機械要素・振動音響技術

産業機械製品の運転時には必ず振動や騒音が発生しますが、過度な振動や騒音は、製品の故障を引き起こし、運転環境にも好ましくない現象です。製品の振動や騒音を低減する技術、さらには回転機械の性能や振動を左右する、軸受・シールといった機械要素の技術は、信頼性の高い製品を供給し続けるために非常に重要です。
当社の共通基盤技術として、機械要素・振動音響技術の研究開発に取り組んでいます。


ポンプ形態最適化技術

現在の産業界におけるポンプあるいは圧縮機などターボ機械の設計・開発過程では、動力効率の最大化に重きが置かれており、流路部分の形状およびその配置が決定された後、軸受・シールなどの回転部機械要素の詳細設計を行うのが一般的となっています。本研究では、効率に重点を置いた従来の設計方法から発想を転換し、信頼性(振動)やコストなどを重視した多目的最適化、流体・振動・構造などの多領域複合問題の最適化に加えて、最適化問題の設計空間を大きく広げる可能性がある形態最適化の研究を行っています。図は従来型の立軸遠心ポンプに形態最適化技術を適用した例であり、羽根車や軸受を従来では考えられなかった配置順序や位置に変更することにより、ポンプとしての性能を維持しながら振動低減とコスト削減を両立させた結果です。

形態最適化技術は(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究により開発された技術であり、当社では産業用ターボ機械への応用展開に取り組んでいます。

形態最適化によるポンプ部品配置の変化


立軸ロータダイナミクス解析技術

ロータダイナミクス(回転体の振動)はターボ機械の信頼性を左右する重要な技術です。従来のロータダイナミクス技術はそのほとんどが横軸回転体を対象としたものとなっており、立軸回転体の場合は、機械要素の振動特性や回転体の挙動の面で横軸とは異なるために、未解明問題が存在することが課題となっていました。
当社では大学との共同研究により、立軸ロータダイナミクスの解析・評価技術の向上に取り組んでいます。下記の例は立軸回転体の静止側構造物の振動特性を考慮した場合の自励振動発生を予測したものであり、回転数の増加に伴って自励振動が発生しますが、より高速回転になると消滅することを明らかにしました。

横軸すべり軸受と立軸すべり軸受の挙動の違い

静止部振動を考慮した立軸回転体の自励振動発生領域(計算結果)


流体関連振動予測技術

ポンプなど流体を扱う回転機械では、機械の振動特性に対して流体が及ぼす影響が大きく、これを予測する技術が必要になります。荏原では様々な振動現象に対して流体が及ぼす影響(付加質量効果や付加減衰効果、流体起因の加振力等)について研究し、日々高性能化する回転機械の振動防止に努めています。
図は遠心ポンプ羽根車の水中での固有振動数(振動しやすい周波数)を予測した例です。運転中の羽根車の固有振動数は空気中の50%以下になることもあり、その変化はケーシングとの隙間によって大きく変化します。

遠心ポンプ羽根車の水中固有振動数の例


参考資料