羽田本社の羽田テクニカルサポートセンター。 焼却炉の中の炎などの映像が映し出され,リアルタイムで遠隔操作ができる
三好 敬久 荏原環境プラント株式会社 取締役 エンジニアリング本部長 1987年荏原製作所入社。2007年から企画管理部で分社・統合準備。2009年ドイツ勤務。2012年から技術センターでEPCとO&Mの融合に尽力。2019年から現職。
佐藤 誉司 荏原環境プラント株式会社 取締役 営業本部長 1987年荏原インフィルコ入社。2009年荏原環境プラントへ出向。2012年青島荏原環境設備へ出向。2017年荏原環境プラントへ復職。2019年から現職。
石宇 敦 荏原環境プラント株式会社 横手管理事務所 所長 1998年荏原エンジニアリングサービス入社。三沢管理事務所,DBO・長期包括事業統括部などを経て2015年横手管理事務所。2018年から現職。
足立 正 中部リサイクル株式会社 代表取締役社長 1987年荏原製作所入社。2009年荏原環境プラントへ。2012年青島荏原環境設備出向。2016年荏原環境プラント。管理本部管理部長などを経て2019年から現職。
いま,荏原グループの中で,活躍の場を広げめざましい業績を上げる環境事業カンパニーから目が離せません。施設運営受託数業界2位のシェアを誇るプラントメーカとしてのプライドを軸に廃棄物処理やリサイクルの事業に新風を巻き起こしています。今回は,環境事業カンパニー中核組織である荏原環境プラントと中部リサイクルから4名の方にお集まりいただき,現在,どんなことをやっていて,未来をどう予測しているかをお聞きしました。
佐藤:環境事業カンパニーの使命は,ごみ処理事業による廃棄物の処理ですね。
人口20万人の都市では,1日に約200トンのごみが出ます。1日に200トン処理できる施設が日本のごみ処理施設の標準サイズで,100トン/日のごみ処理施設が2つ必要になります。日本には約1100か所のごみ処理施設があり,すでに飽和していて,これ以上作る必要はありません。
でも,ごみ処理施設は,作ったら終わりじゃないんです。運営してごみを処理していかなきゃならない。ごみ処理は,これまで地方自治体が主体で行ってきましたが,設計・建設,運営を民間事業者に委託するDBO方式(Design Build and Operate)が多くなっています。
荏原環境プラントが運営している施設は全国に約80か所あります。
荏原では,2009年に,これらの設計や建設から,運営までの業務を1つの会社にまとめました。これを,「EPC+O&M」*といっています。E(設計),P(調達),C(建設)と,O(運転),M(メンテナンス)を1つの会社でやろうということですね。荏原グループの別々の会社に散らばっていたものを,分社したり,統合したりして,「荏原環境プラント」という会社にしたんです。
*EPC+O&M
EPCとは,設計(Engineering),調達(Procurement),建設(Construction)。O&Mは,運転(Operation)とメンテナンス(Maintenance)。ごみ処理施設を設計して,資材や機器を調達,建設し,さらに,施設のオーナーである自治体に代わって運転とメンテナンスを行うこと。荏原環境プラントがごみ処理施設で行う業務の全体を示す。
お客様に,設計・建設から運営まで提案できるということは大きなアドバンテージになります。当社は,ストーカや流動床などの複数の焼却技術を持っているので,地域特性や顧客ニーズに合った最適な焼却システムも提案できます。さらに運営もできるので,最新技術を取り入れた延命化や長期包括契約の提案ができます。
今,焼却炉やボイラなどのごみ処理施設の中核的な機器をグループ内で製造できるのは,業界では3社だけなんです。荏原環境プラントは,中国・青島の「青島荏原環境設備有限公司」で製造しています。日本国内向けの生産拠点であるとともに,中国やアジアのごみ処理施設にも焼却炉やボイラを供給しています。
石宇:運営(O&M)は長期包括的管理運営委託になるケースが多くなってきています。秋田県横手市の「クリーンプラザよこて」もその一つで,20年の契約で委託されています。
佐藤:国内のごみ処理施設はすでに飽和状態で,新しく建設する需要はありません。もちろん,どんなにていねいに使っても30年から50年で寿命を迎えますから,更新需要はあります。更新案件の応札は年に2件か3件くらいです。それで,荏原環境プラントの事業の比重も,運営(O&M)に移ってきています。
