鈴木 浩之* Hiroyuki SUZUKI
中山 英治* Eiji NAKAYAMA
櫻井 清之* Kiyoyuki SAKURAI
*
荏原環境プラント(株)
北部清掃工場を建て替え,施設規模381 t/dの焼却設備と15 t/5 hの粗大ごみ破砕設備からなる高効率ごみ発電施設(ふなばしメグプラ),及び余熱利用施設(ふなばしメグスパ)を,2017年3月末に千葉県船橋市に納入した。高効率ごみ発電施設では,最新式のエバラHPCC21型ストーカシステムを採用し,排ガス再循環システムを適用するとともに,低空気比で高温燃焼を安定して継続することで,低COと低NOxを実現できる環境負荷の低い施設となっている。また,ごみ発電に加え,ごみ発電施設の廃熱を利用し余熱利用施設へ高温水を供給するなど,グリーンエネルギーを活用し,循環型社会形成に寄与できる,地域に根付いた廃棄物処理事業への貢献が期待される。
At the end of March 2017, EBARA reconstructed the Funabashi Hokubu Incineration Plant in Funabashi City, Chiba Prefecture, and also completed the construction of (1) a high-efficiency waste-to-energy facility (Funabashi Meguru Plant) that consists of incineration equipment with a capacity of 381 t/d and bulky waste crushing equipment with a capacity of 15 tons per 5 hours, and (2) a waste heat utilization facility (Funabashi Meguru Spa). The high-efficiency waste-to-energy facility is characterized by a reduced environmental burden, and it can achieve low CO and low NOx by adopting EBARA’s latest stoker-type incineration system, HPCC21, and an exhaust gas recirculation system and by running stable, constant high-temperature combustion at a low air ratio. The facility is expected to contribute to waste treatment services, which will facilitate the establishment of a recycling-based society and which is rooted in the local community, through waste-to-energy conversion as well as the utilization of green energy, such as the supply of hot water to the waste heat utilization facility by utilizing waste heat from the waste-to-energy facility.
Keywords: Municipal solid waste, Incineration plant, Low air ratio combustion, Carbon monoxide, Nitrogen oxides, Environmental enlightenment, Waste heat utilization facility, High-efficiency waste-to-energy plant
1992年に稼働開始した既設の焼却施設(450 t/d)の老朽化に伴い,隣接地に新たに381 t/d(127 t/d×3炉)のストーカ式ごみ焼却施設を建設した(図1)。
最新技術を導入し,発電能力を大幅に増強したばかりでなく,近隣環境に配慮し排ガス規制値も強化している。
新設工事に伴い,市民の健康増進を目的とした余熱利用施設(ふなばしメグスパ)を隣接地に建設した。また,既設工場は解体し,将来の更新工場建設用地として確保し,多目的広場や緑地として利用している(図2)。
図1 船橋市北部清掃工場
図2 船橋市北部清掃工場全体配置
本施設は,最新のストーカ技術を用いた環境負荷の低い最新鋭の施設であり,発電した電力は場内利用及び隣接の余熱利用施設の電力を賄い,かつ大部分を売電している。同時に温浴及び温水プールを持つ余熱利用施設へ熱供給を行っている。また,所内で発生するプラント排水は,全量再利用し外部へ放出しない排水クローズドシステムを採用する等,周辺環境への配慮と経済性に十分配慮した地域にやさしい施設となっている。
焼却施設の設備フローを図3に示す。収集された家庭ごみ(一般廃棄物)はごみピットに一時貯留された後,ごみクレーンでごみ投入ホッパに投入され,給じん装置で焼却炉内へ送られる。焼却炉内で850 ℃以上の高温で焼却処理され,焼却灰は灰冷却装置で加湿冷却される。その後,磁性物を分離したのちに灰ピットへ搬送して貯留する。
焼却炉から発生する排ガスはボイラ,減温塔で170 ℃まで冷却された後,活性炭及び消石灰を噴霧し,集じん装置でばいじん,酸性ガス及びダイオキシン類を吸着除去する。窒素酸化物は,ボイラ高温部にアンモニア水を噴霧することで高温分解し除去している。なお,触媒脱硝装置を設置しており,更なる窒素酸化物の除去も可能である。
集じん装置出口から排ガスを分岐し,炉内へ攪拌空気として吹き込む排ガス再循環システムを採用することで,低空気比でも安定した燃焼を維持している。
ボイラから発生する蒸気は,蒸気タービンに送られ発電に使われる(図4)。蒸気タービンは2段抽気復水タービンを採用しており,1段目の抽気蒸気は低圧蒸気だめに送り,脱気器加熱などの場内プロセスや隣接する温水プールへの熱供給に使用されている。2段目の抽気蒸気は給水加熱器に送られボイラ給水の加熱に利用される。2段抽気復水を採用したことにより発電に寄与する蒸気量が増え,最大限発電効率を上げている。
