フランスの人気観光地として有名なヴェルサイユ宮殿は、ルイ14世が莫大な費用と歳月をかけて実現した、フランス絶対王政の象徴的建造物。
造園家アンドレ・ル・ノートルが設計した広大で美しい庭園がある。
※このイラストはイメージです
ヴェルサイユの庭園は、約40年かけて造られ、フランス式庭園の最高傑作とされている。
庭園内にはおよそ1,400もの噴水がある。その噴水庭園には、ルイ14世の三つの意図が込められているというのだ。
庭園を築いた土地は元々、「水」が近場に流れていなかった。そこで、セーヌ川に造った揚水装置で水を汲み上げ、水道橋によってヴェルサイユの貯水槽まで水を引くことで、自然をも従わせる力を自身が持っていることを証明した。噴水は、貯水槽から配管を通し、サイフォンの原理による圧力を利用して水を噴き上げる仕組みになっている。サイフォンの原理とは、隙間のない管を利用して液体をある地点から目的地まで、途中出発地点より高い地点を通って導くメカニズムのこと。灯油ポンプが身近な利用例だ。
「太陽神アポロンの噴水」と「ラトナの噴水」において、アポロン像はルイ14世自身を表している。「太陽神アポロンの噴水」は、アポロンが天に向かい駆け上ろうとしている様子をかたどった噴水で、ありとあらゆる物をルイ14世に従わせるという思いを表しているそう。
また、「ラトナの噴水」のアポロン像の足元にあるのは、神の怒りに触れて蛙やトカゲに姿を変えられた村民たち。ルイ14世は多くの貴族をヴェルサイユ宮殿に強制移住させて噴水を見させることで、「王に反抗するものは許さない」と貴族たちを暗にけん制したのだ。
誰もがヴェルサイユに入ることを許し、「水」という自然を圧倒した王の偉大さを、民衆に刷り込んだとされている。
ルイ14 世はこの庭園に惚れこみ、自ら『庭園見学の手引き』を執筆。外国の大使がヴェルサイユを訪れると、国王はまず<噴水めぐり>をさせた。そして歩くルートに合わせて、大使がその前を通ると水が噴き出すように仕込んだそうだ。しかし宮殿建設よりも噴水庭園に余程予算がかかっていたようで、ルイ14世の晩年には維持しきれなくなったと言われている。
普段は稼働していない噴水だが、現在でも大噴水ショーといったイベント時にはその本来の姿を見せる。