2022年04月22日
荏原製作所(以下:荏原)は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の委託事業「水素利用等先導研究開発事業/炭化水素等を活用した二酸化炭素を排出しない水素製造技術開発/メタン活性化と炭素析出の反応場分離による水素製造」を実施する、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)・国立大学法人静岡大学・太陽鉱工株式会社と共同研究を開始しました。
脱炭素社会を構築するため、再生可能エネルギーへの転換に加え、二酸化炭素(CO2)を発生させない水素やアンモニアの利用が重要視されています。しかし、従来からのメタンスチームリフォーミング(SRM)と呼ばれる伝統的な水素製造法(グレー水素)は、二酸化炭素を多く発生させるという課題があります。また、二酸化炭素の発生を伴わない水素製造方法である水の電気分解法(グリーン水素)はエネルギーを多く必要とするためコストが高くなるという課題があります。
天然ガスやバイオガスなど、自然界に豊富に含まれるメタンガスを、触媒の存在下で加熱もしくはプラズマ照射によって固体炭素と水素(H2)に分解することで水素ガスを得る「メタン熱分解」(ターコイズ水素)は、二酸化炭素を発生させず、水の電気分解より低コストで水素を製造できる技術として、現在、注目を浴びています。
当社は、「メタン熱分解」技術の社会実装を実現するため、基盤システムとなる「反応場分離水素製造システム」の構築と水素製造実証試験を行っています。本研究では、NIMSが各機能要素のマスフローマッチングを、静岡大学が構造体化触媒の開発を、太陽鉱工が水素分離膜デザイン最適化を、そして当社はシステムの大型化及びビジネスモデルの構築をそれぞれ担当します。
「反応場分離水素製造システム」とは、メタンドライリフォーミング*(DRM)、水素分離、および一酸化炭素不均化反応を連続して行う循環プロセスにより、炭化水素(メタン)を原料として、二酸化炭素を発生させずに水素の製造を実現する技術(ターコイズ水素製造技術)です。本技術の特徴は、メタンを活性化させて水素を取り出すプロセスと炭素を取り出すプロセスを空間的に分離し、800℃以下の比較的低温域で実施できる点にあります。これらの特徴により、反応場分離水素製造システムは、プロセスを省エネルギー化し、水素と固体炭素が同時に生成されてしまう、他のメタン熱分解方式の課題を解決できる可能性があります。
さらに、反応場分離プロセスは、他のメタン分解プロセスとは異なり、水素を発生させるプロセスと独立して固体炭素を取り出すプロセスを制御することができます。水素の発生効率に影響を与えずに、さまざまな形状や異なった性状の高付加価値炭素を柔軟に作り分けることができるといった特徴を有します。
天然ガスやバイオガスなどの炭化水素等から、「安価かつ大量に水素が製造でき、二酸化炭素を排出しない水素製造プロセス」及び「さまざまな性状の固体炭素を製造するプロセス」について協業できるパートナーとの提携を模索しつつ、これらのプロセスの構築を目指します。当社は、長期ビジョン「E-Vision2030」で掲げる温室効果ガスの削減と脱炭素社会の実現に貢献していきます。
本件に関するお問い合わせ先
荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づいてESG重要課題に取り組むことで、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、企業価値のさらなる向上を図っていきます。
CH4(メタン)+CO2(二酸化炭素)=2H2(水素)+2CO(一酸化炭素): 温室効果ガスのメタンと二酸化炭素を水素と一酸化炭素に分解させること