小堀 満代* Michiyo KOBORI
長谷川 竜也* Tatsuya HASEGAWA
小田部 信幸* Nobuyuki OTABE
*
荏原環境プラント㈱
オオブユニティ㈱向けの産業廃棄物焼却処理施設を2023年7月末に納入した。TIF®旋回流型流動床焼却炉を採用し,破砕ごみ,汚泥,廃油,廃液,医療系廃棄物など多種多様な廃棄物の混合処理を行っている点が最大の特徴である。また,ボイラの蒸気で最大3 000 kWの発電をし,工場内の電力を賄い,余剰電力は周辺地域に売電することで,電力の地産地消を実現する施設となっている。本稿では,施設の特徴,運転状況を報告する。
At the end of July 2023, EBARA delivered an industrial waste incineration facility for OBU UNITY Co., Ltd. The biggest feature of the plant is that it uses a fluidized-bed incinerator to incinerate a wide variety of wastes, including waste plastic, food residue, sludge, waste oil, liquid waste, and medical waste. In addition, the plant generates up to 3 000 kW of electricity using boiler steam to provide electricity within the plant, and sells surplus electricity to the surrounding area, achieving local production and local consumption of electricity.
Keywords: Fluidized-bed incinerator, Industrial waste, Combined waste incineration, Medical waste, Flame sensor
オオブユニティ㈱向けの産業廃棄物焼却施設として流動床焼却炉(131.2 t/d×1炉)を納入し,2023年7月末に竣工・引渡しを完了した(図1)。
図1 施設外観
図2に本施設の全体配置図を示す。
図2 全体配置図
本施設は,1998年に当社が納入した既存の産業廃棄物焼却施設に代わる施設として,リサイクルプラント東浦工場内に建設された。既存施設はキルンストーカだが,建て替えにあたり,TIF®旋回流型流動床焼却炉(以下,TIF)を採用した。TIFの特長として,流動層ゆえの温度の均一性や優れた伝熱特性によって,汚泥や廃液等の低発熱量処理物から廃油や廃プラスチックなどの高発熱量処理物まで,1つの炉で混焼処理が可能なことが挙げられる1)。また,旋回流による攪拌・破砕効果,不燃物の安定排出も大きな利点である1)。本施設ではTIFの特長を活かし,破砕ごみ(廃プラスチック類・食品残渣等),汚泥,廃油,廃液,医療系廃棄物など,特別管理産業廃棄物を含む多種多様な廃棄物の混焼処理を行っている。
リサイクルプラント東浦工場は,本焼却発電施設の他に破砕選別施設,医療系廃棄物保管庫(自動倉庫)を有するリサイクルプラントとなっており,焼却施設の稼働中は,廃棄物の焼却過程で発生した廃熱を利用した発電によって工場全体の電力を賄っている。
※TIFは,荏原環境プラント㈱の日本における登録商標です。
所在地:愛知県知多郡東浦町
施設規模:131.2 t/d
工期:2021年5月~2023年7月
主要設備仕様を表1に示す。
表1 主要設備仕様
本施設のプロセスフローを図3に示す。本施設の特徴としては,廃棄物ごとに保管設備と搬送設備が設けられており,それぞれの廃棄物を独立した搬送経路で焼却炉内に供給した上で,混焼処理が可能である点も挙げられる。
図3 概略プロセスフロー
(1)受入供給設備
受入設備として,廃プラスチック・食品残渣等を受け入れる受入ピット,汚泥を受け入れる汚泥ピット,廃油を受け入れる廃油受槽,廃液を受け入れる廃酸・廃アルカリタンク,医療系廃棄物を受け入れる医療系廃棄物保管庫がある。
場内に搬入された産業廃棄物のうち,廃プラスチック類,紙くず,木くず,繊維くず,食品残渣等は計量後に受入ピットに貯留される。流動床焼却炉の安定燃焼には定量供給性が重要であることから,二軸せん断式破砕機による破砕処理をした後に,破砕ピットに貯留される。破砕ピットに貯留された破砕ごみはごみクレーンで投入ホッパに供給され,給じん装置を介して焼却炉へ供給される。
汚泥は計量後に汚泥ピットに貯留された後,ごみクレーンによって汚泥ホッパに投入され,コンベヤを介して焼却炉へ供給される。
なお,受入ピット,破砕ピット,汚泥ピットから発生する臭気は,焼却炉の稼働時は二次送風機によって燃焼空気として焼却炉内に供給し,停止時は脱臭装置を通して排気することで,外部への臭気漏れがないように対策を講じている。
廃油はドラム缶やペール缶にて受け入れた後,廃油受槽に投入し,廃油供給ポンプを介して焼却炉内のノズルから噴霧する。
廃液はローリー車によって場内に搬入され,廃酸・廃アルカリに分けてタンクに貯留された後,廃酸供給ポンプ及び廃アルカリ供給ポンプによって焼却炉に移送され,焼却炉内のノズルから噴霧する。
医療系廃棄物は,専用容器に封入された状態で場内に搬入され,自動倉庫である医療廃棄物保管庫にて先入れ・先出しとなるよう管理される。ロボットアーム及びコンベヤによって移送され,専用容器ごと人の手に触れることなく焼却炉に供給される。
