地球環境は、人類や地球に生息するあらゆる生物、生態系の基盤であり、企業活動は健全な地球環境無くして継続できません。
荏原グループでは、気候変動は世界が直面している重大な課題であると認識し、2019年にTCFDを支持する署名を行いました。ステークホルダーとの対話を通じて、気候変動に関する取り組みと情報開示の継続的な改善を行っています。TCFDによる企業の気候関連情報開示モニタリング機能が2024年にIFRS® サステナビリティ開示基準S2号気候関連開示(以下、IFRS ® S2)に引き継がれたため、IFRS® S2の開示基準を参照して2025年6月時点での情報を一部更新しました。
気候関連開示(TCFD提言)
気候関連開示(TCFD提言)
気候関連のガバナンス
気候関連に対する取締役会の監督
取締役会は、当社グループがESGを踏まえた高度なサステナビリティ経営を実践し、SDGsをはじめとする社会課題の解決に事業を通じて持続的に貢献することで社会・環境価値を向上させ、あわせてROIC経営・ポートフォリオ経営の実践により、経済価値を向上させていくことが重要な経営課題であると認識しています。取締役会は、当社グループがそれらを実践することで持続的に成長原資を生み出し、さらなる価値創造へつなげていくことができるよう、長期の事業環境を見据えた経営の基本方針を策定し、その継続的な実行を監督します。当社は、この考え方を「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」に定め開示するとともに、この考えを確実に実行するため、サステナビリティ委員会を設置しています。そのうえで取締役会として議論すべき気候・自然関連・人権・人的資本などをはじめとするサステナビリティに関する審議を取締役会の年間議題に組み込み定期的に必要な時間を確保した上で様々な観点から議論を行っています。取締役会では執行の対応の具体化と推進に向けた議論を行い、その結果をサステナビリティ委員会へフィードバックしていく仕組みとなっています。 取締役は、サステナビリティ委員会に陪席する中で、執行のサステナビリティに関する取組状況を把握し、必要に応じて客観的な立場より的確な助言や後押しを行っています。また、当社は非財務目標の達成を後押しする仕組みとしてESG評価指標の評価項目に気候変動を採用し、役員報酬に連動させる制度を導入しています。
サステナビリティ・ガバナンスの詳細については、こちらをご覧ください。
サステナビリティ委員会による気候関連の取り組み推進
社会、環境並びに当社グループのサステナビリティに資する活動の対応方針、戦略、目標及びKPIを審議し、成果の確認及び見直しを行う会議体として、サステナビリティ委員会を業務執行の一機関として設置しています。サステナビリティ委員会は代表執行役社長を委員長とし、全執行役が委員を務め、サステナビリティに関する社外有識者がアドバイザーとして参加しています。気候関連の活動方針、戦略、リスク管理・指標/目標はサステナビリティ委員会で審議しています。気候変動に対する取り組みが当社グループの長期ビジョンE-Vision2030のマテリアリティの一つとして経営の重要課題であることを経営層全員で共有しています。気候関連の戦略に関わるリスク・機会の特定を含む対面市場ごとの気候関連シナリオ分析はカンパニープレジデントの責任の下で行い、各カンパニーの戦略に反映されています。気候関連の取り組み成果は、執行役の報酬に反映されています。
サステナビリティ委員会に陪席する取締役から得た助言を活動に反映させるよう努めています。
リスクマネジメントパネル(RMP)による気候関連リスクへの取り組み
当社グループのリスク管理活動を統括し、審議、改善指導・支援を行う機関として、リスクマネジメントパネル(以下、「RMP」)を設置しています。RMPは代表執行役社長を議長とし、全執行役により構成しています。リスクアセスメントを定期的に行っており、気候関連リスクは起こりうる可能性と影響度が大きいと評価し、グループ重要リスクに特定しています。気象災害等の急性の物理的リスクの対応についてはRMPで審議しています。
経営会議・経営課題行動計画モニタリング会議
気候関連のリスク・機会が資産の処分、投融資などに関わる場合は、経営会議に付議する仕組みとしています。
中期経営計画の達成に向けた経営課題行動計画の進捗管理を行うモニタリング会議では、財務面と、気候変動を含む非財務に関する課題についてモニタしています。
非財務経営課題行動計画モニタリング会議は、代表執行役社長兼CEOが主宰しています。会議は年4回開催され、各カンパニーのプレジデントが担当事業の非財務目標達成に向けた施策の進捗状況を報告しています。3月と9月のサステナビリティ委員会において、全事業の非財務関連の活動の進捗が報告されるとともに、活動のレビューを行っています。サステナビリティ委員会での報告とレビューの結果は取締役会に報告しています。
ガバナンスに関する情報(2025年)新しいタブで開く
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気候関連ガバナンス体制図

