコンクリートケーシングと言って,ポンプを据え付けたあとに,コンクリートで埋めるタイプなんです。
普通なら古いポンプを取り出すのに大型の破砕機(コンクリート・ブレーカー)でドドドドドッてコンクリートを削り取ってから,ポンプを分解して取り出します。しかし,このポンプは特殊な構造でしたから,ポンプの上の部分は土木・建築躯体として強度設計されて,構築・運用されていて,壊すことは不可と言う制約条件がありました。ポンプの撤去においては,この断面図(図2)の黄色で着色してある部分しか壊せないし,それで得られた開口部分から撤去したコンクリートや機械を取り出さなければいけないという難問を解決する必要がありました。
図2 新川河口排水機場の断面図<sup>2)</sup>
内田:そうなんです。壊すのも大変,それを取り出すのも大変。また,撤去した後に新しいポンプを入れるのも,コンクリートを再度充填するのも大変。それに加えて撤去から新ポンプ据え付けまでに使える期間も非常に短く,主な作業場所も荒天が多い日本海近くの屋外といった現場泣かせの案件でした。
通常は,コンクリートの撤去・構築を土木工事で,ポンプは我々のような機械設備工事というように分けて,バトンを渡すように施工していくのですが,それだとどうしても要望されている期間内に工事(切替)が終わらない。
この機場は排水機場ですので,大雨が降ったら全台を運転するので,台風シーズンや梅雨時には全台運転を可能とする必要がありました。更新工事ができる(許される)期間が短かったんですよ。
内田:いろんな技術を持ち込んで解決したんですが,いちばん大きいのは,土木工事と機械工事という区分を捨てて,全体最適工程となるようにしました。元請となる荏原の建設部門が新しい技術を採用し,並行作業を含めた綿密な工程をたてたこと,工程短縮となるように更新するポンプの構造設計にも工夫を加えたことが課題解決につながったのだと思います。新しい技術という部分では,コンクリートとポンプをワイヤーソーという技術を使って一緒に切り出すことにしたことがあげられますね。
内田:スチールのワイヤーに切削用のダイヤモンドを数珠みたいに付けたもので,これを切りたい部分に巻き付けて回転させて切断するんです。これでコンクリートとポンプを一緒に切り出したんです。
内田:切りましたよ。鉄筋コンクリートのビルや橋梁の解体に使われるものですからね。切れるんです。
当時はまだ珍しくて,この工事の少し前に千葉県の印旛機場というところで,土木業者さんにお願いして,荏原のポンプ設備工事として初めて使った工法なんです。これで工事を工期内でやり切れる見通しが立ちました。
太田:プレゼンでも,内田さんに頑張っていただきましたよね。この頃は,「総合評価落札方式」(以下,総合評価方式)になっていましたからね。「総合評価方式」というのは,入札のときに金額だけでなくて技術提案書も提出する方式なんです。
入札が公告されてから入札までの1か月の間に,技術提案書を作って,プレゼンするんですが,もう最後の一週間なんか,根を詰めて,やりきって,倒れてもいいっていうぐらいまで頑張ってもらいました。
内田:ちょっと大げさかもしれないです。北陸支社(新潟)の営業さんからは,毎日電話がかかってきましたけどね。
なにしろギリギリまで,関係部署全員で資料のブラッシュアップしてたので,プレゼンの練習は本番の前日からやっと始めた状態でした。朝から会議室にこもって練習して,北陸に移動して,宿泊先のホテルでも一人でぶつぶつ夜中まで練習してました。
プレゼン資料で20枚くらい,提案できるものは全部提案して,しっかり荏原の技術を認めてもらおうってことで,ポンプそのものから,制御系,施工方法,すべて網羅した提案書に仕上げました。かなりのボリュームだったので,プレゼンは結構しんどかったです。
松島:ワイヤーソーなどを使うことにして,なんとか見通しは立ったものの,24時間体制の3交代制にして,非出水期にやっとポンプを1台交換できるというスケジュールですから。人が多いとき,少ないときはありますが,既設撤去や納入ポンプ製作期間も含めて6台の更新に約8年間,現場に付きっきりになりました。
内田:台風シーズンや梅雨時期などポンプが主に稼働する時期を避けた期間ということです。場所によって違いますが,だいたい10月,11月から4月までを非出水期といいます。台風が来ているのに排水機場が機能しないわけにはいきませんからね。台風シーズンが終わった10月か11月に工事を始めて,できれば翌年3月末,延びても4月末,ゴールデンウィーク前には工事を終わらせる必要がありました。梅雨はおおむね6月ですが,早く始まるかもしれないですから。
松島:いましたね。営業や技術は東京から通いでしたけど,建設の監督関係スタッフは長丁場の案件ですから新潟に転勤して現場管理を行っていました。
