大学の専攻は工学部で、風力発電の性能評価を研究していました。風力発電の風車が好きで、デンマークに留学も経験したり。なので、もちろん就職活動では、風力発電事業がある企業を受けました。当時、荏原も風力発電事業をおこなっていましたが、私が入社すると同時に風力発電事業から撤退してしまいました。せっかく社会に貢献している荏原に入ったので、最近成長している半導体事業へ貢献したいと思いました。もちろん基礎的な勉強は仕事に活かされていますが、大学で学んだことが直接仕事につながっているわけではないんです。だけど、半導体製造は常に新しい技術が開発されているので、学んだことの応用なのは、当たり前なのかも。
私は大学で、化学専攻だったんです。主にソーラーパネルに使われるシリコンの薄膜を作る技術を研究していました。シリコンは半導体材料の一種なので、それが半導体に興味を持ったきっかけです。卒業後、電機メーカに就職し、TV用液晶パネルや半導体部品の製造プロセス開発に携わりました。だけど入社から10年ほどして経営方針が変わり、その企業が半導体や電子部品の製造から撤退してしまって。そんな時に、荏原がCMP装置の製造の中途採用を募集しているという話を聞き、転職を決意。装置の開発というと機械系出身の人が多いのではないかと思われがちですが、私のように化学系出身だからこそ、活かせる知識はたくさんありますね。洗浄工程の洗浄液や、装置に使う材料の選定は、化学の知識が必要ですから。
ドライ真空ポンプや排気システムについても、化学の知識が必要になることが多くあります。例えば、安全に水素を排気するために、酸素や水素の濃度を検知する技術です。その技術を用いた排気システムの設計では化学系の知識が必要なので、開発中に化学の知識を持つ人を頼ることはよくあります。機械系出身の人が多い中で、化学の知識を持った人は貴重なんです。
私は2人と違い、文系出身です。水泳部に所属して、水泳にひたすら打ち込んでいた学生時代でした。私が就職活動をしていたころ、「環境問題」や「循環型社会」といった環境意識の高まりがありました。そのような観点から、社会貢献できるメーカを希望して就職活動を行なうなかで、荏原製作所を知りました。入社後は、半導体についてまだ知識のない中、精密・電子カンパニーに営業で配属されました。25歳くらいの時から、アメリカの営業力強化で、海外赴任も経験しましたね。現地の先輩やお客さんとの技術ディスカッションを通して、半導体についてより詳しくなりました。9年間ほどの海外赴任の中で、海外から日本をみていると、お客さまのニーズと自社の製品開発の間にギャップを感じるようになりました。そこで、もっとお客さまの価値のために開発をしたいと思い、日本に戻り精密・電子カンパニーのマーケティング組織を発足。それが13年ほど前のことです。
文系から精密・電子カンパニーに配属されて、最初は大変ではなかったんですか?
社内の技術系の人がしっかりサポートしてくれるので大きな問題はなかったですね。お客さんへ営業に行く時も技術系の人と一緒に行くし、入社時に技術の知識がないといけないということはありませんでした。それよりも大切なのは、探究心。いろいろなことに興味や関心を持つことです。技術系の人の話や、お客さんの話を、興味を持って理解することで知識がついてきます。あとは、コミュニケーション力ですね。良い製品をお客さんに提供するためには、良い製品を作るための高い技術力はもちろん必要ですが、お客さんが潜在的に求めているものを理解し、先のソリューションまでを考えられる想像力が大切です。