足立:ごみ焼却施設から必ず焼却灰が発生します。焼却灰をどうやってリサイクルするかという需要も高まっています。「中部リサイクル」では,ごみ処理施設から焼却灰を引き取り,溶融処理を行って建築資材への活用や有価金属へとリサイクルしています。
佐藤:グループ内に焼却灰を資源化する技術まで持っているのは,業界で荏原環境プラントだけです。
電力を供給販売する事業も行っています。小売電気事業者登録をしていて,CO2ゼロのごみ発電電力を地域の公共施設に供給できるのは,廃棄物処理業界で6社だけなんです。
三好:統合するのもたいへんでしたが,統合してからその効果が実感できるようになるまでにはけっこう時間がかかりました。
私は,2007年から分社・統合の準備をする部門で関わっていたんですが,ドイツに赴任して,実際の統合時は見ていないのですが,ドイツから戻った2012年は,統合してから約3年も経っているはずなのに,まだ何だか会社の中がギクシャクしているなと感じたのを,よく覚えています。
当時は,EPC(設計・調達・建設)よりも,収益が上がるO&M(運転・メンテナンス)に全精力を注げという経営方針になったところで,運転・メンテナンスを改善しなければいけないのに,その施設運営現場からの声が上がってこない。どうしても,設計・調達・建設から運転・メンテナンスに,上下関係のようなものができてしまっていたんです。設計に問題があって現場が困っていても,情報が設計の方まで来ないんですね。情報が回る仕組みもなかったし,言うと叱られちゃうみたいな文化が根強くありました。情報を回してこそ,統合のメリットが出てくるんですけどね。
それが「エリア活動」という取組で改善されていったんです。
エリア活動の推進は,全国の約80か所のごみ処理施設を,北海道,東北,関東,中部,西日本のエリアに分けて,そこに責任者を配置し,1つの会社を経営するような仕組みにしたことです。
佐藤:責任者である役員が積極的に施設運営現場に行くようになり,直接現場の声を聞く機会が増えるなど,役員と現場の距離がぐっと縮まりました。
石宇:それまで,接点がなかったですからね。年に2回,全国所長会議があるだけで,秋田から本社に行っても話す相手がいなかったですよね。
佐藤:これまで消極的だった施設ごとの損益データを現場に開示したところ,経営に直結する数字に触れることで,所長の意識がずいぶんと変わりました。損益意識を持つということは大切なことなんですよ。
三好:年に1回,各エリアでリーダーを集めた意見交換会や懇親会で定期的な情報収集を行うようにしました。さらに,施設運営現場での問題点を羽田に報告する仕組みを作りました。設計から運転・メンテナンスまでの全員が目を通す報告ルートというものがなかったので,この仕組みによって心の壁を取り除き,技術力もアップできたと思います。
「なかなか現場からの声が上がってこなかったんですよ」(三好さん)
三好:本社側に,これら問題の解決に特化した会議体を作って対処することにしました。それが2013年です。対処するといっても,予算もかかることですし,最初からうまくはいかなかったんですが,役員クラスにも参加してもらうようにして,だんだんうまく回りはじめました。5年間で300件くらい挙がってきていて,200件くらい解決したところです。残り100件を今年中に50件まで減らそうという目標で取り組んでいます。
足立:ごみを燃やすと元のごみの約10パーセントが焼却灰として残ります。最近は災害ごみが増えていて,最終処分場もいざというときのために空けておかなきゃいけない。再資源化の引き合いが多くなっています。焼却灰の再資源化はニッチ領域ですが,近年の災害対応時の自治体BCP*における廃棄物処理の危機分散の観点からも,外部委託による溶融処理に注目が集まっています。
*BCP:Business Continuity Planning
事業継続計画。企業が,災害やテロなどの緊急事態にあったときに,損害を最小限に抑え,事業継続や早期復旧を図るための計画
焼却灰の再資源化には,セメント化や溶融などの方法があるんですが,中部リサイクルでやっているのは還元溶融処理です。単に焼却灰を減容化・無害化・安定化できるだけでなく,溶融還元石の建築資材への活用や有価金属回収することができます。
足立:そうです。約50パーセントは石(溶融還元石)になりますが,金や銀やプラチナ,銅や鉄も採れます。