松島:ワイヤーソーで切り出すのも繊細な作業なんですけど,きれいに切り出したコンクリートとポンプを開口部を通して上に引き上げるんです。屋外に引き上げたら,今度は産業廃棄物処理の関係で,鉄とコンクリートを分けなきゃいけないんですよ。ほぼ重機と人力で壊すような感じで,手間と時間のかかる作業なんです。
松島:それはだいじょうぶです。小さく分けた部品を運び込んでから組み立てますから。そうしておかないと搬入の際にトラックで運べないですから。
撤去が終われば,据付けはその逆でやっていくので,スムーズに進みました。
松島:タイトなスケジュールでしたね。1年目は1台を据付けるまで余裕がありませんでした。最後の6台目ではだいぶ慣れてきて,最終年では2週間ぐらいスケジュールに余裕がありましたけど,1年間の工事で余裕が2週間っていうのは何があるかわからないので,安心できるとまではいえませんでした。大変な難工事でしたが,日々のタイトな施工工程を積み重ねた結果により無事に6台すべて指定工事期間内で作業を終え,かつ無事故無災害で厚生労働省労働基準局より局長表彰をいただきました。
松島:冬の日本海の荒波が見える場所なんですよ。新潟の冬は荒天が多くて,風が強いです。とにかく寒いので,屋外作業の安全には気を使います。既設のクレーンは運転台で操作するタイプでしたが,更新では無線式にしました。
水面下の作業も多くて,止水壁や角落し(かくおとし)というものを作って水を遮断するんですが,これも油断できない。
予想外だったのは,撤去時にコンクリートの中から図面に載っていないガス管が出てきたことです。土木建築躯体は建設時(昭和40年代)に当時の土木建築業者が施工したもので建設図面に反映されていない部分があったんです。図面にないものは,掘り出すまでわからないんです。
稲垣:事業管理部の業務の一つとしては,搬入する機器の工程の調整などがあります。どちらかというと,地味に,縁の下の力持ちみたいに工事を支えています。
たとえば,ポンプをいつ現場に入れるか,配電盤をいつ現場に入れるか,といった調整・管理をやっています。物が大きいですから,運ぶためのトレーラーも特車(特殊車両)といって相当大きい特殊なもので台数が限られているので,現場の工程に合うように調整,手配を行いました。
新川河口は,非常に工期がタイトで,現場に入るとイレギュラーのものが出てきたり,他の工事の影響で,工程が二転三転しましたから,最初はかなり苦労したようです。機器の搬入計画の組み替えもけっこうあったようです。
工事の現場の方と密に連絡を取り合って,工場や業者と調整をして,現場の要望に合わせた機器搬入を行うことで,短い工事工程での作業完了に陰ながら貢献できたと思っています。
また,事業管理部には品質保証という業務もあります。特にこの現場ではポンプケーシングの現場溶接があり,ポンプ取扱液はほぼ海水に近いので溶接確認に細心の注意を払う必要がありました。溶接を得意とする当社袖ヶ浦工場所属の現場溶接に精通した検査員の力を借りながら全箇所の現場溶接部の確認と補修指示を行い,施工品質を確保しました。高い品質の設備を作り,施工計画どおりに工程を調整することがお客様の評価になります。
太田:2つめは,印旛機場といって,千葉県の印旛沼の北部調整池から長門川に通って流れてきた水を利根川に排水する機場です。印旛沼もかつては「あばれ沼」と言われていたくらい水害を起こしやすかったんです。それで第二次大戦後,印旛沼周辺の洪水を防ぎ,印旛沼から水道水,工業用水,農業用水を安定して供給するための開発事業が始まって,その一環として1959年に完成しました。
それから40年以上たって,設備が老朽化して機能が低下していたので,2003年から2006年にかけて改修工事を行いました(図3)。
図3 印旛機場ポンプ室 改修工事前(左)と改修工事後(右)<sup>3)</sup> ポンプの形が変わって,ポンプ室の様子もすっかり変わっている
内田:そうなんです。ここもコンクリートケーシングで,ポンプをワイヤーソーで切って1台ずつ取り出しました。横軸の新川河口と違い,立軸のコンクリートケーシングポンプで切り出したコンクリートケーシングの部分は,そのまま上に抜けばいい施工がやりやすい構造でした。この機場の特徴は,電動機とポンプの型式・構造を既設からガラッと変えたことで,これがこの機場の技術ポイントだと思います。
内田:既設では多極式の立軸同期電動機が採用されていて,今では製作されていないということもありましたが,維持管理性や停電時における機能確保などが考慮され,立軸同期電動機駆動だった6台を横軸の誘導電動機3台とディーゼルエンジン3台という構成に変更しました。
ポンプも効率を上げつつ,コストは削減し,しかも信頼性を向上するためにガラッと変えています。ポイントは,図面をよく見るとわかると思うんですが,既設ポンプの吸込口と吐出口の位置を変えずにポンプの構造を変えたところです(図4)。吸込口と吐出口の位置を変えなければ,既設の土木・建築の部分をそのまま使えるので,更新コストの削減,工期短縮につながります。