(2)燃焼設備
焼却炉には旋回流型流動床式を採用し,受入供給設備を介して焼却炉内に供給された多種多様な廃棄物は,約650 ℃で流動する高温の砂中で乾燥・ガス化し,フリーボードにて850 ℃以上の高温で完全燃焼される。
ごみに含まれる不燃物は,砂の旋回流動によって炉床部の両脇の不燃物排出シュートに導かれ,不燃物排出コンベヤにて砂とともに系外に排出される。その後,振動篩で砂と分離され,磁選機で鉄分と不燃物に分別・貯留される。
(3)燃焼ガス冷却設備
燃焼排ガスの冷却設備として,廃熱ボイラ・エコマイザ・減温塔を設置しており,発生した排ガスはこれらの設備を通して180 ℃程度まで冷却される。
(4)排ガス処理設備
排ガス中のばいじんや有害ガス処理として,煙道への消石灰吹込みによる酸性ガス(HCl・SOx)の除去,集じん装置での集じん,触媒反応塔によるダイオキシン類の除去を行っている。
(5)余熱利用設備
廃熱ボイラで回収した蒸気を蒸気タービンに送気し発電を行っている。発電出力は最大3 000 kWで,所内動力を賄った上で余剰電力は売電している。
(6)飛灰処理設備
集じん器で回収した飛灰は,飛灰処理設備にてキレート剤によって重金属を不溶化処理後,施設外に搬送される。
(7)排水処理設備
施設内で発生した排水は焼却炉内及び減温塔噴霧による蒸発処理を行うことで,排水を施設外に排出しないクローズドシステムを採用している。
本施設では,2023年3月から廃棄物を受け入れ,4月5日から実負荷焼却試運転を開始した。5月26日に引渡性能試験を実施し,6月1日には発電所としての使用前自主検査を終了した。
引渡性能試験時の第三者分析機関による各排ガス分析結果を表2に示す。いずれの値も保証値を満足し,性能を十分に有していることを証明した。窒素酸化物(NOx)については,アンモニア水等の薬品を使用せずに燃焼制御のみで保証値を満たす運転となっている。
表2 引渡性能試験結果(排ガス)
本施設では燃焼の安定化のため,フレームセンサを使用した燃焼制御を行っている。
一般的に燃焼制御のために燃焼状態を測定する計器としてはボイラ出口O2計を使用することが多いが,実際の燃焼部からは離れた位置に設置されているため,リアルタイムに燃焼状態を反映することができない。流動床焼却炉は他の炉型式と比較すると燃焼速度が速く,タイムラグの大きいボイラ出口O2濃度のみを制御に反映していては時々刻々と変化するごみ質・ごみ量に追従できない。そこで,O2濃度による制御に加え,焼却炉の炉頂部に設置したフレームセンサによる燃焼状態の監視・制御を採用している。フレームセンサとは,燃焼にて発生する火炎の輝度を検知するもので,火炎の輝度と燃焼状態には正の相関があることから,燃焼状態を定量的かつリアルタイムに把握できる計測機器である。
本施設ではフレームセンサの信号を二次空気流量制御及び給じん量制御に活用している。二次空気流量はボイラ出口O2濃度を基準に制御を行うのが一般的だが,本施設ではボイラ出口O2濃度基準の制御に加えてフレームセンサの信号に応じて先行的に二次空気量を増減する制御を行っている。また,フレームセンサの出力が高い場合,給じん量が瞬時的に多くなっていると考えられることから,一時的に給じん装置の回転数を下げ,給じん量を抑えるような制御としている。
図4にフレームレベル(フレームセンサ出力の高低を表し,0~100 %で示す),二次空気流量調節ダンパ開度,給じん装置回転数,排ガスCO濃度のトレンド例を示す。フレームレベルの増減に二次空気流量調節ダンパの開度及び給じん装置の回転数が追従しており,フレームレベルが急激に増加している場面はあるものの,O2濃度の低下による一酸化炭素(CO)のピークが発生することなく運転を保持できていることがわかる。
図4 フレームセンサ制御によるトレンド例
医療廃棄物の焼却処理は,感染性病原体の飛散防止の観点から,専用容器に封入された状態のまま焼却炉内に投入することが望ましく,3-2でも述べたように,本施設ではその容器のまま,焼却炉に投入している(図5)。一方で,流動床焼却炉の安定燃焼において重要なのは定量供給性であり,未破砕の医療廃棄物を断続的に投入することで燃焼状態の変動が懸念される。
図5 医療廃棄物外観
図4に医療廃棄物の投入のタイミングを併せて示す。通常運転時は約1分間に1箱のペースで医療廃棄物を焼却炉内に投入している。医療廃棄物の投入に合わせフレームレベルが上がる場面はあるものの,COのピークは発生していないことがわかる。医療廃棄物の投入の有無による炉内圧力の状況を表3に示す。炉内圧力の変動を比較すると,投入有りの方がわずかに標準偏差は高くなっているものの,有意な差があるとは言えず,高めに設定した空気比やフレームセンサによる制御によって,医療廃棄物の投入による燃焼状態の悪化を抑制できていると考えられる。
表3 炉内圧力状況
廃棄物の焼却によって得られた電力のうち,工場内の電力を賄った上で余剰分は小売電気事業者である当社によって買い取り,CO2フリーのクリーンな電力として愛知県内の需要家向けに供給することで,電力の地産地消を実現している。
本施設の竣工にあたり,多大なるご協力を頂いたオオブユニティ㈱をはじめとする関係各位に深く感謝の意を表する。弊社は引渡し後の運転委託を拝命しており,引き続き地域と共生する施設を目指し,運営を行っていく所存である。
1) 松岡慶ほか:流動床焼却施設の性能とポテンシャル,エバラ時報,No.253,p12-17(2017-4).
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