石は,建築材に使われます。ほとんど自然石と見分けがつかないものになります。水に浸けても有害物質が出たりはしません。石は再生材として生活の身近なところで活用してもらうことで,資源リサイクルに寄与しますし,鉄スクラップも鉄鉱石から鉄を作るよりCO2削減になるとして,欧州等ではSDGs絡みで再注目されています。還元溶融処理で生成される溶融メタル中の金は,金鉱山で採掘される金より含有量が多いです。だから鉱山を開発するより効率がいい。全体量は少ないですけど。
溶融還元石。 溶融した焼却灰の約半分は溶融還元石になる。建築資材などに使われる
溶融メタル。 溶融した焼却灰から金,銀,プラチナ,銅などの金属が採れる
「焼却灰のリサイクルの需要は高まっています。 溶融で建材やメタルが採れるんです」(足立さん)
足立:一般ごみの焼却灰は全国で年間約320万トンほど発生しており,焼却灰には,主灰,飛灰,溶融灰と3種類あって,金は主灰からしか採れません。主灰が150万トンとして,その0.0005パーセントくらいですかね。
足立:最近は,おもちゃなどにも電子回路が使われていて,基板が入っていますよね。いろいろなごみに金が含まれているんです。飛灰からは,亜鉛も採れます。飛灰を濃縮して亜鉛の濃度を上げると亜鉛原料になります。
足立:金・白金・銅等は溶融すると条件がそろえば重力沈降で自然に層ができます。原料の配合や温度のコントロール等にいろいろノウハウが必要ですけどね。亜鉛原料は主に飛灰の脱塩・脱水濃縮で生成します。
佐藤:資源化は,資源化総コストから生産物(溶融還元石,溶融メタル,亜鉛原料等)の売価を差し引くことで,溶融単価を抑えることができます。
足立:灰溶融は他の灰処理に比べて設備コストが高い上に,多様な操業ノウハウが求められます。当社は,前身企業から含め20年以上の歴史があって,電気炉の運転ノウハウが蓄積されているんです。また,亜鉛原料の濃縮や建築資材の腐食を防ぐために必要な脱塩処理技術も同業他社の先を行っています。
自治体で溶融炉を所有しているところもありますが,設備規模や操業頻度上の課題とか運転人員を確保できなくなったり,スラグ(溶融して作る人工砂)の品質を保てなくて,操炉を停止するところが増えているので,外部委託の需要は増えています。
足立:主に自治体に供給しています。市役所,学校,病院,体育館といった公共施設で使われます。地産地消される再生エネルギーとして注目されていて,自治体の需要が高まっています。
石宇:「クリーンプラザよこて」でも発電しています。発電した電気を横手市内の小中学校,全24校に供給しています。小学校では4年生になると,社会科見学があります。「ここにたまっているごみを燃料にして,みなさんの学校で使っている電気が作られるんですよ」って説明すると目を輝かせて聞いてくれます。
石宇:むちゃくちゃ盛り上がるんですよ。目の前に大きなごみピットがあって,2週間でこれだけのごみが出ているんだっていう実感でしょうね。さらに焼却炉で燃えている画像も見られるわけですから。
学校には,電力使用量のデータを送っています。設定した使用量を超えると,先生方にメールが届くんです。それを生徒が見て,自分たちで「あ,電気消さなきゃ」とか「エアコンの設定温度上げなきゃ」ということになるんです。
佐藤:東京・武蔵野市の市役所の電力は,隣にある「武蔵野クリーンセンター」でごみ発電から供給しています。BCPの観点からも,注目されています。東京電力がブラックアウトしたとしても,ごみがある限りは電気を供給することができます。
去年(2018年)9月に,北海道胆振東部地震で北海道全域が停電しましたよね。ちょうど出張で札幌に行っていたんです。ホテルは,全部電気が消えて,朝ごはんは食べられないし,シャワーは使えない。
北海道支店の社員に車で迎えに来てもらって,旭川の現場に行ったんですよ。周りが停電の中,現場だけは電気が灯って運転を継続していました。自前で電気を作っているから,平常運転(自立運転)なんです。スマホも充電できたし,自動販売機で冷たいコーラを飲んだときは感動しました。
北海道には,岩見沢,旭川,帯広の3箇所のごみ処理施設で発電しているんですが,3箇所とも自立運転でごみ処理を継続できていましたから,ごみ処理施設が,災害時に拠点としての役割を担うことを再認識しました。
石宇:「クリーンプラザよこて」では,災害時の後方支援施設として例えば他の自治体から応援に来た方の拠点に使われることを想定しています。そのため140人3日分の水と食料を備蓄しています。
佐藤:発電では,バイオマス発電のニーズも,数は多くないんですが,毎年,数件の確実な需要がありますよ。