図4 印旛機場の旧ポンプ(左)と新しいポンプ(右)の断面図<sup>3)</sup> ポンプの形は異なるが,吸込口(赤丸)と吐出口(青丸)の位置はまったく同じ
ここも生きている機場なので,毎年2台ずつ,3年かけて改修したんですが,非出水期に2台交換するというスケジュールは,やはり大変でした。たしか,設計も現場にほぼ常駐していましたよ。
内田:「外郭放水路」は,2006年に新規に完成した排水設備です。今回の座談会のテーマである「更新」ではなく「新規」のポンプ機場になりますが,日本を代表する排水機場ですので紹介させていただきますね。
防災のための「地下神殿」としても,テレビでもよく紹介されている埼玉県春日部市にある有名な排水機場で,機場名は「庄和排水機場」といいます。テレビだけでなく,一般の方も見学できる設備になっています(図5)。
図5 外郭放水路の『地下神殿』 大雨が降って水害の危険が迫ると,5つの河川の水が全長6.3 kmの放水路を通って,この調整水槽に流れ込む 《写真提供:国土交通省 関東地方整備局 江戸川河川事務所》
国交省主導のもと多くの最新鋭の技術で設計された排水設備で,今までに例のない排水設備・ポンプ機場になっています。
洪水被害の多かった中川・綾瀬川の流域の水害を軽減するために,5つの河川から水を地底約50 mの地下放水路に取り込んで,末端に設置された巨大な4台のポンプで江戸川に排水しています。そして,そのポンプを動かしているのは飛行機に使われるようなガスタービンを改良したもので,その出力は10000 kWを超える日本でも超ド級のポンプ場なんです。
排水能力で言えば,1秒間に50 m3排出するポンプが4台あって,4台のポンプが運転すれば1秒間で200 m3,小学校の25 mプール一杯分が排出できてしまう能力を持っているんです。
内田:すごく排水能力が高いポンプ場なんですが,ポンプそのものはずいぶん小さくしているんです。従来のポンプとはまったく違う新しい形のポンプを作って機場そのものの大きさもコンパクトにしています。
図6の右側の立坑(たてこう)に水位上昇した川や水路の水が流れ落ちてきて,その下の直径10 mのトンネルみたいな地下河川に水が貯められ,そして,どんどん水位が上がってくると,今度はポンプを使って江戸川に放水するんです。
こういう新しい排水形態である逆サイホン形式やポンプの小型化・高流速化などがあって,排水の信頼性と設備全体の低コスト化がはかられています。ポンプの小型化・高流速化にあたっては,ポンプの高いハイドロ技術と合わせ,振動解析技術や流体解析技術など,荏原の総力の結集だと思っています。たまにニュースで,この外郭放水路や庄和排水機場が活躍して,浸水被害は無かったなどの話を聞くと,誇らしく,自慢をしたくなる機場です。
図6 外郭放水路の断面図<sup>4)</sup> 右上の5本の立坑から水が流れ込むと,右下のトンネルに水がたまり,水位が上がると左上のポンプで江戸川に排水される。
内田:単純に小型化をすればよいというものでもなく,高い効率で安定した運転・運用を約束できるものにしなくてはなりません。ポンプって,ちょっと小型化すると効率にも影響してきますし,キャビテーションという流体特有の現象も起きてしまうので,高い技術力やノウハウをベースにしたいろいろな解析技術と設計力がないとできないんです。
太田:「横芝揚水機場」は,水資源機構という独立行政法人の依頼で,2015年から2020年にかけて更新した機場です(図7)。
図7 横芝揚水機場内部の全景 《写真提供:(独)水資源機構 千葉用水総合管理所》
ここは「揚水」機場,水を上げる機場なんです。
房総半島には水源が少ないので,水道用水や工業用水を供給するために,「房総導水路」という約100 kmの水路を作って,利根川から南房総の大多喜町まで水を運んでいるんです。房総半島を横切って,東京湾岸の工業地帯まで送り届ける壮大なプロジェクトです。いくつもの揚水機場を使ってだんだん高い位置に汲み上げては導水路に流してということを繰り返して水を運ぶんですね。横芝揚水機場は,利根川から取水して栗山川が運んできた水を45 m汲み上げて,房総導水路に流すんです(図8)。
図8 房総導水路断面図<sup>6)</sup> 利根川(左)の水を,赤い矢印の方向へ,いくつもの揚水機場で汲み上げて,高地に移動する。赤い丸が横芝揚水機場。 《水資源機構 千葉用水総合管理所 房総導水路管理所HP <a href="https://www.water.go.jp/kanto/bouso/02dousuiro/danmen.html">https://www.water.go.jp/kanto/bouso/02dousuiro/danmen.html</a> 》
内田:1977年に完成してから,40年以上経過していたポンプ機場です。