戦略
当社グループは、パリ協定が掲げる2050年カーボンニュートラルの世界を目指し、気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響を以下のプロセスで対面市場ごとに検討しています。建築・産業設備市場向け事業、エネルギー市場向け事業、水インフラ市場向け事業、固形廃棄物処理市場向け事業、半導体製造市場向け事業の気候関連戦略をカンパニープレジデントの責任の下で中期経営計画の策定と同じ3年サイクルで見直しを行い、事業戦略に落とし込むこととしています。
各カンパニーによる分析結果と対応策を経営戦略担当の執行役の下で取りまとめ、サステナビリティ委員会への報告と、取締役会による確認により情報を開示しています。
2026年~2028年の次期中期経営計画における気候関連戦略策定のために、気候関連シナリオ分析の見直しを2024年10月から2025年4月末に行いました。見直しに当たってはIFRS ® S2 気候関連開示を参照しました。見直しの結果は、2026年からスタートする中期経営計画において考慮します。
気候関連リスク・機会の抽出と評価
気候関連のリスク・機会の識別するためのプロセスに関し、 IFRS ®S2を参照して2024年に見直しを行いました。当社グループの見通しに影響を与えることが見込み得る気候関連のリスク・機会の見直しを中期経営計画の策定に合わせて3年ごとに行っています。2026年からスタートする中期経営計画に気候関連戦略を落とし込むことを目的として、主要な対面市場ごとの気候関連リスクと機会を見直しました。分析の対象とした市場および事業は、建築・産業設備市場向け事業、エネルギー市場向け事業、水インフラ市場向け事業、固形廃棄物処理市場向け事業、半導体製造市場向け事業です。
前回の分析では主要対面市場としてオイル&ガス市場を設定しましたが、シナリオ分析の結果、オイル&ガス市場は次世代型のエネルギー市場へとシフトしていくと分析したため、オイル&ガス市場向け事業をエネルギー市場向け事業としました。
(2025年更新情報)

気候関連リスク・機会の特定
リスク項目と機会項目に関して、当社グループの事業活動に影響を与える可能性のある要素を対面市場ごとにISSBの産業別ガイダンスを参照しながら抽出し、「発生可能性(時間軸を含む) 」と「リスク・機会の潜在的影響の大きさ」の2軸で、それぞれを大・中・小で評価しました。評価基準の見直しを行い、当社グループの事業への影響の大きさに対して一定の基準を設けて評価しています。

以下の考え方で当社の事業活動への影響が大きい要素を抽出しました。
•「発生可能性」 時間軸において発生するリスク、機会をとらえました。
「短期」:次期中計期間(現在~2028年)
「中期」:当社長期ビジョンのターゲット年を含む2040年
「長期」:パリ協定のターゲット年 2050年
•「リスク・機会の影響の大きさ」
定量的又は定性的な基準を設定して評価しました。
定量的評価の基準として想定営業利益に対する影響度で評価しました。
定性的評価は事業存続や拡大に与える影響度合いで評価しました。

当社事業への影響の大きい気候関連リスク・機会新しいタブで開く
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シナリオ分析
重要度評価で特定したリスク・機会に対して1.5℃シナリオと4℃シナリオは、ビジネス・モデルおよびバリュー・チェーンにどのような影響が及ぶのかを予測しました。
変化する事業環境の下で、当社、顧客、政策/規制、調達先がどう変化するか。更に、新規参入者や代替品の出現可能性についてシナリオを描きました。
ビジネス・モデルおよびバリュー・チェーンに与える影響予測新しいタブで開く
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分析に用いた主なパラメータ(シナリオの情報源)新しいタブで開く
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気候関連のリスク及び機会が財務計画に及ぼす影響
重要度の大きいリスクと機会が財務に与える影響を評価しました。
当社グループの財務情報や信頼性、汎用性、入手のしやすさの観点で情報源の優先度を設定し、国際機関(IEA,IPCCなど)、各国政府、業界団体、調査会社などのデータを利用して気候関連の移行リスク、物理的リスクによって受ける財務インパクトを対面市場ごとに試算しました。2026年からスタートする次期中期経営計画への気候関連戦略の落とし込みを目的として、現在の事業が1.5℃シナリオ、4℃シナリオにおいて短中長期的に受ける財務への影響を見直しました。
気候関連のリスクおよび機会が財務計画に及ぼす影響新しいタブで開く
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気候関連のリスク及び機会を踏まえた戦略
財務インパクト評価の結果を基に、気候関連リスク・機会に対する2050年までの対応策を検討しました。
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4℃・1.5~2℃シナリオの財務インパクト
シナリオ分析に基づく気候関連の機会・リスクを加味していない各事業の2050年想定営業利益=100に対して、シナリオ分析に基づく気候関連のリスク・機会を加味した場合の「現事業」「対応策後」のギャップを示します。(2025年更新)
現事業:現状の製品・サービス、生産体制に気候関連のリスク・機会の影響を考慮した場合の財務インパクト
対応策後:対応策を講じた後の財務インパクト