「社会科見学の子どもたち,むちゃくちゃ盛り上がるんですよ」(石宇さん)
足立:そうです。私は4年間。佐藤さんは,さらにもう1年いましたね。
佐藤:一緒に帰っちゃうのもどうかと思って,5年いました(笑)。
佐藤:そうです。日本向けの焼却炉やボイラなどの製造です。青島荏原には2つ柱があって,もう1つは,中国やアジアのごみ処理事業者への焼却炉やボイラの販売です。
中国には,約300か所のごみ処理施設がありますが,そのうちの約10パーセント,約30か所が荏原環境プラントの焼却炉やボイラを使っています。日本企業としてはトップクラスのシェアです。
さっきの,「EPC+O&M」という言い方でいうと,中国では「EP+SV」という形態です。設計(E),調達(P)とスーパーバイザー(SV),技術指導員ですね。
中国は,自治体から民間企業への委託が日本より進んでいるんですが,その民間企業(ごみ処理事業者)の位置に海外企業が参入することは難しいんです。ただ,その民間企業は,焼却炉など技術は有していないので,荏原環境プラントがそこを提供しています。基本設計,焼却炉等の機器供給とともに,据付・試運転のために技術指導員を派遣します。
今,300か所の処理施設があると言いましたが,実は,あと1200か所,必要だと言われているんです。当面,建設ラッシュが続きそうです。
中国・青島の青島荏原環境設備有限公司。 焼却炉やボイラなどの主要機器やメンテナンス時の交換部品を製造する。 中国やアジアにも販売している。荏原環境プラントの100 %子会社
足立:処理量規模が全然違うんです。日本では,100-200トン/日くらいの施設が標準ですが,中国ではその10倍以上,1000-3000トン/日くらいが標準です。日本では「自区内処理の原則」があって一般廃棄物は市町村などの行政区域内で処理しますが,中国では,欧州型の処理方式で,中継基地がたくさんあり,まず,トラックでそこに運び込むんです。それをギュッと圧縮して水を抜いて,抜いた水は下水に流して,ごみは10トンか20トンのトレーラーに入れてトラックでごみ処理施設に運びます。
中国のごみは水が多いんです。日本も,50年前は,ビニール袋も使わないで,生ごみを新聞紙に包んで直接青いポリバケツに入れていましたよね。プラスチック容器は少なかったと思います。そんな段階なんですね。
荏原のブランドは,中国国内にも浸透しているし,焼却炉のラインナップが広くて,ニーズに合ったものを提供できるので,競争力があります。最大の強みは,荏原環境プラントで学んだ中国人技術者による中国展開ですね。
ただ,需要が多くて,技術者は不足しているし,工場も拡張が必要です。
中国・アジア向けの焼却炉供給は,選択受注することで,高い利益率を確保できます。それに,日本も将来は大型焼却炉が増えると予測されますが,その大型焼却炉の技術を蓄積できます。
佐藤:2050年には日本の人口は8000万人を切ると言われていますよね。ごみ処理施設も,30年先には20パーセントから30パーセントは減らすことになります。でもそれはあまり心配していません。
むしろ,労働人口が減って,自治体が民間委託するケースが増えていくと思われるので,荏原環境プラントビジネスは拡大していくと思います。
日本の約1100か所のごみ処理施設は,自治体が自分で運転しているところ,地元の企業が委託されて運転しているところ,メーカが委託されて運転しているところがあって,約3分の1ずつなんです。メーカというのは,焼却炉を作ったメーカのことで,そのうち約80か所を当社が運転しています。
自治体はこれからますます民間委託を進めていくと思われます。全国1100か所のうちの3分の2の運営が,今後メーカに回って来る可能性が高い。大きな市場です。
実は,現時点でも,年商の3年分以上の受注残があります。
だから,施設の減少より,人手不足の心配をしなくてはいけないんです。
それで,AIや遠隔操作の技術を使って,ごみ処理の自動化やメンテナンスの合理化に力を入れています。
三好:たとえば,この2月から千葉県船橋市の施設で運転しているAIクレーンがあります。
三好:AIで画像解析して,それに従ってクレーンを動かすんです。
ごみ収集車がごみ処理場に持ってきたごみは,ごみピットに入れるんです。そのまま焼却炉に入れると,燃えやすい紙やプラスチックと燃えにくい生ごみがあって,よく混ぜて均質にしないと,燃焼が安定しない。ベテラン運転員が,クレーンを使って混ぜています。