ここは,水道・工業用水を扱うため,水の需要に合わせて流す水を管理してるので,365日稼働するのが条件で基本,運用・制御設備を止められないんです。そこで,運用される方の支障とならないよう,設備をなるべく止めないように機器の更新,切り替えを行う時などは,仮設の盤などを設けて1台ずつ更新するとか,すごく配慮した更新をしました。
ポンプだけでなく,電気・制御設備のほうにも非常に気を使った工事でしたね。
更新する機器については省エネ・維持管理コストを低減するため,ポンプは既設よりも効率の高い両吸込の渦巻ポンプで更新し,制御方法も効率の良いインバータによる回転速度制御を採用しています。
松島:電気設備の切り替えが施工上の重要課題でした。既設の特高(特別高圧電力)の点検や電気設備の点検のときは機場全体が停電になりますので,それに合わせて切り替えないとダメだというタイムスケジュールがすごく重要な仕事でした。精神的には苦労しましたね。
稲垣:確かに既存設備を稼働しながらの工事だったので,限られた時間で電気設備の切り替えを行うのがポイントでしたね。仮設盤を準備するなど,時間短縮化に苦労した現場でした。
更にはコンクリート製水槽に埋設された吸込ベルマウス管が撤去できず,既設管を途中切断し,そこに新しい吸込ベルマウスを現場で溶接する方法を採用することにしました。松島さんの建設部門と協力し既設配管の腐食状況の調査と補修,吸込機能を確保しながら溶接方法を検討し実施しました。
太田:横芝は,常時ポンプを回してるので,入札のときも,ポンプ効率をどれだけ上げられるかが競われていました。そこで,荏原もポンプの流体解析技術を駆使して,ポンプ効率の向上を目指しました。流れにロスをなくして,スムーズに流れれば,電力も使わなくなります。そういうシミュレーションも当社は得意なんです。
内田:糠田排水機場は,もともと横軸ポンプだった既設ポンプを立軸に変えて更新したという例です(図9)。
図9 糠田排水機場の断面図<sup>5)</sup>
この場合も建屋を生かしながらの更新でしたので,ポンプは1台ずつの更新としました。
既設は横軸ポンプで真空ポンプで水を吸い上げてポンプ内部を満水にしてからでないと主ポンプが始動できないため,補機設備として満水系統機器が必要になることと,排水するまでに時間がかかるという課題などがあり,維持管理性向上としての設備の簡素化や操作性向上などから立軸ポンプに型式を変えての更新となりました。それに加え,台数やポンプ吐出量の割り振りを変えて,排水機場としての総排水量を増量するという更新工事でした。
ポンプの流量や割り振りを変えると,ポンプ吸い込み側の水路の流れが偏流したり,流速が早くなったりして,ポンプの運転に支障を及ぼす渦が発生しやすくなるんです。お風呂のお湯を抜くときに,ゴボゴボゴボってできるあの渦のすごく大きいものが発生するというイメージです。そういう渦ができると,ポンプが空気を巻き込んだ渦を吸い込んで振動や故障につながってしまうんです。当社は,ポンプをずっとやってきているので,この渦の知見にも自信を持っています。
普通はポンプの周りだけ,流れ解析する場合が多いんですけど,今回は武蔵水路という水路から来た水が遊水池を経由して,急に曲がるような感じでポンプ場に入ってくるので,ポンプ周りだけでなく遊水池へ流入も含めた広範囲な流れの確認が必要と考えました。3Dによる流れのシミュレーション(図10)を利用して,偏流はしていないか,渦は発生しそうか,渦の発生が予想される場合どのような対策が効果的か。そういう検討をした上で,さらに模型水槽試験による検証を行って,渦対策を決定しています(図11)。
図10 遊水池を含めたポンプ吸水槽流れ解析結果<sup>5)</sup>
図11 遊水池を縮小して再現した模型水槽<sup>6)</sup>
渦の対策については,水路や池の形は変えられないんで,基本,ポンプ場側で対応するしかないんです。そういう時に,ポンプメーカとしてどういう対策をするかっていうのが,ポンプ屋の腕の見せ所になるんです。
内田:「三領排水機場」は,1968年に埼玉県の菖蒲川が荒川に合流する地点に作られました。戸田市や川口市,その周辺の洪水被害を防ぐために作られた機場です。2009年12月から2012年3月にかけて,約2年半の更新工事を行いました(図12,図13)。
図12 三領排水機場の断面図<sup>7)</sup>
図13 三領排水機場に設置されている更新前(左)のポンプと更新後(右)のポンプ<sup>7)</sup>
ここには,エンジンポンプが3台と電動機駆動のチューブラーポンプという横軸ポンプがあったんですが,電動機が水中の高圧モータという特殊なものであったため,維持管理性などを考慮しチューブラーポンプを廃止し,残りの3台のエンジン駆動ポンプの排水能力をアップをすることになりました。
3台で今までの4台分の排水を行うってことですね。