リスク管理
気候関連のリスク・機会の管理
対面市場ごとに特定した重要な気候関連のリスクと機会は、中期経営計画のアクションプランである「非財務経営課題行動計画」と「経営課題行動計画」で管理しています。2023年からの3ヵ年における中期経営計画E-Plan2025では、気候関連リスク・機会を「非財務経営課題行動計画」で管理しています。
「非財務経営課題行動計画」は主に社会・環境指標(非財務)を管理するためのアクションプラン、「経営課題行動計画」は主に、経済指標(財務)を管理するアクションプランです。両計画の進捗は、代表執行役社長兼CEOがモニタリング会議を主宰し、各事業セグメントのカンパニープレジデントから受けた報告をレビューしています。さらに、サステナビリティ委員会において当社グループ全体として、E(環境),S(社会),G(ガバナンス)に関わる指標と目標に対する進捗状況を確認し、当社グループのサステナビリティ経営の活動方針を定めています。
「非財務経営課題行動計画」は気候関連の指標を含んでいます。E-Plan2025においては、顧客が当社製品を使用することによるCO2排出削減量(削減貢献量)や、脱炭素社会に向けた新製品の開発目標など、気候関連リスク・機会を含む非財務重要指標をモニタリングしています。「経営課題行動計画」は財務指標の進捗をモニタリングしています。
2025年に見直しを行った気候関連シナリオ分析の結果は次期中期経営計画(2026~2028年)の策定の際に考慮します。
指標と目標
当社グループの事業活動の社会・環境価値の側面を「非財務」と定義しています。社会や環境の価値と将来的に当社の財務に影響を及ぼす指標を非財務指標と定義し、CO2の排出量や削減貢献量は非財務指標としています。
2023年から2025年末までの中期経営計画E-Plan2025において、非財務指標と目標を設定し、社会・環境価値創造の進捗をモニタリングしています。2023年に策定した2025年までの非財務経営課題行動計画は、2030年の成果目標からのバックキャストによって2025年までの単年度ごとの目標を設定しています。気候関連シナリオ分析によって特定した対面市場ごとの気候関連リスクと機会に関する指標と目標は、非財務経営課題行動計画で管理しています。さらに、水素関連や陸上養殖システム、培養肉製造システムなどの新規事業も気候関連のリスク・機会を含む様々な社会課題解決に向け、事業化を目指しています。
カーボンニュートラルに向けた活動方針や、活動の進捗状況について2024年に開催された全4回のサステナビリティ委員会に付議しました。当社グループのカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの全体像を議論し、カンパニーごとのScope1,2削減見通しや、Scope3目標、SBT認定の取得、ICPの対象拡大、顧客のGHG排出削減への貢献目標や活動方針を決め、取締役会に報告しました。

マテリアリティ1「納入製品によるCO2削減貢献量 1億トン削減」の定義と算定ロジックの見直し(2025年6月時点)
本目標は、当社グループが2020年に発表した長期ビジョンE-Vision2030の成果目標の一つとして掲げました。
気候関連の指標・目標として、2024年に当社グループのGHG排出削減目標の見直しを行いました。『2050年にバリューチェーンにおけるカーボンニュートラル達成を目指す』『当社製品を通じて顧客のGHG削減をサポートし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する』という2つの方針の下に目標値を設定しました。
また、2025年5月にScope1,2,3の短期目標に対してSBTiの認定を受けました。
見直しの結果は2024年11月に行ったESG説明会において説明しました。荏原グループのカーボンニュートラルのサイトで詳細を公開しています。
気候変動に関わる非財務指標・目標
マテリアティ:当社長期ビジョンE-Vision2030におけるマテリアリティ。5つのマテリアリティを設定しています。気候関連のリスク・機会に直接的に関わるマテリアリティは3つです。
総合的なリスク評価と気候関連シナリオ分析によって特定したリスク・機会を含み、2030年までの指標・成果目標を設定しています。
(2025年6月時点)