船橋市北部清掃工場の主な設備仕様を表1に示す。
図3 設備フロー
図4 蒸気システムフロー
受入供給設備 | |
ごみピット | 容量:10000 m3 |
ごみピットクレーン | 全自動クレーン×2基 |
燃焼設備 | |
焼却炉 | 全連続式ストーカ炉 |
処理量:127 t/d×3炉 | |
燃焼ガス冷却設備 | |
ボイラ | 自然循環式水管ボイラ |
蒸発量:21.8 t/h×3缶 | |
蒸気条件:4 MPaG×400 ℃ | |
排ガス処理設備 | |
排ガス減温方式 | 水噴射式 |
集じん方式 | ろ過式集じん器 |
脱硝方式 | 無触媒脱硝及び触媒脱硝装置 |
HCl・SOx除去方式 | 乾式(消石灰噴霧) |
ダイオキシン類及び水銀対策 | 活性炭吹込式 |
余熱利用設備 | |
蒸気タービン | 2段抽気復水式 |
発電機 | 三相交流同期発電機 8800 kW |
灰出し設備 | |
焼却灰 | 加湿冷却後磁選処理 ピット&クレーンによる搬出 |
焼却飛灰 | 薬剤処理,ピット&クレーンによる搬出 |
排水処理設備 | |
プラント排水 | 無機系:凝集沈殿+砂ろ過処理後,場内再利用 |
有機系:生物処理後無機系で処理 | |
生活排水 | 合併浄化槽処理後,河川放流 |
粗大ごみ処理設備 | |
破砕 | 可燃性:二軸せん断式 |
不燃性:縦型高速破砕機 | |
選別機 | 電磁式磁選機,アルミ選別機,粒度選別機 |
性能試験時の各排ガス測定値を表2に示す。いずれの値も保証値を下回り,性能を十分に有していることを証明した。
本施設は排ガス再循環を導入することによって,低空気比高温燃焼を行っている。性状が不均一な都市ごみを焼却する上で空気比を下げて運転すると一酸化炭素(CO)のピークが発生しやすくなる。一方,窒素酸化物(NOx)は空気比を下げることで発生を抑制することができる。COとNOx双方の濃度を低く維持するには,最適な空気比,二次燃焼室での混合攪拌,炉内温度の安定した維持が必要となる。本施設では,排ガス再循環を採用することによってこれらの条件を満足させ,さらに無触媒脱硝を併用することで,NOx濃度を更に低減している。
図5に示すように,ボイラ出口の酸素濃度で約3.5 %(空気比1.25)で運転しており,COの平均濃度は5 ppmで,ピークの発生も抑制している。NOxについてはアンモニア水をボイラ部に噴霧するだけとし,触媒脱硝塔へのアンモニア噴霧はせずに平均35 ppmで制御している。
規制物質 | 保証値 | 性能試験結果 | |||
1号 | 2号 | 3号 | |||
ばいじん | g/m3(NTP)※1 | 0.007 | <0.0006 | <0.0006 | <0.0006 |
塩化水素 | ppm※1 | 20 | 9.5 | 13 | 9.5 |
硫黄酸化物 | ppm※1 | 15 | 7 | 7.9 | 4.6 |
窒素酸化物 | ppm※1 | 45 | 30 | 28 | 31 |
一酸化炭素 | ppm※1※2 | 15 | 10 | 8 | 5 |
ダイオキシン類 | ngTEQ/m3(NTP)※1 | 0.05 | 0.00024 | 0.00035 | 0.00013 |
水銀 | mg/m3(NTP) | 0.05 | <0.0006 | 0.0017 | <0.0007 |
図5 NOxとCOの経時変化
本施設ではごみの燃焼廃熱から高温水を製造し,隣接する余熱利用施設へ熱供給を行い,浴槽や温水プール,床暖房,空調の熱源として利用している。また施設内の全ての電力は,ごみ発電で賄っている。
余熱利用施設の年間来場者数は11万人を想定しており,それぞれ2つの大浴槽と露天風呂,歩行浴を目的とした温水プールとジャグジーを完備しているほか,ヨガや機械運動等を行う軽運動コーナー,飲食できる軽食コーナー,産地の野菜などを販売する産地コーナーがあり,市民の交流と健康増進を促進する施設として,地域の活性化に貢献している(図6,図7)。
図6 余熱利用施設
図7 温水プール
本施設では市内の小学校や近隣市民など,年間4000人以上の見学が見込まれる。本施設の設備や運転状況を来場者にわかりやすく説明するために,説明調度品を設置している。見学窓から場内を見学するだけでなく,リアルタイムのデータをモニターに表示することで(図8),実際の運営状況を知ることができる。見学コースの終盤にクイズコーナーを設置しており(図9),環境問題を主としたクイズを見学者の皆さんに挑戦してもらうことで,環境啓発を行っている。クイズコーナーでは,いつでも見学者が自由に複数で参加できるように,顔認証機能をもたせたシステムとしている。ごみの分別クイズや見学コースで学んだことのおさらいクイズを問いてもらい,正解者の顔をモニターに表示して,正解者をたたえる仕組みとしており,子供たちの積極的な参加が期待される。
図8 説明調度品例(ごみ搬入状況の説明)
図9 説明調度品例(クイズコーナー)
本工事では,工事現場近隣に住む動植物にとって,工事前後での環境が,大きく変わらないように配慮している。その一例として,解体する既設工場に巣を作っていたチョウゲンボウのために,新設工場に巣箱を設置している。また,伐採した高木の根株を余熱利用施設の広場に移植する試みを行っている。チョウゲンボウは工事期間から営巣し,現在は卵を抱いている(図10)。また,移植した根株からは新芽が出ている。
図10 営巣したチョウゲンボウ(煙突に設置した巣箱にて撮影)
本施設は2017年4月に竣工し,現在順調に運転を続けており,同市における廃棄物処理事業に貢献している。同時に大幅に増強した発電能力を生かし,施設外部に電気を供給することによって,低炭素社会実現に向けた一助となっている。
最後に本施設の建設において多大なご指導を頂いた船橋市の関係各位,及びご協力頂いた関係各位に厚く御礼申し上げる。
1) 岡本晃靖ほか,小山広域保健衛生組合向け エネルギー回収推進施設「中央清掃センター70t炉」の建設,エバラ時報,No.253,P39-43(2017-4).
2) 今泉隆司ほか,新潟県新潟市「亀田清掃センター」基幹改良工事,エバラ時報,No.253,P34-38(2017-4).
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