この排水機場も新川河口排水機場や印旛機場同様にコンクリートケーシングポンプなので,一般的にはポンプを交換するときは,ポンプのケーシング,この写真でいうと床下の部分も更新します。しかし,この機場はコンクリートケーシングの劣化はあまり見られなく,継続使用が可能であったことから,床下のケーシングはそのままで回転体だけでの増量・更新を行いました。
流用する既設のコンクリートケーシングと,新たに製作した羽根車などの回転体の現地での組み合わせには,組立精度が重要になりますので,ここではレベル(水平)調整を考慮した樹脂剤を用いた工法を使いました。
松島:「セルフレベリング」っていうんです。床に水を流すとその表面は平らになりますよね。そういう流動性が高い樹脂を床に流して固まらせるんです。ポンプの設置には,水平って重要なんです。
太田:ポンプって,ケーシングの形が決まるとなかなか性能を変えにくいんですけど,これも解析技術を駆使して,回転体だけを変えて,増量,さらには効率アップまでをはかったんです。
荏原のポンプ技術が光ったと言うか,自信を持って提案できました。
内田:「大更新時代」の特徴の一つです。
1970年代や80年代というのが,国が治水対策を大々的にやっていた時代で,その時期にたくさん作られたポンプ場が,今,老朽化して更新の時期を迎えているんです。これが,「大更新時代」と呼ばれています。当社は,その中でも,いちばん納入実績が多いですから。そういう更新や整備・改修の対応が多いんです。
昔はコンクリート構造物は半永久的に使えるものだと思われていた頃もありましたが,補修などを行っていけば,だいたい耐用年数は100年程度だと言われています。でも,稼働するポンプなどの機械や電気設備は,20年から30年,よくもったとして40年くらいのものなんです。
また,新しくポンプ場を建てようとしても都市化の影響で土地が確保できない。それで,土木・建築躯体はそのままで,ポンプなどの設備だけをリニューアルすることが多いんです。
ただ,今,まさに使われている施設なので,その運用を止めるわけにはいかない。常時,水を供給しなければいけない施設もあるし,台風や集中豪雨のときだけ運転する施設も台風や雨が降りやすい出水期は待機していなければならないので工事はできない。
新設するときとは違って,何台もあるポンプを1台ずつ取り換えたり,それを非出水期の間にやらなければいけない。
そのためには,施工期間を短くする技術も必要になってきます。
もちろん,せっかく更新するんだから,性能アップや運転費の削減といったお客様の要望にも応えたいですよね。技術は進化していますしね。
太田:ここからは,内田さんにシステム事業部の技術というか,イチオシ商品をご紹介してもらいましょう。まず,「楽々点検ポンプ」から。
内田:はい。河川の排水用に多く使われる立軸ポンプですが,このポンプの形だと一般的にポンプの下の方に羽根車があって,その少し上に軸受というものがあるんです。この軸受で回転体を支えていますので,消耗部品として定期的に引き上げて交換しなきゃいけないんですけど,なにしろポンプが大きいのでこれを引き上げて,分解して,軸受を交換するとなると大工事になるんですよ。
軸受ってゴムや樹脂の摩耗しやすいものもあって,そう長く使えるものではないんです。放っておくと軸受が壊れて,ポンプの復旧ができなくなるような大事故につながることもあります。
そこで従来の一般概念を捨てて,羽根の下に軸受を持ってこよう,下から潜り込んで軸受を外せるようにしちゃいましょう。という発想から生まれた技術です(図14)。
図14 従来ポンプ構造と楽々点検ポンプ構造 従来の縦軸ポンプ(左)では中央にあった軸受を,ポンプ下部に移動した「楽々点検ポンプ」(右)。 大工事なしで,下から入って(青矢印)軸受の点検や交換ができる。 《当社HP 製品紹介 楽々点検ポンプ <a href="https://www.ebara.co.jp/pump/system-business/solution-technology/information/rakuraku.html">https://www.ebara.co.jp/pump/system-business/solution-technology/information/rakuraku.html</a>》
こうすると,ポンプの大きさにもよりますが,従来20日ぐらいかかっていた軸受の交換作業が1日か2日で終わるんです。もちろん,作業費も格段に安くできます。
これは,排水機場に使われることが多いんですけど,軸受の点検・交換のために,20日間もポンプを停止するわけにはいかない。その間にゲリラ豪雨が来たらどうするんだといったニーズもあるんです。精度がよくなった天気予報でも20日先を予測するのは難しいですしね。
