近年、地域や用途によりポンプの使用環境が多様化してきています。
荏原では、多様な環境(温度、塩分濃度など)における迅速なポンプ材料エンジニアリングのために、実験的アプローチに加え数値解析技術を適用しています。
また、腐食防止や機器の長寿命化のために、コーティング材料の開発にも取り組んでいます。
幅広い塩分濃度(3.5%~35%)および水温(10℃~110℃)の海水中の腐食性を調査し、フィールドデータの取得を行っています。
また流速の影響や異種金属接触の影響など、種々の腐食要因に関する知識や経験を保有しています。
この知見によって適切な材料エンジニアリングを実現し、世界各地への信頼性の高い海水ポンプの提供に役立てています。
世界中の海域にて腐食試験を実施
荏原は、境界要素法を用いた数値解析技術を東京工業大学と共同で開発し、防食設計や異種金属接触腐食※1対策に活用しています。
近年の計算機能力の向上とともに大規模解析が可能となってきており、流路の複雑な送水ポンプ内部やポンプ機場全体の防食設計が可能となってきています。
また、近年海水ポンプ材料として使用されているステンレス鋼は海水中でも優れた耐食性を有しますが、環境の変化などにより局部的な腐食が発生する場合があります。
特に、ボルト締結箇所などの金属板同士の合わせ面など、すきま部は腐食発生リスクが高く、すきま部のみが優先的に腐食(すきま腐食)することがあります。
そのため、荏原では腐食機構を深く理解することによる防食対策立案を目指し、東京工業大学と共同でステンレス鋼のすきま腐食の数値解析技術開発に取り組んでいます。
境界要素法によるポンプ機場のカソード防食解析
流動床ボイラの層内伝熱管は、層温制御や効率的な熱回収が可能になる一方、高温エロ―ジョン・コロージョンによって伝熱管の損傷が引き起こされます。
そのため、伝熱管保護のため自溶性合金溶射や肉盛りによる表面改質を行います。
荏原では、北海道大学や溶射施工メーカーなどと共同で、表面に凹凸形状を有する自溶合金皮膜を開発しました。
開発材は既存のコーティング材よりも優れた耐エロ―ジョン・コロージョン性を有し、機器の長寿命化を実現しています。
流動床ボイラ向け層内伝熱管用、耐食・耐摩耗自溶合金開発
※1 異種金属接触腐食:同じ水の中で、耐食性の高い材料と耐食性の低い材料を導通した状態で使用した際に、耐食性の低い材料の腐食が助長される現象
※2 エロ―ジョン・コロージョン:エロージョン(摩耗)とコロージョン(腐食)が同時に起こることで、それぞれが単独で発生する場合よりも著しく損傷速度が大きくなる現象