このごみピットの画像を見て,「ここは混ぜるべきだ」とか「ここはそのままでいい」といったベテラン運転員と同様の判断をするAIを開発して,それに従ってクレーンを自動運転するようにしたのがAIクレーンです。
三好:クレーン操作が不要になるので運転員の負荷が大きく軽減できますし,運転員の技量による運転品質のバラツキも無くせますから,人手不足の影響を緩和することにも繋がります。
このプロジェクトのおもしろいところは,もともと焼却炉を作るところからはじめた会社なのに,焼却炉の自動化ではなく,クレーンの自動化から取り組んだ点です。設計者の視点から自動化を考えたらきっと焼却炉の燃焼制御の自動化を考えたと思うんです。
佐藤:AIクレーンに着目したのは,業界で最初なんです。
うちが,設計・建設より,運営に軸足を移したからできたことだと思うんです。現場との一体感で会社を強くしていこうという企業文化があったから生まれた発想だと思います。
三好:ごみ投入をAIで自動化することは,焼却プロセスの最上流なので効果も大きいんです。これから,他の施設にも設置していく予定です。
石宇:次は横手(クリーンプラザよこて)なんですよ。今,工事が始まっていて,年内に稼働する予定です。
AIクレーン(ごみ識別AIを搭載した自動クレーンシステム)の構成図
三好:遠隔支援は,運転技量の向上と災害対策です。藤沢(神奈川県)に藤沢遠隔サポートセンター(FSC)があって,各施設の運転状況を確認して必要に応じて指導したり,地震などのトラブル時には,藤沢から運転することで現地をサポートできます。
もう1つ,羽田(東京都)の本社に,羽田テクニカルサポートセンター(TSC)があって,こちらは技術的なサポートを行います。普段はごみ処理施設から上がってきたデータを解析して今後の運転に生かしたり,より効率的な運営の仕方を探すといったことに使われます。また現場で何かトラブルが起きたとき,たとえば,コンベヤが壊れたというとき,その映像を羽田の技術者がリアルタイムに共有して対処を検討するんですね。羽田には多くの技術者がいますから。「そこをもうちょっと動かして」「もっと寄って」「断面を見せて」といった指示をして,実態を正確に捉えることもできます。以前は,誰かが施設へ飛んで行って,写真を撮って羽田に戻って来て,技術者を集めて会議を開いて対処を考えていたので,格段に早く対処できるようになりました。
羽田本社の羽田テクニカルサポートセンター
佐藤:荏原環境プラントは,メーカですが,いま限りなくサービス業に近づいています。
製品開発だけじゃなくて,ごみ処理という事業領域からどれだけ幅広くサービスを提供していくのか,サービスを向上していくのかってことを狙っているんです。ただのプラントメーカではないんです。
今までは親和性がないと思っていたもの,たとえば,教育や市民サービスといった分野にも注目しています。
さきほど,石宇さんが言ってくれた,ごみ処理施設の見学者対応も「環境啓発」という教育なんです。かつては,自治体がやっていたことなんですが,今は民間企業に委託することが多くなりました。
「武蔵野クリーンセンター」では,毎月のようにイベントを行っています。生ごみたい肥を用いた屋上菜園があって,秋の収穫祭ではそこで採れた野菜で作ったピザを召し上がっていただくんです。
去年は,「gomi_pit BAR」という大人の工場見学イベントがありました。定員30人の募集のところ200人の応募があったんですよ。ネットニュースでも「世界一シュールなバー 東京に出現!」と紹介されました。ごみピットの中のごみをバサバサバサーッとクレーンでかき混ぜる様子を見ながらお酒を飲むんです。町おこしや地域活性化にも貢献していけるのかもしれないと思いましたね。
もっと未来の話をすると,ごみ処理施設は電気などのエネルギーを産み出すので,浄水場や上下水道などに供給すれば都市インフラのエコシステムを作れると思うんです。ポンプを作る風水力事業や上下水道事業の関連会社水ingと連携して,都市インフラをまとめて請け負うといった事業ができます。
こんなふうに,ごみ焼却場の新たな価値を探していかなきゃいけない。それが私たちのビジネスを変えていくんだと思います。
「もはや,ただのプラントメーカではないんです」(佐藤さん)
備考)本記事は社外のファシリテータがインタビューを行い,編集したものです。
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