内田:10年でオーバーホールが基本的な考え方です。10年ってあっという間に経ちますし,お客様の方で大掛かりな引き上げ工事の予算を付けることがなかなか難しいという現状もあるようです。
内田:わたしたちシステム部門とポンプ設計部門で,ずーっと悩みに悩んで,ぱっとひらめいた結果です。立軸ポンプの羽根車の下の部分って,水の入り口で羽根車への流れに影響するところなので,あんまり余計なものは付けたくない部分なんですが,多少の損失は羽根車の性能を上げてカバーすればいいでしょうって,社会のニーズを実現するためのトレードオフの部分は,設計技術でカバーするというポンプ設計部門との協働成果です。
内田:私も発明者の中の1人です。システム部隊で発案してポンプ設計の協力を得て,作り始めてから,これ特許取れるかもねって話になりました。私が特許の原案を書き,当社の知財部門のアドバイスを頂いて,特許庁に出願し,最終的に特許登録となりました。今は,お客様に提案する技術として,社内外での認知度も高くなりましたが,実はこの楽々点検ポンプは,最初はあんまり認知されていなかったんです。
稲垣:楽々点検ポンプはメンテナンスの省力化と費用低減に貢献するので「総合評価方式」案件で提案すると高い評価がもらえるようになりました。
内田:今では,お客様にも認知されるようになって,実績もかなり増えました。第1回のインフラメンテナンス大賞(国土交通省)では,国土交通大臣賞をいただきました。
開発に携わった技術者の一人として,本当にうれしかったです。
太田:つぎは,「フレキシブルベース付ポンプ」(図15)。
図15 フレキシブルベース付ポンプ 大工事を行わずにポンプの水平を調整できる。 《当社HP 製品紹介 フレキシブルベース付ポンプ<a href="https://www.ebara.co.jp/pump/system-business/solution-technology/information/flexible-pump.html">https://www.ebara.co.jp/pump/system-business/solution-technology/information/flexible-pump.html</a>》
内田:これも日の目を見るのに,時間がかかったんですよ。
ポンプって繊細な機械なので,水平に設置されていないと,軸受に負荷がかかって故障してしまうんです。だから,傾いたら水平に戻さなきゃいけないんですけど,これもポンプを引き上げて設置し直す大工事になってしまうんです。
それで,「なんとかならない?」みたいな話を新潟のお客様からいただいたのが,開発のきっかけで,悩みに悩んでこういう構造にしました。
新潟は,もともと「潟」の地域ですので,地盤が緩いところが多いんです。建屋は,杭を打ったりして傾きにくいようにしてるんですけど,地震とかあると傾いてしまうことがあります。
私たちが扱うポンプなどの回転機械は,非常に繊細な組立・据付が要求される世界で,水平度や偏心などは100分の1 mm単位で調整しています。地震などの天災に対しても,土木設計にその精度を確保してもらうのは現実的ではありませんので,機械側でフレキシブルにやるしかないって言って作ったのがこれです。
これも最初はあんまり認知されなかったんですが,総合評価方式の入札で提案し始めたときに,東日本大震災やその後も地震が続いて,地震対策としてのニーズが高まったんですね。
太田:昔は,研究開発した技術って,特許技術でもあって,世の中にあまり広めないで隠し玉として,もうちょっと持っておこうよっていうのがあったんです。けれども,入札が総合評価方式になってから,当社の地道な研究開発要素がどんどん点数化され,競争力につながるようになったんです。営業はずっと,せっかくの技術なんだから,ひけらかしたい,どんどん提案しようよっていうスタンスだったんですけどね。
自社オリジナルの技術を蓄える時代から,より広くお客様に使っていただく時代への変化を切り拓いたのが,この「楽々点検ポンプ」や「フレキシブルベース付ポンプ」だと思います。
内田:ポンプというのは,川や水路などの吸い込む水の水位(高さ)が低かったり,排水量を上げるとそこで発生した渦が空気を巻き込んで,ポンプ吸い込み口からポンプ内部に入ってしまう。そうすると,ポンプが異常振動を起こしたり,故障したりするんです。そのため,この水位以上であれば,運転しても大丈夫と言う水位が設定されています。
それを今までの設定よりも,低い水位でも運転できる,排水量を増やしても運転できる,そういう立軸ポンプを開発したということになります。
横軸ポンプで開発した渦対策用ベルマウスの特許技術や,解析技術,渦対策に関する実績や今までの実験データなど,多くの知見を合わせて,この「えも言われぬ形状」を作り出したんです。もちろん,完成までには,試行錯誤を重ねて,何十ケースもの実験もを行っています。
図16 運転水位が低くても稼働できる「ポンプラス」のえも言われぬ形状<sup>8)</sup>
内田:「先行待機型ポンプ」は,昔からあるポンプでいろんな方式があるんですが,いちばん有名な全速全水位型は,水と一緒に空気も吸わせることを許容させたポンプなので「水が無い空(から)でも,どんな水位でも回せるけど,水位によっては振動が大きく,効率も落ちるよ」っていうポンプなんです。
既設のポンプをこの先行待機型にすると,振動による建屋への影響もあるし,効率が落ちることで電力費や燃料費がかさんでしまいます。また,効率が落ちることでエンジンなどの駆動機の出力が大きくなると,機器重量が増えて土木・建築躯体の耐荷重の問題も出てきます。
先行待機は,ゲリラ豪雨等で急激に水位が上昇してしまったときに,エンジンの始動失敗などで始動・運転が間に合わないというのを防ぐのが目的ですので,振動が発生するような水位条件においては,エンジンは運転しているけどポンプは回さない,効率は落とさないというクラッチ方式も提案しています。
これは,油圧クラッチなどを使って,クラッチのオン・オフをゆっくりつないで,ゆっくり離す。車の半クラッチをポンプで再現したようなイメージです。そういう制御を加えることでポンプの振動や効率ダウン等のマイナス要素を無くし,信頼性の向上,機能向上を実現するというものです。
これから営業さんに売り込んでほしいポンプのひとつです。
稲垣:そうですよね。特に都市下水の雨水排水においてはこの技術が活用されている事が多くなっています。まさに大都市に適したポンプなんです。
太田:「楽々点検ポンプ」と「フレキシブルベース付ポンプ」は,既存のポンプ場で使われていくものですけど,「ポンプラス」や「先行待機型ポンプ」は,昨今の激甚化した雨や気候変動に対応していくためのポンプ機場のリノベーションなんです。これからさらに必要になってくる技術です。
内田:「排水ポンプ車」(図17)は,新潟県中越地震の土砂でできたダムや東日本大震災のときにニュースなどで見た人もいると思うんですが,トラックにポンプと操作制御盤,発電機,その他排水作業に必要なものを全部載せた「移動する排水機場」というようなものです。
図17 排水作業に必要なものを全部積んだ「排水ポンプ車」 《当社HP 製品紹介 排水ポンプ車 <a href="https://www.ebara.co.jp/pump/system-business/drainage-pump-car/information/drainpump.html">https://www.ebara.co.jp/pump/system-business/drainage-pump-car/information/drainpump.html</a>》
このトラックで駆けつけて,ポンプにフロートとホースを付けて,冠水してるところに放り込むと排水できるという災害対策用の車両です(図18)。
図18 「排水ポンプ車」を使った現地での排水
単純にポンプを積み込んだポンプ車は,昔からあるんですが,排水能力や機動性の課題があったんです。
震災で道が崩れると,大型車両は通れるところが少なくなるので,「なるべく小さな車に,なるべく大きな排水量のポンプを」というニーズにこたえるため,ポンプメーカが作ったのが当社の排水ポンプ車です。
搭載するポンプは,小さく,荷下ろしが容易で,多く排水できるものが必要であり,「超軽量ポンプ」という排水ポンプ車搭載用のポンプを開発しています。車からの荷下ろしを一人か二人でできるようにポンプの重さを型式にもよりますが,20~35 kgに抑えました。大きさは,従来の同じ排水量のポンプに対して約10分の1です。
これだけコンパクトなポンプにしたことで,小回りがきいて機動性がある4トンや8トンのトラックに大きな排水ができるポンプのセットを一式載せることが可能になりました。
見た目よりずっと容量が大きいので,早く水を引きたいっていうときに役立ちます。浸水被害地の水を堤防の向こうの川に排水したいとか,田んぼの水を引かせたいとかそういうときに力を発揮します。
内田:主には国土交通省で,ポンプとして数百台を所有していると思いますが,最近は,地方自治体や農林水産省も持たれているようです。
太田:国土交通省が主導する「マスプロダクツ型排水ポンプ」の技術研究にも参加しています。コストダウンしつつ効率的で効果的に河川ポンプを更新するために,小型で汎用のエンジンとポンプで排水施設を作れないかという技術研究です。
稲垣:大型の排水機場は,ガスタービンという航空機のエンジン並みの動力や船舶用の大型エンジンで特注のポンプを動かすことが多かったんですが,それを自動車用の小型エンジンを利用してマスプロダクツ化する試みですね。
内田:当社は,これまでに全国で1 000か所以上の排水機場を納入しています。そのすべての機場について,納入した製品や設計のデータを持っていて,いつでも飛んでいける体制を整えていますが,これらの多くが老朽化が進んで,設備のリニューアルが急務なんです。
今,運用されているこれらの設備を生かしながら更新するには,既設の設備を熟知していて,しかも,設備の運用への影響を最小限にする設計技術と施工管理能力が欠かせないと思っています。現在,国土交通省が進めている「マスプロダクツポンプ」を含めて,今後もこの大更新時代を乗り切るための技術の研鑽,開発に取り組んでいきたいと考えています。
松島:会社の企業イメージ向上や人材育成にも注力していきます。社会システム建設部では,多様な人材が働き甲斐と働きやすさを感じながら活躍し,当社が掲げている「競争し,挑戦する企業風土」を具現化するため,女性技術者が現場で働きたくなるような環境づくりを行い,女性活躍の支援活動を行っています。
入社後に資格を取るサポート制度があって,機械系専攻者でなくても工事の技術責任者に必要な機械器具設置工事の監理技術者資格が取れるようにバックアップを行っています。SNSを活用した現場技術者間での情報共有,アンケートをとって建設現場の環境改善も取り組んでいます。我々は建設現場の女性技術者をもっと応援したいと思っていて,親しみやすい愛称がほしいよねと。その思いを込めて「清流こまち」という愛称が社内公募で決まりました。
東京都魅力ある建設事業推進協議会(CCI東京)が主催している「若手技術者・女性技術者 活躍大賞」という賞があります。第1回(2020年)に当社技術者が「女性技術者活躍大賞」に選ばれました。2019年度に当社が施工した「東京都下水道局 東糀谷ポンプ所高段汚水ポンプ設備2号改良・補修工事」の監理技術者兼現場代理人としての活躍が評価され企業イメージ向上につながりました。もっと「清流こまち」を増やしていきたいですね。
内田:これからも機械・電気・制御設備などの総合技術の提案から,設計,調達,工事,アフターサービスまで,ワンストップで提供できる総合力を活かしながら,インフラ設備のさらなる安全・安心に貢献していきます。
また,技術開発については,今後もポンプ設計部門,工場などの関連部門の協力を得ながら,社会のニーズにこたえられる技術の開発・提案を継続していきます。
稲垣:ここで忘れてはいけないことは,実際にポンプを製作する生産側のバックアップがあってこそだと思っています。我々は工場を待たない事業体ですので,最良のポンププラントを納入するためには,ポンプの生産・設計において他事業部の力も必要となります。今後もこれら関連部署とも強く連携していきたいと思います。
これまでお話してきた機場は日本を代表する機場や超難工事の機場ばかりですが,何十年と裏付けされた荏原の技術力や実績が礎になっていて,最終的にそれが顧客への信頼や信用に繋がっているんでしょうね。今後も営業部,技術部,建設部,事業管理部の4つの部がスクラム組んでワンチームとして事業活動を続けていく必要があって,それが荏原の強みですね。
人々の生命や生活を守る使命感は事業を遂行していく中でこれからも変わることはないですよね。一方で今後あるかもしれない市場の変化において高くアンテナを張り,臨機応変に対応していくことで業界トップとして社会貢献をし続けていきます。
備考)本記事は社外ファシリテーターがインタビューを行い,編集したものです。また内容はインタビュー当時のものです。
1) 高部哲男・大澤博之・清水栄・工藤嘉夫:よみがえれ越後平野(新川河口排水機場ポンプ設備更新工事-第1報),エバラ時報,No.240,p.15(2013-7).
2) 工藤善夫・武田秀康・大澤博之・小宮誠:よみがえれ越後平野(新川河口排水機場ポンプ設備更新工事-第2報),エバラ時報,No.249,p.22(2015-10).
3) 山口弘史:印旛機場ポンプ設備改修工事,エバラ時報,No.214,p.15,18(2007-1).
4) 高部哲男・前真治・榎本隆・前原隆史:外郭放水路排水機場(第1報)-ポンプ設備工事の概要-,エバラ時報.No.183,p.71(1999-4).
5) 藤井宗俊・江藤文宣・瀬川直人・山田浩一:武蔵水路糠田排水機場ポンプ設備改修工事(更新工事の概要・流れ解析の検証),エバラ時報.No.252,p.58,68(2016-10).
6) 江藤文宣・趙令家・大和田典彦:武蔵水路糠田排水機場ポンプ設備改修工事(更新工事の概要・流れ解析の検証),エバラ時報.No.240,p.25(2013-7).
7) 大澤博之・清水栄・立花浩一・轡田敏幸:既設コンクリートケーシングを用いたポンプの排水能力アップ(三領排水機場ポンプ設備更新工事),エバラ時報.No.237,p.65,66(2012-10).
8) 清水修・小宮真・平田和也:「ポンプラス/PUMPlus」の紹介,エバラ時報.No.257,p.14(2019-4).
藤沢工場ものづくり50年の歴史
1966年頃の藤沢工場
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